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読書感想-どこまでやったらクビになるか(大内伸哉)

▽2008年の本

SNSでタイトルを目にして購入した。
「どこまでやったらクビになるか」。この問いかけ、どこか会社員に刺さるものがある。

新しい本かと思っていたが、読み始めると、内容がところどころ古くさい。

なにも労働法や判例の話ではなく、セクハラ関係の例え話で女性芸能人の実名を挙げて「○○似社員のケース」と書いている点など、どこか議論がオジサンっぽい感じがする。

昨今の読者は、おそらく眉をひそめるのではないか――そう思って確認すると、なんと2008年の書籍だった。道理で。この15年間で、社会通念がそれだけ変化したのだとも言える。

実際、最近投稿された感想を見てみると、「的外れ、がっかり」という手厳しい意見が。「最新版がほしい」という意見も散見された。

ただ、古い本だからといって、使いものにならないと切り捨ててしまうのはもったいない。

「どこまでやったらクビになるか」を知りたい人は、今も多いはず。むしろ現代の方が、関心は高まっているかもしれない。その観点から考えてみたい。

▽会社とは喧嘩できる

会社員として数年過ごすと、ときどき「ヤバい社員」や「ヤバい環境」と鉢合わせすることがある。

組織人としての責任を果たさない「給料泥棒」な人がいるパターンもあれば、仕事はできても社会通念に反する行動をする人もいる。悲しいことに、「組織全体がヤバい」という場合もある。

いま挙げた順に、対処も難しくなろう。特に組織がおかしい場合などは、深刻な葛藤が生じ、人間として疲弊させられてしまう。

「社会人」という表現は広く使われるが、考えてみれば、普通に過ごしている人が社会通念と触れる機会はそれほど多くない。学校も会社も、閉ざされた世界だ。

一般に、就活、採用、卒業、入社という過程を経ることを「社会人になる」と言う。しかし思うに、それは会社員になっただけにすぎないのではないか。

会社に入った僕らが触れるのは社会通念ではなく、社内や業界の常識だ。組織の中で立ち回り、生き残ることが第一優先。真面目な人や意欲のある人ほど、懸命に、前のめりになって染まってゆく。

会社の不正を告発したり、合わない会社から出ていくのは、だからこそ難しい。会社内の論理ではない、社会通念や自分自身の考え、覚悟を信じる必要がある。

最近、ビッグモーターやジャニーズ事務所などの不正や問題がクローズアップされている。「どうしてこんなことがまかり通っていたのか」と思わされるが、由来、組織の力というものはそのあたりにある。

この本には様々な事例が紹介されていたが、細々した知識よりも(そもそも古くてアテにならない)、冒頭の一文がもっとも有益だと感じた。

何が法的にみて正しいのかということを知っておくと、自分の視点を一段高いところに置くことができます。「法」のルールを知っておけば、どんなときに会社と本気で「喧嘩」すべきかということも冷静に判断できるようになるでしょう。

まえがき

会社は間違えることもある。会社と喧嘩することもできる。その前提に立った人こそ、「社会人」と呼ぶに相応しいのではないか。

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