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「だれでもデザイン」を読んだら、自分だけのモヤモヤが宝の山に見えてきた話

「プロダクトをデザインしようとするには、もう遅すぎるのではないか」

そんなことを思ったのは、新社会人になって数年が経った頃だった。
小売業に就職し、全国を転勤しながら店頭で接客をする自分は、かっこいいプロダクトデザインが大好きだし、できれば携わっていきたいと思ってきた。
しかしながら、大学でも文系にすすんだ自分は、図面が引けるわけでもないし、手先が器用どころか超不器用。
憧れは憧れのまま、一生を終えるんじゃないかと薄々思っていた。

でも、あるきっかけから転職し、複業としてはじめた文具店で、少しずつオリジナルアイテムを作り始めている。
うまくいくこともあるけれど、やはり圧倒的に失敗が多い。
今だって、面白い技術を目の前にしながら、その活用方法がうまくみつからなくてうんうんと唸っている。

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そんなとき、いつもお世話になっている雑貨屋さんから「この本おもしろいよ」と教えてもらったのが山中俊治さんの「だれでもデザイン」だった。
JRのSuicaの改札機のデザインを手がけられたこともあって、自分も大好きなデザイナーさんだったけど、そんなすごい人のデザインの話が果たして自分レベルでも参考にできるものなのか……
はじめは不安だったのだけど「だれでもデザイン」の題名通り、デザインの素人の私にも理解しやすく、やってみようと思えることがたくさん書いてあった。
詳しい内容は本を読んで頂くとして、自分がこの本からどんなヒントと行動に出れたのかを中心に、簡単にご紹介させていただければと思う。

私のスケッチは、なぜ「ド下手」だったのかがわかった

「これから、絵をみなさんに描いてもらいますが」という序盤も序盤の出だしではやくも本を手から離しかけてしまった。
というのも、私自身、絵を描くのが苦手……
漫画を描けるようになりたい!と思い、小学校低学年の頃は「ドラゴンボール」や「ドラえもん」といった漫画を真似て描いていたけれど、一向にうまくいく気配がない……
遂には自分の画力のなさに嫌気が差して、描くのも止めてしまった。

でも、この本ではそのあとにそんな私がなぜ絵をうまく描けなかったのかを丁寧に山中さんが解説してくださって、それだけでも呪いが解かれたような気分になった。

山中さんは、描こうとするものの構造から、絵を描いていく大切さを教えてくれた。
鶏であればその骨格を
人の顔であれば眼球の形を
知っていることで格段にその絵のリアリティが変わっていくのが、本を読んでいるだけでも伝わってきた。

そして幼少の頃に漫画を真似て描く時に、父は私にトレーシングペーパーなるものを与えてくれていたことを思い出した。
薄くて透ける紙であるトレーシングペーパーを使えば、簡単に孫悟空もドラえもんも描くことができる。けれど、オリジナルのポーズを描くことはできないし、自分なりの絵も描くことは難しい。
それは出来上がっているイラストの輪郭だけをなぞっていたからだったのかなと気づくと、途端に納得してしまった。

早くもショックで立ち直れなくなったけれど、その後に内部構造の話になっていき、Macbook Airを分解する話等が出てきてようやく私は息を吹き返した。
そういう「構造」の話はとても好きだったからだ。

というのも、お店で働いていたときにはお客様や新人スタッフに、商品の組み立て方法や、構造の説明を行うことがたくさんあったからだ。
中でも、商品が壊れていたときのクレーム対応などでは、なぜ壊れたのかをすばやく分析することも求められる。
日用雑貨から衣料品、家電、食品に至るまで取り扱うお店だったので、一通りの道具の構造を知ることができたことは、少しは今の自分の商品開発にも役立っているにちがいない。というかそう思いたい。

プロトタイプを元に、アイデアをたくさんの人に晒す大切さ

なにか商品のアイデアを思いついたとき、すぐ人の反応を見たくなる。
それは、自分がだいぶニッチな道具を好きな傾向があると自覚しているからでもある。

そんなときには不格好でも形にしてみたり、この頃ようやく覚えはじめたイラストレーターでイメージを作ってみたりして、知り合いに見てもらうようにしていた。

山中さんの教えの中には「アイデアのための作業」として下のようなサイクルが出てくる。

1 情報を入れる
2 つなぎ替える
3 絵にして出してみる
4 人に伝える
5 他人の反応を見る
→ふりだしに戻る

「だれでもデザイン」山中俊治 P191より参照

色々な文具を使ってみるだけでなく、お店をしていると「仕入れる」という形でメーカーさんとつながる。
そこで得られた製造技術についての情報を、なにか新しい用途に膨らませられないか……、そんなふうにうちのお店も商品を試しに作ってみているのですごく共感しかない。

A234のコピー

例えばうちのお店が初めて世に出した文房具も、メーカーさんから廃盤になったハードカバータイプのスケジュール帳を、カバーだけで商品にできないか……という転用から生まれたアイテムだったりする。

それを実際に試作してもらって、馴染みのお客様や友人に使ってみてもらいながら商品として出来上がっていった。

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そして、うちのお店で何故か人気商品となった光る三角コーン看板だって、もともとはお店用に作った「まかない」的な看板だった。
それを気に入ってくださった方が照明を仕込んで光らせてくださったり、駐車場で使いやすいようにデザインをデザイナーさんが作ってくださったりと、現場にもまれながら年間100台が売れるアイテムへと成長していった。

ひとに伝えるという部分では、noteの存在がとてもありがたくて、このコロナ渦においても遠くの人と繋がれる大切な架け橋となっているし、商品の反応をツイッターで返してもらえるのも、リリースしたオリジナルアイテムのブラッシュアップにもつながっている。

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一方一番苦手なのは、「絵にして出してみる」というところだと思う。
山中さんも途中で「手書きのラフな感じのほうが、製作途中のものだと認識してもらいやすい」的な内容を話されているのだけど、イラストレーターで作ったイラストはかっこよくなりがちで、それを見る側の印象もツッコミをいれていいかどうか迷う傾向があるように思う。
そのへんを改善するためにはもう一度、「絵にしてみる」ということを頑張る必要があるんだなーと感じさせられた。

「何故か惹かれるアイデア」を世に出せる時代に

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書籍の中でも触れられていたけど、現代はクラウドファンディングなど様々な方法で商品を形にできる方法が増えている。
そんな中だからこそ、山中さんのこの本は、これまで限られた人のものだったデザインを「だれでも」触れられるものにするうえでこの上なくわかりやすい入門書になっているように感じられた。

そして、山中さんが終盤でされている「なぜか惹かれる」アイデアに、「本当に好きなこと」のヒントがあるという話は、自分の心にもすごくしっくりきた。
これまでも「リユースするダンボールに貼るためのシール」など、自分が心のどこかで引っかかっているもやもやを解消する商品を出してきたけれど、意外と流行やウケを狙いにいくよりも、売れるのはそういった商品だなと思っていたこともあって、すごく共感した。
自分だけが不器用だから……とか、もっとうまくやらなくちゃ……と落ち込みがちだったけど、この本を読んでからはその心のモヤモヤが「アイデアの素」に見えてきて、ドキドキしはじめている。
そして、それを形にする方法を書いてある本なんだなと思うと、たくさんの人に読んでもらいたいなと思った。

この本にはここで紹介した以外にも、読んだ人の数だけたくさんのヒントが、中高生にも分かる言葉で書かれているんだなと思う。
もしあなたが、デザインに少しでも興味があったなら、おすすめしたい一冊です。

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