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マイクラ世界の歴史と社会を考察する①|統一性と広域性から見える、古代帝国の存在

【※本記事は茶番記事です。】


0.謎に満ちたバニラワールド

 実際にプレイしたことはなくても、耳にしたことがある人は多いはず。今や教育現場での活用も始められている、サンドボックスビデオゲーム、マインクラフト(通称:マイクラ)。

 様々な種類のブロックで構成された世界で、アイテムを作り、拠点を築き、そして最終的にはエンドの支配者たるエンダードラゴンを倒すことで一応のゴールに到達するというこのゲーム。様々なModを活用することで、新たなブロックやアイテムアイテムを増やし、多種多様な世界を創造することができる、まさに「可能性は無限大」のゲームである。

 話を戻し、そうした追加要素を伴わない状態のマインクラフトで生成されるワールドを「バニラ」と呼称するが、このバニラワールドは、プレイヤーの他に人間と言われる存在、また人間が築きあげたであろう都市や街といったものがほぼ全くと言っていいほど存在していない。

 度重なるアップデートで生成される構造物の種類は増えているものの、プレイヤー以外に人が住んでいるのは小規模な村だけであるし、その他の人工物はほとんど廃墟である。なぜこの世界にはちんけな村しか存在しないのか。各地に点在する廃墟には、どのような歴史と意味があるのか。村人に語りかけても、彼らは「フウン」としか話さないし、理不尽な交換レートで取引をふっかけてくるだけだ。

 そこで、本記事では、記事作成時点のバージョンで生成されるバイオームや構造物等を基にしてマインクラフトのバニラワールドの歴史、そして社会について勝手に考察していきたいと思う。シリーズ(予定)最初の今回は、かつてバニラワールドには古代帝国が存在したという仮説について、「統一性」と「広域性」から考察していきたい。


1.「統一性」と「広域性」を寺院に見る

 バニラワールドに生成される構造物のうち、古いバージョンから存在するのが「砂漠の寺院」と「ジャングルの寺院」である。それぞれ砂漠バイオーム、ジャングルバイオームに生成され、内部にはトラップ仕掛け、そして貴重なアイテムが入ったチェスト(往々にしてゾンビ肉等不要なアイテムも入っているが…)がある。

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 バニラワールドの歴史を考察する上で、これらの寺院の前提は欠かすことができない。なぜならば、これら2つの寺院は、バニラワールドに「同じ設計」のものが「広範に分布している」しているからである。

 同じ設計の建造物(公共建築)が広範な地域に分布しているという例は、現実世界では古代ローマの都市建築が典型例である。

「どの都市にも、都心部には神殿がありフォルムがありバジリカがあり、それを少し離れて囲むような感じで、半円形劇場、円形闘技場、ギリシア式のスタディアム、公衆浴場が点在し、その間を街路と住居と共同の水汲場が埋めていく。(中略)簡単にまとめればこのような感じが、ローマ式の都市であったのです。」(塩野七生「ローマ人への20の質問」p.117-118)

 広範な地域に同じ形式の建物が分布しているというその事実だけでも、かつてバニラワールドがあるひとつの統治機構によって支配されていたこと(統一された文明が存在したこと)が推察できる。それだけにとどまらず、全ての寺院が同じ構造を取っているということが興味深い。

 宗教施設(公共建築)が国家的事業として建築された例は史実にもあり、ヨーロッパにおける教会、アラブ世界におけるモスク、そして東洋における寺院がその例である。バニラワールドの2つの寺院も、おそらくは公共建築として、国家的事業の一環で建てられた可能性が高い。

 しかしながら、現実世界の宗教施設は、基本的な建築要素(教会であれば十字架とマリア像があるといったような)は統一されながらも、個々に設計やデザインが異なっている。公共建築としてのバニラワールドの寺院が全て同じ構造をとっているということは、寺院がそのように建築されるように指示、あるいは法整備をすることができるだけの権力を有する、強力な統治機構が存在したということがうかがえるのである。

 そしてバニラワールドの広さ(ブロック設置が可能なワールドの広さ)もまた、重要な手がかりとなる。プラットホームによってその広さが異なるために、便宜的に最も広いPC/Javaを基準とするが、その広さは一片が6000万ブロックの正方形であると言われている。

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【上画像:マイクラワールドの限界境界(世界の果て)】 

1ブロックを1メートルと仮定した場合、バニラワールドでプレイヤーが干渉可能な面積の実際値は60,000km^2=3,600,000,000km²(36億km²)となる。日本の面積が約38万km²であるため、実に9500倍近くの面積である。地球の総面積と比較しても7倍だ。現実世界で言えばそれだけの桁違いな面積に、統一された構造の公共建築を建てるだけの統治機構が存在していたのだから、それはそれは凄まじい権力と権威を有していたに違いない。

 これらの事実から、マインクラフトのバニラワールドにはかつて、全ての地域を支配する、高度に中央集権化された古代帝国があったということが考察され得るのである。


2.古代帝国の名残|村の構造

 寺院以外にも、比較的大きな、かつ統一性と広域分布性を持った構造物はいくつか存在する。地下にある要塞、廃坑、ネザーバイオームの要塞、海底神殿などがその例である。(次回以降取り上げる。)

 そして各地にある村もまた、その設計に統一性を有している。バイオームによって家々に用いられる素材は異なっている(草原バイオーム→木と丸石、砂漠バイオーム→砂岩など)ものの、幅3ブロックの道の周りに、住居、畑、鍛冶屋、図書館、教会(これは寺院ではないのか?)等があるという構造。古代ローマの都市設計が各地で統一されていたのと同様に、村々にもその設計に統一性があるといえる。

 現在のバニラワールドから既に古代帝国の存在は失われているものの、各地の村々に設計の統一性があるということは、人々がかつては同じ国家(文明)に属していた歴史を有していることの何よりの証左である。

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【上画像:砂漠の寺院を内包した村。寺院のすぐ脇に畑を構築するという村人の寺院へのリスペクトの薄さからも、かつて存在した宗教や前時代の権威は失われているものと思われる。】

3.古代帝国の名残|統一通貨

 また村人と取引を行う際に求められるのは、決まってエメラルドであるということも重要な要素で、これはかつて古代帝国で用いられていた統一通貨がエメラルドであったことに起因するものではないかと思われる。

 古代ローマの金貨で有名なのは4世紀以降に流通したソリドゥス金貨で、ローマ帝国滅亡後も、11世紀頃まではヨーロッパで使われたと言われている。強力な国家の、信用性のある通貨が広い地域で、長い期間に渡って世界通貨となる例は、ローマ・ソリドゥスから、現代のアメリカ・ドルに至るまで受け継がれている社会原理と言っていい。

 加えて重要なのは、このエメラルドが先に紹介した2つの寺院内にあるチェストから発見されるということなのである。かつての古代帝国の遺跡の中に、現在も村人間の取引で用いられるエメラルド通貨が存在する。この事実だけでも、古代帝国と現在の村の関連性を証明することが可能である。

【次回予定:マイクラ古代帝国の社会を想像する】

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