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山下義弘商店

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お店で売ってるもの、売ってないものだけど気に入ってるもの。熱量をもって書き綴っています。
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記事一覧

おらが店にも駅が来た 陸の孤島と呼ばれた文具店の立地が好アクセスになるまで

お店に行きたいんですけど、遠いんですよね。 うちのお店は、そんな言葉が漏れなくセットになっている文具店だった。 大阪の玄関口「梅田」からだと、地下鉄御堂筋線に乗って千里中央駅を目指してもらい、そこから更にバスor登り坂を徒歩。 トータルで1時間ぐらいかけて、文具店を訪れるというのはなかなかにハードルが高い。 そもそもなんでそんな場所にお店を出したかといえば、同級生がやっているカフェが同じフロアにあるからという理由がひとつ。 そしてもう一つは「2020年に近くに駅ができる予

現役文具屋がいく 2024年ベルリン文具買いだおれ報告会

ドイツと言えば文具の国。 そんなイメージは自分の中で未だに根強い。 筆記用具メーカーであるLAMY(ラミー)をはじめとして、ペリカン、ステッドラー、ファーバーカステル…… 自分が文具を好きになったきっかけも、ドイツの文具メーカーのアイテムを日本で見たことがきっかけだった。 そんな国に現役の文具屋が行くとすれば、色々買い付けてくるしかない。 今回はドイツとスイスを巡る中で手に入れたアイテムを、お店の情報と共にお伝えできればと思う。 ベルリンの最高な文具店「LUIBAN」さ

日本の文具屋が10日間、ドイツとスイスを100km歩いてきた話

「もう一度日本食が食べたいの」 それは私がまだ大学生の頃。 2006年のドイツワールドカップ関連のイベントのお手伝いで、ドイツに初めて一人旅に行ったときのことだった。 現地でショートステイさせていただいたドイツのご家庭で、滞在最終日にお父さんと娘さんの口論が始まった。 ドイツ語もわからず、その様子をなすすべなく見守っていた私に、お父さんが説明してくれたのは「娘が日本に留学したい」というので話し合っていることを英語で説明してくれた。 ただ、その理由は日本語の勉強や日本文化

A4文具バカ、史上最大の挑戦 A4サイズ発祥の地「ドイツ ベルリン」で『日本のA4文具の展示会』を開催します!

A4コピー用紙は文具である。 それはもともとは「痩せ我慢」から生まれた考えだった。 印刷を失敗したコピー用紙の「裏紙」は、新入社員にとって無料で使える頼れるノート。 日々のタスクから、会議の議事録まで、幅広く活躍してくれるオールラウンダーとしてとてもお世話になってきた。 しかし、独立して文具屋を始め、A4コピー用紙を活用する様々なアイテムを取り扱ってきたら、「A4文具」はとても奥深く、面白い世界だとのめり込むことになった。 noteやSNSでもニッチな私の取り組みを暖かく

有料
0〜
割引あり

レシートがキレイに撮影できないから、作ってみた文具がAmazonでランキング1位になった話

「だめだめ。これじゃキレイに撮影できてないよ。減点1」 2年前のある日。 そんな言葉が頭の中に浮かんだ。 それは、レシートをスマホのカメラできちんとスキャンすれば、原本を捨てて良くなったというニュースを目にしたのがきっかけだった。 正直その瞬間は「画期的!」と喜んだ。 スマホのカメラの画質はどんどん良くなってるし、クラウド会計ソフトでのレシート撮影ももともとやってた。 その習慣はそのままに、撮影後のレシートを捨てて良くなれば、保管スペースも必要ない。 これがデジタル化の

新年から全経理担当者に伝えたい 電帳法&インボイスの負担を減らす文具の話

世界で最も使われているカメラは「iPhone」である そんな話もあるくらい、iPhoneを始めとするスマートフォンは私達の生活に欠かせない道具となっている。 2007年に発売された初代iPhoneから、現在の最新モデルまでの累計販売台数は23億2,000万台を超えた、との推計値もあるそうで、その1台1台にカメラ機能がついていると考えればそれも頷ける話だ。 更には、iPhoneであれば基本の「メモ」機能から、書類のスキャンがショートカットで選べるように、書類のスキャンも当た

みんなが考えたくもない【電子帳簿保存法の改正義務化】でやるべきことを、超わかりやすくまとめてみた

「お正月くらい、お酒を飲んでゴロゴロしていたい」 個人事業主としてお店をやっていると、ついつい働くペースをコントロールできなくなる。 みんながお休みの時にこそお店を開いて、しっかり売上を上げる。 それは理論上は効率的なんだけど、休むときはしっかり休んでおかないといざというときに力が出ない。 だから今年は三が日くらいはゴロゴロしていようと思ったのだけど……なにか忘れているような…… そう。 人はギリギリにならないと思い出さない。 いや、見ないようにしていたというのが正しい

2023振り返り これがおれの最高地点だ………!!の先に行かねばならぬ話

「で、次は何をするの?」 2023年ももうすぐ終わる。 忘年会でお酒を飲みながら話していると、自然と来年の話題になる。 そこで、考えた結果返したのは「次になにをやればいいのかわからない」というなんともつまらないこたえが自分から出た。 でもそれにはわけがある。 それぐらい、空っぽになるまで自分を出し尽くすことに1年間を捧げてきたと言える。 今回は2023年を振り返って、文具屋の1年を振り返って行きたいと思う。 デザイナーとしてのものづくりチャレンジ2023年のスタートは

「N」の形が生む安定感 「ブック&ディスプレイスタンド」が使いやすすぎる話

ついつい買った本を適当に積みがちだ。 そんな人はきっと自分だけではないと思う。 本棚に収めてしまうと、どうにも読み返すのに時間がかかる。 かといって手に届く範囲に置いておくには、本は太さによって自立しないことも多くて、なかなかに取り扱いにくい。 そんな悩みを持っていた時、ハイタイドさんから新しい本立てが発売された。 立て方によって「Z」にも「N」にも見える不思議な形を見た瞬間、自分の目は「これなら解決できる!」と輝いてしまった。 今回はそんなハイタイドさんの新アイテム「

レシートをスマホで快適にスキャンすることだけ考えていたら、「家電」を作ることになった話

「もっと楽に、レシートをスマホでスキャンできないの?」 そんな言葉がまた私に投げかけられてきた。 2022年に「レシートスキャンボード」というニッチ極まりない商品をリリースしたうちのお店。 スマホのカメラでレシートをスキャンすれば、原本を捨ててもよいという法改正もあり、実際に試してみた時に起こるイライラが開発のきっかけだった。 デスクを片付けないと撮影場所が確保できなかったり。 クリアホルダーでシワシワのレシートを伸ばしても、天井照明が映り込んでしまったり、自分の影が入っ

ワークスペースを持ち歩く ノートPCケースが小さなオフィスになった話

「そんなに寒かったのか……」 少なからずショックを受けたのは去年の冬。 電池持ちが危なくなっていたノートパソコンを心機一転、新品に買い替えて起動しようとした時のことだった。 ……するとおかしい。 新品のはずの、電池持ちも良くなったと噂のM1チップ搭載Macbookが、電池のエラー表示を吐き出したのである。 その時ようやく気づいた。 うちのお店は夜、とてつもなく寒くなっていたのである 電化製品はどちらかというと「冷やした方がいい」イメージがある。 しかしながら、うちのお

テクノロジーにワクワクを取り戻す NOTHING流デザイン哲学の話を聞いてきた

NOTHINGというブランドをご存知だろうか? イギリスのロンドンに本拠地を持ち、まだ3年目という若い会社でありながら、スマートフォンやワイヤレスイヤフォンを世に出し、そのかっこいい製品に共感する人々を多く持つ会社だ。 先日もCMFというブランドラインから1万円ちょっとの価格のスマートウォッチを発表。 アマゾンでもすぐに在庫がなくなってしまうぐらいの話題性とともに注目を集めている。 かくいう私も大ファンで、スマートフォンこそ手を出せていないものの、イヤフォン等にも手を出させ

無印良品の文具がシンデレラフィットするトレイを作ったら、お片付けが「快感」になった話

「あれ? はさみここに入ってなかったっけ?」 職場で事務用品が入った引き出しを開けて、使おうとしたら文房具が見つからない。 そんな経験、誰もがあるのではないだろうか? 自分の机というものが「フリーアドレス」なる言葉の元になくなりつつある今、手元の道具も最低限にして、必要な文房具は共用のものを使うなんて機会もまだまだある。 そんな時に、いつもの引き出しを開けると必要な道具が見つからないときの苛立ちは決して無視できない。 「蛍光ペンがない」「伝票が見当たらない」などといった

【台湾を旅する文具店】 文具と食を求めて42.195km歩いた話

2023年はひたすら「旅」をする1年だった。 移動販売車を作って、北は北海道、南は九州までを走り回り、様々な地域でお客様に直接お会いして文具を販売してきた。 旅はしんどいこともあるけれど、まだ見ぬ場所でまだ見ぬ人と交流しながら過ごすことは楽しい。 とはいえ、8月から7000kmも走り回っていれば疲れも出てくる。 なにか違う刺激を……というところに、仲の良い「毎日、文房具。」を運営するたかたくさんから「山下さん 台湾行きませんか?」とお声がかかったので飛びついた。 台湾は