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独特すぎる空模様 石川の歩き方2・天気編

石川県の話をしましょう。地震直後の今ではないかもしれませんが、ボランティアで能登に来る時のために、観光で訪れる時のために。その日に向けての予習です。

世界的に珍しい気象現象

冬の北陸では、世界的に見ても珍しい気象現象が起きます。それが冬季雷と呼ばれる雷です。

地元民からすると「ほかだと冬に雷が鳴らんの?」というくらいに日常的なもので、日常の1コマにすぎないため、特に意識することもありません。

夏の雷に比べて、とても強いのが特徴です。その轟音は空が割れるんじゃないかと思うほど。ところが、みんな意外と平気な顔をしています。慣れというのはスゴいものです。

あまりに日常に溶け込んでいるのですが、実は冬季雷というのは北陸とノルウェーの大西洋側くらいでしか見られない気象現象です。

非常に珍しいものの、たいして重宝されない雷が喜ばれることもあります。それが「鰤起こし」です。ブリを起こす目覚まし時計的な役割をイメージしてください。

ブリといえば冬の味覚を代表する魚です。新鮮な刺身はピンク色で、血合いも鮮やかな紅色。たっぷりと脂が乗った身は、醤油をはじいてしまうほどです。

旬のブリを水揚げするのは冬場。ぐるぐると海を回遊して北陸にやってくる季節です。

ブリ漁の始まりと時を同じくして、11~12月にかけて石川では雷が鳴りはじめることから、この雷鳴が「鰤起こし」と呼ばれるようになりました。

ちなみに、データで見ると、冬場の石川県は月に週2日ほど落雷に見舞われる月もあります。関東などでほぼ雷のない地域もあると考えると、いかに雷が多いのかが分かります。

年間を通じての落雷日数でも、日本一に輝いていたこともあります。全国平均の2倍以上という圧倒的な日数を誇っており、冬場以外でも雷は避けて通れません。石川にお越しの際は雷に慣れておく必要があるかもしれません。

晴れの概念を変えるくらいに曇天

なんとなくイメージがよいことで知られる金沢市ですが、引っ越してきて住もうとすると大変らしいです。雷が多いことから察しがつく通り、とかく空模様がぐずついています。

金沢で生まれ育ってきた僕も、日常すぎて気づきませんでした。冬はほとんど曇天です。大学進学で上京して、冬でも晴天が続くことにとても驚きました。

石川との天気の違いは大きなものでした。当時、未成年だった僕はこの違いに驚きを通り越して動揺しました。今よりも雑然としていた歌舞伎町に初めて足を踏み入れた時よりも衝撃的だったと付け加えておきます。

そんなに驚くほどのことなのか?と思われるかもしれませんが、曇り空に晴れ間がなくとも、石川では「今日は晴れてよかったね」と話題にするほどです。雲の間から、うっすら青空がのぞこうものなら「ああ、快晴」と歓喜するほどです。

もはや晴れとは何なのでしょう。空を一面を覆う雲が天気の概念すらも変えてしまいます。

天気の悪さは数字も物語っています。1年における降水日数、降水量がともに全国上位で、過去には日本一になったことも。しのぎを削っているのは富山、新潟、山形、秋田、青森というチーム日本海の面々です。

そんなわけで、冬場の石川は、ほぼ曇天です。毎日のように鈍色の空が広がっています。

灰色の空ばかり眺めるのに不慣れだと、精神的に堪えてしまう人もいます。雷同様に、ちょっと慣れが必要かもしれません。

ちなみに慣れていると、曇り空に落ち着きすら感じるのですが、反対に快晴が3日間も続くと不安を覚えるようになります。

天気の話にご注意を

ぐずついた天気が日常なので、天気の話をする時は注意が必要です。
「今日はいい天気ですね」などという一般的な感覚は忘れてください。

会話で天気の話をする時は、雨が降っているかを確認してください。よほど厚い雲でない限り、降水がなければ「今日は晴れましたね」と言いましょう。

太平洋側からお越しの方は、違和感を抱いても口に出さずに飲み込んでください。
さもないと、定番である天気の話ができなくなります。
「今日は晴れましたね」
「えっ?」
「えっ?」
(以下、沈黙)

気まずいこと、この上なしです。雑談を成立させて打ち解けるためにも、違和感がなくなるまで復唱してください。
「曇りは晴れ」「雨雪以外は晴れ」「晴れ間が見えたら快晴」
はい、よくできました。優秀なみなさんには、応用編のフレーズも先に教えます。
「小雨は曇り」「あられと雪は濡れなくてラッキー」
これらのフレーズを覚えておけば、雑談はだいたい乗り切れます。たぶん。

雪が重い

灰色の空がどんよりと重たいのと同じように、当地の雪も重いです。
日本海からの湿った風に運ばれてくるため、水分を多く含んでいて重くなります。

物理的に重いわけなので、除雪は大変です。夜間に雪が積もると、翌日の朝は普段より1時間ほど早起きに。駐車場や家の前での除雪が欠かせません。朝きれいにしても、夕方帰ってくる頃にまた積もっていても、天気をうらめしく思わず、受け入れてください。

賽の河原の石積みのように、終わりなき戦いですので、腰痛持ちには大きな試練となることでしょう。

また、雪に慣れている地域とはいえ、一気に積もると、生活道路には除雪車が入り込めないことも。金沢などは特に細かい路地が多いため、運転は慎重に。路地裏でゆっくり運転していたら、唐突にスタックすることも。

そんな時にも落ち着いて対応できるように、車には以下のような冬の装備を積んでおきたいところです。
スタッドレスタイヤ 必須です。ノーマルタイヤだと腹で滑るペンギンのように車が流れていきます。
スノーチェーン 悪路を通るなら積んでおくと安心感が違います。
ブースターケーブル 寒さでバッテリーがやられやすくなるので、ほかの車とつないで復活させるケーブルも大事です。
スノーブラシ、スコップ 紳士淑女のたしなみのようなものです。
スタックヘルパー スタックから脱出するためにタイヤと雪の間にかませます。新聞紙やタオル、フロアマットなどで代用できることも。

書いてみると、地域性にあふれた独特な天気です。観光、仕事、ボランティア。いずれの目的でも石川ならではの気候を肌で感じられるはずです。

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