怒りの表現を変えたら荒んだ心に平和が訪れた話
指定こそされていなかったが,実情はまさに教育困難校だった場所に勤務していた頃,朝から大量の生徒が教室におらず,何かしらの問題行動に異常な頻度で見舞われ,規格外の理不尽と日々格闘していた私の心は荒んでいた。
あの時までは
始まりは授かった子供
妻が第一子を妊娠したことをきっかけに,乱暴な言葉遣いと煙草をやめる決意をした。
副流煙が母胎と胎児に悪影響なのは言うまでも無く,どこまでが真実なのかは確かめようも無いが,我々の言葉が胎児に届いているということをたくさんの方から告げられたからだ。
当時の私は,後に同窓会で再会した教え子から「先生は絶対に元ヤンキーだと思ってました…」と言われるほど,被る理不尽に対する怒りを爆発させた時の言葉が激しかった。
勿論,平素からそんな調子だったわけではなく,然るべきところ,叱るべきところで叱ることを徹底していたからこそ,卒業後にも繋がってくれているのだと思っている。
しかし,このままでは荒々しい言葉をふとした時に家庭内でも出してしまうかもしれないと一抹の不安があった当時の私は,人知れず自己改善の方法を模索していた。
とあるアニメとの出会い
そうは言っても,私の授業以外では好き放題騒いでいた事を多方面から耳にしていたクラスがいきなり激変することなど無く,卒業式にも現れない人間がいたなど,最後の日まで負の感情がゼロにならなかった状況では,当時の未熟な私は前向きな変化に自分を導くことがなかなか出来なかった。
そんな時,妻と一緒に見ていたアニメが,我々に衝撃をもたらす。
当時テレビ東京で放送されていた,「LINE TOWN」という作品だ。
ご覧の通り,今やインフラと言っても過言では無いLINEをモチーフにしたゆるゆる日常系作品なのだが,オープニングテーマ担当がGReeeeNだったり,その曲のダンス振り付け担当がJONTE’ MOANINGだったり,初代エンディングテーマ担当が中川翔子だったり,2代目エンディングテーマの編曲をJazzin' parkが行っていたり,主人公(ムーン)のCVが森川智之だったりと,細かいところが豪華だったのが非常に印象に残っている。
とある放送回で,主人公のムーンが「Mr.パンダマン」という架空のキャラクターに扮し,マジックを披露して他のキャラクターからもてなしを受けようと画策するというエピソードがあった。
マジックに悉く失敗し,挙句の果てに変装が崩れてキャラ設定も崩壊していくという,何とも緩い内容だったのだが,変装が崩れ始めた時に放った一言に,我々夫婦は活路を見出すことになる
『失礼しましたパンダ』
文字にするとそうでも無く感じるが,話の流れの中で放たれ,しかも『パンダ』の部分の発音がやたらと良かったこのセリフに夫婦揃って大爆笑してしまったのだ。(画像は変装が崩れたムーン扮する「Mr.パンダマン」)
このエピソードを観終えた後,妻がこう切り出した。
『ねえ,これからは何か悪い事が起きた時は「パンダ」って言わない?』
フレーズの置換がもたらした変化
妻のワードセンスは独特で,普段は物静かな印象だが,時折口から飛び出す言葉の破壊力が抜群である。
私には到底想像出来ない表現を数々生み出し,その都度我々家族に笑顔をもたらしてくれている,尊い存在だ。
そんな妻が,『パンダ』というフレーズを採用した経緯はこうだ。
パンダに変装したムーンが悉く失敗した
☞ パンダを失敗の象徴にしよう
☞ 何か失敗したときや悪い事が起きたとき,「クソッ!」とイラつくよりも,『パンダ!』とワンクッション挟めば怒りも収まるだろう
恐らく理解してくれという方が無理があるだろう。
しかし我が家ではこれが一夜にして定着したのだから,恐るべしというよりもはや楽しくなってくる。まあ,だから結婚したのだが。
それ以来,時折使ってしまっていた「クソッ!」や「あーもう!」,「F××K!」などのイライラフレーズが全て『パンダ』に置き換わった。
するとどうだろう,サブリミナル効果なのだろうか,日常生活で使っている内に,本当に初期衝動の怒りが収まっていったから不思議だ。
突っ込まれるのを恐れて,さすがに自宅外では使えていないが。
この事をきっかけに,不要なイラつきはすっかり鳴りを潜め,より怒りのスイッチのON/OFFをキッチリ切り替えられるようになったというお話である。
もし今現在,已むに已まれぬ負の感情をお持ちの方がいたら,1度『パンダ!』と叫んでみると,いや,パンダでなくとも良いが,全く無関係な柔らかいフレーズを叫んでみると,何かが変わるかもしれない。
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