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聖闘士星矢で一番「悪役」をお楽しみになったシオン様と羊一家についての放談

聖闘士星矢で一番悪役をエンジョイしたのはシオンだと思うんですよ。なんだあのはしゃぎっぷり。絶対アレうれしかったんだよ純粋に。18歳の若い肉体。久々にふるう権力。「ヒャッハー! たっのし―――!」が全てのコマからあふれ出てるもん。単に必要に迫られて演じてるって域を軽く超えてる。
 
ほかのヒールキャラを見渡すと、一輝はちょっとグレちゃっただけだし、サガもカノンも悪役ではあっても罪悪感が強くて、今一つ楽しそうじゃない。悪役になりきれなかったからああいう悲愴な最後(カノンは生き延びるけど)をたどった。ポセイドンとハーデスはそもそも自分が悪役だと思ってない。悪役ってなに? 我、神だから。
 
なので、「悪役」をノリノリでやってくれたのはシオン様だけなんだな。一応、演技だけど。
あとデスマスクもいい表情してたけど、ちょっと「小物」感がぬぐえなくて…(ファンの方すみません…でもたぶんガチのでっちゃんファンはあの「小物」感を愛してるんじゃないかな…)
 
※以下、シオン・ムウ・貴鬼の師弟関係について、原作漫画を元に展開する個人の無根拠な妄想です。もちろんネタバレです。(すでに手遅れの注意)

あまりにもイキイキしすぎてるシオン様カワイイよね



シオンの愛弟子・ムウ

とっても楽しそうなシオン様…あのテンションの高さは、立派に成長したムウが見られた喜びの表れかもしれないな、と。ムウをいじめて明らかに楽しんでましたよね…いたずら好きなんだろうな実は…
教皇やってたときは立場上あまりはっちゃけられなかっただろうし、ご老体でそこまでの元気はなかったんだろう。ムウと年齢・立場ともに離れすぎてて交流が難しい部分もあったかもしれない。
 
ムウの修業時代に、シオンがどれくらい直接かかわっていたかは怪しいと思う。どちらかというと後見人的立場にすぎなったのでは。課題を与えて進捗を見守る、とか。技を授けたときは直接教えただろうけど、ムウ様は超優秀だからそんなに習得に時間がかかったはずないし…
でもムウのことは特別大事だっただろう。賢くてかわいい美童だもんな。「秘蔵っ子」というのか。
 
シオンの「わたしはおまえが可愛い」(JC⑲p.105)っていうの、私が初めて目にした「かわいい=大切」の用法だった。カミュと同じ謎の過保護理論で、ムウだけは過酷な戦いに巻き込まず楽に死なせてやろう、というわけですが、シオンは本当にムウを殺すつもりだっただろうか。邪魔が入るのを察知していたんじゃないか。あるいは、ムウが星矢にしたように、一時的にすんごい遠くへスターライトエクスティンクションしようとしてた可能性もある。
 

貴鬼とムウの不思議な「師弟」関係

ムウとシオンの師弟関係は、貴鬼とムウのそれから類推できるかもしれない。
この二人もちょっと変わっていて、貴鬼は「弟子」って感じがしない。どちらかというと「小間使い」っぽい。「ムウ様」って呼んでるしね。「ムウ先生」じゃなくて。これ、ムウも「シオン先生」と呼ばなかったからだろうな。絶対「シオン様」って言ってたよ。子どものころ。そらそうよ、教皇だもん。
貴鬼はサイコキネシスを使えるけど、一生懸命修業している雰囲気がしない。ざっくりした課題は与えられてるのかもしれないけど、魔鈴さんみたいにムウはそれを見張ってない気がする。「あと1000回!」ってムウ言わなさそう。「死ねば」とかも言わなさそう。
 
貴鬼は自分を「聖闘士見習い」だと言うが、ムウの方ではどう思っていたか。聖戦に赴くのは自分で、それが終わればしばらく(数百年?)平和だとすると、今8歳の貴鬼を聖闘士にする理由はほとんどない。そもそも貴鬼がどういう経緯でムウのところにいるのかも、原作を読むだけではわからない。(大人の貴鬼が出てくるというスピンオフではそのあたり語られてるんですかね?)なんとなく、貴鬼は「押し掛け弟子」のような気がする。あるいは孤児なのをムウ様がなりゆきで引き取って育てている、とか。で、貴鬼だけが「おいらは聖闘士見習い!」って思ってて、ムウ様は別にそんなつもりない…とか。
 

麻呂眉の一族

今までに世界中で5000万回以上指摘されてきたことだけど、シオン・ムウ・貴鬼は3人そろって麻呂眉なんだよね。チベットの一部地方には麻呂眉の一族が暮らしているのだろうか。あれは整えた結果で、ほうっておくと普通の眉になってしまうのか、それとも人為的な作業なしにあの眉なのか。とにかく彼らには明らかに民族的ないしは文化的なつながりが感じられますね。サイコキネシス持ちが多い一族があの辺りに隠れ住んでいる可能性はある。そこで幼くして親を失った孤児の貴鬼をムウ様が引き取る。おお、我ながらものすごく納得がいく説明だぞ。
 
シオン様がムウをピックアップしたのも似たような経緯があったかもしれない。シオンは故郷の人々に、才能ある子がいたら聖域によこせ、と言い置く。そうして何人か「お試し」があった。その中でダントツの資質を見せたのがムウ。そのときムウに親がいたかはわからないが、あんな異能はどのみち親の手には負えまいから、案外「厄介払い」だったのかも……このへんは二次創作の領域に入る(とっくに入っている)。
 

親子・じじ孫な年齢差

ムウ20歳・貴鬼8歳って、けっこうな年齢差じゃないですか。兄弟というよりは親子。
カミュと氷河は14歳と8歳だったわけで、これは兄弟。なぜ氷河は6つ年上なだけのカミュをお兄ちゃんじゃなくてマーマにしてしまったのか。なぜアイザックは脳内で師をきれいなお姉さんにしてしまったのか。たとえばあと5年たって、カミュ25歳・氷河19歳を思い浮かべると…ええやん…
いや話が逸れた。ムウ様と貴鬼である。20歳と8歳。12歳差だ。あの「火垂るの墓」だって14歳と4歳、10歳差なんですよ(何を言っているのか)。そこいくと12歳差はかなり大きな年齢差で、例えば貴鬼が5歳のころにムウのところに来たとすると、ムウ様は17歳。聖闘士星矢世界では完全な大人。
 
貴鬼はライブラの聖衣箱を運びまわったり、その途中でアイザックに足蹴にされたり、彼なりの仕方で戦いに参加している。しかし、彼はあくまでマスコット的存在であって、戦闘力はほとんど期待されない。貴鬼自身にも、8歳のころの氷河のような決然とした空気はない。どうも、貴鬼は聖闘士を切実に・命がけで目指していない気がする。そしてムウも、ぜひともこの子を聖闘士に、と思ってなさそう。単に自分のところにいる子ども、くらいでもおかしくない。「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい(〇大ハム)」。
 
シオン様から見たムウはというと、これはもう「おじいちゃんと孫」ですよ。現実にはありえない年齢差ですからね。
孫はかわいいものだと聞きます。そのかわいい孫(実の、ではないが)は黄金聖闘士候補だった。天才的なサイコキネシスを持った神童。聖戦を戦う勇士。ムウは敏いから、シオン様や周囲の人々から寄せられる期待を十分察知して、自ら鍛錬に励み、聖衣の修復技術を学び、驚くべきスピードで成長した。たったの7歳で、黄金聖衣をその身にまとった。早熟な天才。愛らしい子ども時代は瞬く間に過ぎ去った…
 

自由放任・温かい信頼の目

いつも以上に話がまとまりそうにないな。シオン様から見たムウね。その関係をムウ・貴鬼の関係から類推できるかって話ね。
この2組は置かれた環境があまりに違うので、比較は難しいが…(今更なにを言う)
ムウと貴鬼は辺境に二人っきりで暮らしていて、普段お互いしか話す相手がいないレベルだと思う…ん? 貴鬼のあの子どもらしさは逆にどこから来てるんだ。近隣の村の子たちと時々交流があったりするんだろうか。そうじゃないとムウ様と二人っきりであのしゃべり方になるかなあ。新たな謎が発見されてしまった…
 
対してシオン・ムウは聖域に主にいたはずで(ムウの修業地はジャミールとなっているが、ふつうに考えると教皇のシオンは聖域にいたはずなので、プロフィール情報のこの部分は私としては敢えて無視しておきたい)、師匠はみんなの教皇であり、ムウから見ると相当遠いお人だったはずだ。総理大臣のおじいちゃんがときどき孫の顔を見に来て遊んでいく、くらいか。その中で聖衣の修復技術を伝え、牡羊座の技も教え…あわただしいけどムウは天才だったから、べったり手取り足取りしなくても数年でできちゃった、と。
 
ムウ様が貴鬼をそれほど構わないで自由にさせているのは、シオンのやり方を踏襲しているんでしょう。つかず離れず。でもあたたかく見守る。シオンにあたたかさがあったか? ちょっと漏れてくる部分があって、それがJC⑲p.86の「天翔ける黄金の羊のごとく常に優雅な微笑を絶やさなかったムウが初めてその牙をむいた!!」ですね。ここにも弟子コンの師匠がいるな…とにかく、シオンにとってはムウはいつも遠慮がちに微笑んでいるかわいい子だったわけです。最後にお別れしたのは13年前、ムウはまだ7歳。かわいい盛りですね。シオンとムウが毎日顔を合わせていた気はしないけど、でもシオンは教皇の執務の合間にムウの様子をきちんと見ていた。
 
ここ、ちょっと不思議でもある。読者は当時突っ込まなかったんだろうか。「ムウってそんな微笑んでたっけ?」って。ムウ様ってどっちかというと無表情じゃない? 今風に言うと「スンっ」て感じの。アイザックと一緒に氷河を迎えたカミュの方がよっぽど笑顔だったよね! あのわが師本当にかわいいんだ
 
また話がそれ出した。少なくとも、シオンから見るとムウは常に優しい微笑をたたえている子だった、ということ。ムウは賢く大人びていたので、一歩引いて自分の感情を表に出さず、ただ微笑んでみせていたんだろう。たぶん、シオンはあまりに早熟な弟子の「鉄壁の微笑」を見てきた。サガの悪心を見抜いたシオンだから、ムウの微笑もちょっと切ない思いで見ていたかもしれない。
 

シオンとムウ・師弟の再会

そんなムウがすっかり立派になって目の前にいる。頬のふっくらしたお子様が、涼やかな美丈夫に成長して、十二宮の第一宮を守護している…感動してテンション上がっても仕方ないよね! あと、突っついてどんな反応するか見てみたくなるよね! わかるわかる!
 
…まあ、シオン様のあの弾けまくった悪役っぷりは、たぶんそんなところから始まったんじゃないかな、と思ったりします。
 
ほかにも自分を殺したサガをアゴで使えるとか、盟友・童虎と超久しぶりに会えた(しかも自分だけ若返って)とか、シオン様のテンションがMAXになる理由はいくつもあったわけで…シオン様、最後に楽しい思いができてよかったね…と思ってしまうわけです。
 

今年もオタク話と読書記録を野放図に書かせていただきます。
新年、明けましておめでとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

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