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ホルゴス経済開発区について

1.ホルゴス経済地区について

中国・カザフスタン国境に位置するホルゴスの「中国・カザフスタン国際国境協力センター(ホルゴス経済地区)(以下、ICBC)」は、中国が進める「一帯一路」構想の一部として、中国からカザフスタンを経由して中央アジアやロシア欧州方面へ繋がる物流のハブとして戦略的な事業として位置付けられている。

ホルゴス経済地区の最大の特徴は両国の共同運営で貿易サービスを提供する多機能な自由空間となっている。ICBCは中国側とカザフスタン側から成っていて国境を挟んでそれぞれ の国が設計して建設することになっている。中国側とカザフスタン側のそれぞれの特区はフェンスによって囲まれているが,間に2本の特別通路を通じて自由に往来できるようになっている。センターの出入り口は両国内にそれぞれ設置し、これを国境ゲートとし,そこからセンターに入るのを出国と見なし,センターから出るのを帰国と見なす。

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ICBCは主にビジネス商談、商品展示、倉庫運送物流、ホテルなどの宿泊施設、金融サービス、国際会議、国際貿易商談フェアなどの機能を持つと言われている。国際センター以外に、中国はセンターの南側約1キロメートルを離れた場所で、産業加工基地として敷地面積は9.73平方キロ メートルの工業園区を建設し、主に輸出加工、保税物流、倉庫運送サービスなどの産業を置いている。当初の工業地区の規模は更に拡大されている模様で、全体の敷地面積は約 100平方キロメートルといわれている。一方、カザフスタンも中国の計画を参考にして,自国側で60 平方キロメートルの工業性経済特区の建設を計画しているとの旨である。

2.ホルゴス視察

筆者は2020年1月20日、カザフスタン南部の中心都市アルマティから車で片道約3時間半(アルマティからホルゴスまで約340キロ)かけて訪問し、現地の状況を視察してきた。視察した結果を以下に記す。

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カザフスタンのジャルケント(Zharkent)を越えて数十分したところに、ホルゴスの看板が見える。看板のポイントで右側の道路に沿って進むことになる(なお、左側を直進すると現地人の移動用の国境監視ポイントが現れる)。車でホルゴスに入場する場合は、車のゲートがあるところでスタッフが外に立っており、駐車場代2000テンゲの支払いを要求される。

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その後、国境税関検査所の前にある駐車場に駐車し、ホルゴス経済特区(ICBC)への入場するため、カザフスタンからの出国審査を経る。パスポートコントロールが終わったところで、キオスクの窓口のような場所で1人2000テンゲの入場券を購入し、施設から外へ出る形となる。

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施設から出た後は、中国とカザフスタンが合同で設けている地区までバスにて、2-3キロの距離を約10分で移動する。移動の途中2回ほど停車する際に、カザフスタン国境審査官がバスに入場し、乗客のパスポートと入国印を押した紙切れの双方を見せてコントロールがなされる。

バスは、カザフスタンと中国を分ける地点の手前の停留所に到着し乗客は全員が下りる。大きな柱が立っているところを越えると中国側に入るための荷物検査があるが、ここは単なる荷物検査のみで入国審査のようなものは行われない。中国側に入ると、10件ほど百貨店と思しき建物があるが、現在営業しているのは4-5件ほどと考えられる。中国側では、巨大な建物が、現在約10件が建設途上で建設ラッシュのような状況であった。

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カザフ側に近い、中国側の百貨店は、主にカザフスタンから買い物にくる人向けのお店が中心で、衣類、寝具、スポーツ用品、雑貨、電化製品などが主な売り物となっている。その一方、中国側のホルゴス国境検査場の近くの百貨店は、酒やタバコなどの嗜好品や日本や韓国の化粧品などが中心で客層は主に中国からの来訪者が中心となっていた。

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ICBCは、カザフスタン側から入場した者はカザフスタン側のみへ、中国側から入場した者は中国側へ戻ることが原則となっており、国境のように通り抜けはできない仕組みとなっていた(正式な国境はICBCを経ない場所にある)。なお、筆者は中国側へ通り抜けできると思いこみ、中国の国境税関検査から出国を試みたところ中国公安関係者により検査室で1時間半ほど荷物検査及び尋問を受けることになった。

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カザフスタン側から帰途に着く場合は、来た時と同様に無料のバスに乗り、最初の国境税関検査場に戻ることになる。ただし、行きの場合と大きな違いは、帰路のカザフ人たちは老若男女問わず、大量の荷物を抱えて、両手で持ちきれない荷物を所持している。税関検査場は戦場と化している。税関職員は入り口の門、施設内におけるゲート(全部で8つくらいあり、そのうち4つほどがその日は使用されていた)も入場制限のため開け閉めがあり、いつ開くのかもわからない状況の中、列をなして待つことになる。空いたゲートがあると、他の列の人々もなだれ込むかのように入り込む様相となる。そのため、列の前後にいる人々や彼らの大量の荷物の間に埋もれながら、体は鞭うちになるような状況も経験する。施設内での手続きを終えて、外に出るまでに約2時間を要した。

3.所感

カザフスタンと中国の間、少し先に大きな山々がそびえる広大な敷地に、近代的なビルや百貨店が現れるホルゴスは、物流のハブとしてだけでなく、経済活動の中心地として、機能していることは間違いない。ホルゴスICBCの開発度合いは、中国側とカザフスタン側では対照的な状況となっており、中国側では高層ビルや新しい百貨店が建設済または建設中のものも多く、現状では中国側の方が、経済活動が活発的である。カザフスタン側では計画こそあるようだが、2つの新しいショッピングモールがあったが、人影がほとんどなかった。敷地は準備されているが、投資が進んでいないような印象である。

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中国側の国境税関審査場は、整然とされて人々の通常は問題なくなされていた。大量の荷物を抱える人は少なく、おそらく大量の買い物を行う人々は、税関手続きを代行する業者を通じて手配しているものと考えられる。一方、上述の通り帰途のカザフ側検査場は大量の荷物を抱えた人々によるカオスであり、1人あたりの荷物制限を超えたものを持ち運びしている様相である。

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今後もICBCにおける経済活動は活性化していくものとみられるが、中国とカザフスタンそれぞれの側での開発に大きな差がみられること、中国とカザフスタンの間にユーラシア経済連合(EAEU)に加盟しているカザフスタンとの間に関税の障壁などがあることがある程度影響することが考えられる。2011年に開始された同計画が今後どのように進展していくかどうか、引き続き様子を見守る必要がある。

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