[8]パイロットまで、あと2年。
海から上がってから身体中がヒリヒリする。
もはや痛い。
「なんか痛くね?」
隣のブン太にも確認する。
「あれ?お前も?なんか俺も股間がムズムズしててさ」
「やっぱそうだよな!ち◯こが痒いわけでも、股ずれともなんか違うんだよな」
「それ、セクハラなんだけど」
詩音が睨む。
「いやいや、マジなんだって!」
「日焼けなんじゃないの?着替える時に何か塗った?」
「塗る?なにを?海に入るんだから落ちるでしょ」
「先輩から教わらなかったの?」
「聞いてねぇよー!なんか秘密の塗り薬でもあるのかよ?」
「ワセリンよ」
「ワセリン?」
「そう、ワセリン」
聞いたことはある。
が、なんか役に立つのか?
「僕も先輩からワセリン塗っとけって言われたよ」
東川も頷く。
「なんで教えてくれなかったんだよ!」
ブン太が東川に肩パンする。
「いや、だってみんな塗ってたじゃん」
「日焼け止めかと思ってたんだよ!今から泳ぐのにこいつら無駄なことやってんな〜と思ってた。」
「バカなのはあんたらね」
「なにおう!」
ありきたりな海の家でちゃぶ台を囲んで食事する。
これもある意味では青春なのかもしれない。
東川がご馳走してくれたラーメンを食べながら俺は考える。
「で?ワセリン塗るとなんの意味があるんだよ」
「日焼けと股ずれ防止よ」
「マジかよ」
「知らなかった。」
「僕なんかち◯こにも濡れって先輩から言われたよ」
東川の不用意な発言に詩音が無語で睨みつける。
「あ、ごごめん。」
「ごめんで済むと思ってんの?はぁ、あんた達そんなんだったら合コンやめるよ?」
「だー悪かったよ!東川は俺がシメとくからさ、な?」
ブン太が取り繕う。
「そんな裏技があったなんて、明後日の本番どうすりゃいいんだよ」
「貸してくれよ〜東川ぁ〜」
「いいけど、地味に高いんだよ」
「大丈夫だって、俺らにラーメン奢ってくれるくらいなんだからさ」
「だから余計苦しいんだよ、、」
「青春だ、間違いない」
俺は思わず呟いていた。
「あぁー?何言ってんだおまえ」
ブン太が覗き込む。
「日射病にでもなったんじゃないの?」
詩音がこっちを見る。
「だってそうだろ。まがりなりにもお前は女だし、友達と仲良く和気あいあいとしている」
「あ?まがりなりにも?」
「うそうそ。」
「ま、陰キャの戯言ね」
まだ早いのか海水浴に来ている人はいない。
季節外れかもしれないが夏を謳歌している。
こんな生活高校時代にはなかった。
今はじめて自衛隊に入隊して良かったと思った。
飛行機全然関係ないけど。
「なんか飛行機乗らなくても満ち足りてるわ」
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