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発音なんか気にしない―タイ人と歩いたミルウォーキーで

今から15年も前の話。
私はウィスコンシンのとある田舎町の大学に留学していました。
どれくらい田舎かというと、電車もバスもない。そんな田舎はアメリカでは全く珍しくなく、あの広い国土の大半はド田舎です。
 
そんなド田舎で、足がない留学生を都会に連れ出してくれるバスツアーが数か月に一度開催されていました。
これはミルウォーキーへの日帰りツアーに参加したときのお話しです。
 
朝、バスに乗るとき出会ったタイ人の女の子(仮名:エリー)と友達になり、一緒にモールへ。
(留学していた大学では日本人は5~6人しかおらず、アジア人はタイ人かモン人がほとんど)
 
エリーは日本のマンガが大好きで、私たちは勇んで本屋へ向かいました。
そこで判明したエリーの読マンガ量は私の想像をはるかに超えていた。
「ふしぎ遊戯」「ワンピース」「鋼の錬金術師」「幽遊白書」「らんま」「天は赤い河のほとり」……
タイではマンガがかなり安値で売られていて、がーーーっ!と買うそうです。
 
彼女が知らなかったのは、「風光る」と「最終兵器彼女」。
ハッピーエンドが好きらしいので後者は読まないほうがいいといっておきました。
 
エリーお目当ての「のだめカンタービレ」は置いてなかったけど、それでも彼女は3冊ほど購入。私は英語版のジャンプを買いました。5ドルだった。
 
 
でね、こっからが本題。
エリーとコミュニケーションをとるのには大変な苦労がいりました。
彼女の英語はもんのすごいなまってたんです。タイなまり?
彼女ほど強烈になまってる人は初めて。(その後の人生入れても彼女がいまだにナンバーワン……)
で、アメリカンの英語すらうまく聞き取れない耳の鈍い私に、ヘヴィなタイアクセント?の英語がわかるはずもないのでした。
 
私が質問して、エリーが答える、なら比較的大丈夫。
一応私の英語はわかってもらえたし、答えというのは予想がつくものだから。
 
困ったのは、彼女が質問したとき。
何を聞かれているのか、わからない!!!
WhenとかWhatとか、あと核になる数単語が聞こえるだけで、「シカゴ」がなんなのか、「留学生」がどうなのか、もうさっぱり。
何度繰り返してもらっても、彼女の発音が変わるわけではないので、こちらが必死に推測することになるんですね。
頭使いましたが、かなりの部分は結局理解不能でした。
まぁ、それでも二人で楽しく街をまわれたので、よかったです。
 
しかしエリーのすごいところは、そのなまりまくった英語で、誰にでもすぐ、一瞬のためらいもなく質問するところでした。
「炊飯器はどこで売ってますか」
「アイスの試食はできますか」
「『のだめ』は置いてますか」……
 
彼女の質問する際のすばやさときたら、目にも止まらぬ勢いでしたね!
 
何かしゃべるたびに「え?」って聞き返されたら、私ならもう少し質問を控えると思う。もうどうしようもないときだけ人に聞く、かな。
その点エリーの積極性には学ばされました。留学生たるもの、ああでなければならん、と。
いちいち発音とか気にしてたらダメだ。
 
とにかく人に話しかけること。これ、すごい重要な能力だと思います。
性格面である程度個人差が出るのは避けられないところですが、多少は意識してがんばってみよう、とその時思った。
 
あと、発音で肝心なことが何か、も学んだ気がします(笑)
発音、というかアクセント・ストレスの置き場所なんです。通じるかどうかは。
カタカナ発音で「オレンジ」は通じないけど、
「オーレンジ」(オーを強く言ってあとは引く)なら通じる確率が上がります。多分。

留学先で、アメリカ人?だったか何人だったか忘れたけど、とにかく英語ネイティブレベルの旦那さんに、カタカナ英語の日本人奥さん、という夫婦に出会ったんですが、奥さんの英語はきれいにカタカナで再現できる感じでした。でもアクセントは標準的だった。それで家族は困ってなさそうだったし(慣れてるか)、その方も生活に支障ない感じでした。
 
こういったことが強く印象に残ったので、教員時代は「アクセントはしっかりはっきり!」と教えていたつもりです……
発音はどうせ世界中にいろんな英語あるので、ほどほどでいいんです。
ただ、アクセントだけは意識して練習したほうが、お互い通じやすいでしょう。
 
そして何より大事なのはためらいなく堂々と人に話しかける積極性です……
エリー、元気ですか? 今も変わらないあなただといいな。

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