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BAG ONEイベントレポ #04 | 北尾トロ × 片野ゆか トークイベント 「犬ってこんなにワンダホー」


突然ですが、皆さんは犬派と猫派、どちらですか?

こんばんは、実家で飼育したことのある動物はハムスター(1ヶ月で失踪)と亀(母が全飼育を担当)、編集部 saです。


どうしてこのようなことを冒頭で言っているのか。それは北尾トロさんの新刊犬と歩けばワンダフル 密着!猟犬猟師の春夏秋冬』(集英社)の刊行を記念して、5月8日にトークイベント・北尾トロ×片野ゆか 「犬ってこんなにワンダホー」が開催されたから!

北尾さんは『夕陽に赤い町中華』(集英社インターナショナル)や『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(文藝春秋)などの著作で知られるノンフィクション作家。2012年から2020年までは長野県松本市で暮らし、狩猟の資格も取得。『猟師になりたい!』(KADOKAWA)など、狩猟にまつわる作品も発表し、幅広く活躍されています。

本をもつ北尾さん

片野さん

今回対談相手として登壇した片野さんは、『北里大学獣医学部 犬部!』(ポプラ社)をはじめとする犬に関する著作を多数発表しているノンフィクション作家。獣医学部に実在したサークルを元に書いた『犬部!』は、7月に映画化も決定! saは予告編だけで泣きそうになりました(編集部デスクにて)


元々は犬が苦手だった

犬と歩けばワンダフル 密着!猟犬猟師の春夏秋冬』は、長野県に暮らす“猟犬猟師”の方に北尾さんが密着した、臨場感溢れるドキュメンタリー作品です。

前書きには、今回北尾さんが密着した“猟犬猟師”の方について、このように書かれています。

犬を使った狩猟は昔から行われていて、とりたてて珍しくもない。「一犬、二足、三鉄砲」と言われるように、狩猟では優れた相棒である犬と山を歩くことの大切さが説かれてきた。数こそ少ないが、ひとりで犬を連れて山に入る猟師もいる。でも、僕が出会った猟師はちょっと、いや、かなり変わった人なのだ。
犬が好きすぎるのである。
あまりにも好きだから、「そんなに必要なのか?」と思わずにいられない頭数を連れていき、かえって効率の悪い猟になることもしばしば。それでもまったく気にすることなく、日が暮れるまで家へ帰ろうとしない。そういう人をどう呼べばいいかと考えて、“猟犬猟師”と命名した。(まえがきより)


今回猟師の方を取材するにあたって、北尾さんが重要視したのは、「犬とともに人生を歩んでいる猟師」だということ。
わざわざこのような条件を自らに課したということは、北尾さんは相当な犬好き? と思いますよね。

しかし実は北尾さん、幼いころに噛まれたことがきっかけで、犬には最近まで苦手意識を持っていたそう。それが今回犬を題材にした書籍を書くまでになったのは、義実家の柴犬・ハナちゃんの存在と、猟犬猟師の方のもとを訪れた際に、猟犬たちを「怖い」ではなく「すごい」と思えたことが大きかったそうです。


猟犬の走り方で獲物が分かる

前書きには、猟犬猟師の方が「犬が好きすぎる」とありますが、その数なんと6頭! 3世代にわたる個性豊かな犬が猟師の方とともに暮らしています。

ブラ

ブラフォード(ブラ)……お調子者で憎めない性格。紀州犬の血を引いている

アンズ

アンズ……人見知りだがしっかり者で、猟犬としてのセンスは群を抜く

カエデ

カエデ……ブラとアンズの間に生まれる。顔がお父さんのブラそっくり

モミジ

モミジ……ブラとアンズの間に誕生。垂れ耳がチャームポイント

ハナ

ハナ……脚力と走力は随一。ブラの母親でもある

ヨモギ

ヨモギ……老犬で出猟機会は少ないが、毎日の自主トレを欠かさない


猟の仕方も、猟犬たちだけを獲物がいそうなポイントに放ち、犬たちが自ら獲物を見つけて追いかけない限りどんどん次の地点に移動していくという全幅の信頼を寄せた狩猟スタイル。猟師は無線とGPSで猟犬の動きを見て、獲物を確認します。

今回私が話を聞いて驚いたのは、猟師さんは猟犬に着けているGPSの動きを確認するだけでどんな獲物を狙っているかが分かるというもの。

猪や鹿・カモシカという動物の種類だけでなく、その性別や年齢まで、追いかけ方で予想できるといいます。時には無線から聞こえる犬たちの呼吸音や吠え方から、大物の獲物と察知し、急いで向かうことも。まさに、お互いになくてはならない存在です。

北尾さん


危機一髪! 子犬たちに助けられた夜

北尾さんが同行していた狩猟は、基本的に朝8時ごろから日没まで休まず狩猟を行なうというハードスケジュール。
狩猟に慣れた猟師さんは一日バテない脚力を持っていたそうで、それに北尾さんはよく置いていかれていたとのこと。

ある日、北尾さんは猟師さんを見失って迷っているうちに、日没を迎えます。少しの明かりもない真っ暗な山の中、北尾さんを迎えに来たのは子犬の頃から接していたモミジとカエデ。北尾さんの先に立ち、時には後ろを振り向きながら無事帰路に。

このエピソードに片野さんは、
「犬好きとして犬に助けられるというのは、少し憧れのエピソードです」
とおっしゃっていました。確かに、道を先導してくれるなんて、『猫の恩返し』みたいですね……。(犬じゃない)

山登り

後ろのスクリーン、急斜面の移動について語る北尾さん。通常は斜めに登っていく山道を、犬や猟師さんは直線に登っていくとのこと


よい犬とは、無傷で帰ってくる犬

獲物を仕留める手伝いをする猟犬。「よい猟犬」とはやはり、「多くの獲物を仕留められる犬」なのでしょうか。

今回取材した猟師さんは、獲物を外すと「犬たちが危ない思いをして獲物を止めてくれたのに、仕留められず申し訳ない」と言うそうです。一方で犬たちも、「獲物を追うことが楽しい」から狩猟をするというわけではなく、猟師さんが喜んでくれるから、一生懸命に狩猟をする、と北尾さんは話します。そして、ここに人と犬の絶対的な信頼関係を見た、と。
猟師さんは「よい猟犬」とは何か、こうも言います。

「よい犬とは、無傷で帰ってくる犬。いかに獲物の威嚇や攻撃をかわしながら、その場に留められるかが重要。」

これはもちろん、猟犬としての能力のことも指していますが、一方で猟師さんの「怪我をしてほしくない」という思いも含まれています。言い換えれば、どんなに大きな獲物を仕留められたとしても、その際に猟犬が命を落としていたら何の意味もないということです。

北尾さんはこの様子を見て、猟師と猟犬は狩猟を通して関係をより強いものにしている、と話します。通常は狩猟のために猟犬を飼いますが、「狩猟」を一つの接地面にして犬との絆を結ぶ今回のお話は、犬と人間の新たな関係のかたちを見られたような気がしました。

ツーショット



写真:小堀ダイスケ、編集部

文:sa


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北尾トロさんの新著・『犬と歩けばワンダフル 密着!猟犬猟師の春夏秋冬』(集英社)は絶賛発売中です↓↓


片野ゆかさん原作・映画『犬部!』は、7月22日全国ロードショーです!↓↓


【BAG ONE(バグワン)とは】
出版社トゥーヴァージンズが運営する「本を読む人が集まる場」をコンセプトにした「BOOK & CAFÉ BAR」です。
お酒がどれも本当においしい! 「ラムハイボール」は、普段ラムを飲まない方にも飲みやすくておすすめ◎  saもとても好きです。


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【sa】

入社2年目、4月から編集部配属。大学時代は北尾さんと同じ、長野県松本市で過ごしました。おいしいご飯やさんと、個性的でおもしろ〜い人がたくさんいる、素敵な街です。


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