映画「ライトハウス」感想・考察・分析_チーム④POP祭2022年度記事_

「ライトハウス」と白黒

 今回にあたりはじめてこの映画を観たのですが、始めに思ったことは白黒!?という感想でした。(笑)そこで今回は、この映画の白黒である意義と効果について考察していこうと思います。 
 個人的な白黒のイメージは、古い、見ずらい、目がチカチカするというようなあまり良い印象は持っていませんでした。
しかし、この映画はそれを覆すような映画でした。白黒ですが、はっきりと行われていることがわかるように撮られています。また、一瞬カラーに観えたことが驚きでした。それは、色彩設定なのか、それとも上手い人が撮るとそうなると言われることを聞いたこともあるため、そうなのかわかりませんが不思議な感覚でした。
それから効果としては、やはりホラー感を増す効果があったのだと思います。また、ずっとマイナスな感情が公差していくこの作品ですが、カラーだと小競り合いにみえてしまうのではないかと考えました。ホラーに転換されることで観客のドキドキを更に大きくしているのではないでしょうか。
 ここまで、この映画の白黒の意義と効果を話してきましたが、皆さんはどう考えますか?
色々考察してみるのも面白いかもしれません。


モノクロとアスペクト比1.19:1が生み出す効果
鎌田

この映画の視覚的な特徴は、モノクロであること、それからほとんど正方形に近いこのアスペクト比です。
最初のカラー映画は1906年に発明され、その後1970年代にはカラー映画が主体となりました。1980年代以降のモノクロ映画は、製作者側が意図的にその効果を狙ったものだと言われています。この映画も例外ではなく、時代設定の1890年代を意識しビンテージのレンズを用いて撮影されています。
そしてこの映画のアスペクト比「1.19:1(横:縦)」はほぼ正方形に近い画面比率となっています。ちなみに現在上映されている映画では、映画アカデミー協会が設定した1.37:1が基礎となっています。元のサイレント映画は1.33:1が主流でしたが、トーキー映画の出現によってサウンドトラックを確保するために画面が削られ、この比率が使われるようになりました。映画『ライトハウス』の公式徹底解析ページによると、エガース監督はこのアスペクト比を選択した理由について、「この映画の空間は、意図的に窮屈に感じるようにした。『ウィッチ』以上にクローズアップの映画だ。ワイドスクリーンというアイディアが生まれたのは1950年代のことだけど、観客をそれよりも前の時代に連れて行きたかったんだ」と語っています。
この二つの特徴は映画『ライトハウス』において大きな効果をもたらしていると言えます。モノクロは、すべてを映さないからこそ、観客の想像力に頼るような解釈の幅が生まれます。他にも過去にタイムスリップしたかのような時代感が演出されたり、光と影の使い方に深みが出たりなどなど。そして正方形に近いようなこのアスペクト比は、映画全体に息苦しく窮屈な雰囲気を演出しています。
今挙げた他にも様々な効果を発見できるはずです。映画『ライトハウス』、ぜひ視覚的な効果に注目して観てみてください。

ライトハウスへの試み。

P.N 二之宮 柊香

とにかくアニメ映画と近年の邦画ばかりを好んで見てきた私は、寝落ちないように、内容をできる限り理解できるように、とそればかりでした。特にライトハウスのような洋画モノクロものの映画は、親が横で見ていた戦争映画、することもないので見てみようと試みるものの、毎回寝落ちるという苦い思い出が蘇ってきた作品であった。
そして、決してつまらないとは言わないが、とにかく自分にはこういう類の洋画は合わない、と感じさせられた作品でもある。結果、一度目の視聴は前夜の夜更かしも影響し早々に寝落ち、二度目は最後まで視聴するものの、いつも見るものとは雰囲気の異なる作品であったため、その全容を理解できたとは到底思えない。

この映画をプロットだけで見ると、とてもシンプルなもので、若い灯台守のロバートとベテラン灯台守ウィレムの二人が孤島の灯台に交代で赴任してきて二週間を共に過ごしていき、どんどんぶっ壊れていく、というもの。そのシンプルなプロットの中で、こうもふたりを動かすことができるのか、と。趣味の範囲ではあるが、物書きを好む私は感嘆してしまった。


画像2

書いた人:おばけちゃん


怖がりだけど『ライトハウス』気になる人、
集まれ!

私は自他ともに認める怖がりです。ホラー映画・戦争映画といった、暗〜くて音が急に大きくなったり出てくる人の顔が怖かったりするのがすごく苦手です。そんな私が自分への挑戦も兼ねて鑑賞してみたので、怖がりの同志たちはぜひ参考にしてください。!

正直に言うと、やっぱりちょっと怖い!!です。
ちゃんと顔を両手で覆って、指の間から覗きながら見た場面が何回もありました。それでもなぜか見続けてしまったんです…。(どうして??なぜ??)
この映画にはそういう魔の雰囲気がありました。ただでさえ白黒映画で不気味だし、なんかいつもの映画とアスペクト比違うし、言ってることも意味わかんないし…。これって観る意味ある?って最初は思ってたんです。でも、あれ??見れば見るほどすごく気になる…。続きが気になる。この人達、どうなるの。って段々釘付けになっていた自分に気づきました。

最終的な感想を先に言ってしまうと、なんだコレ?!という言葉に行き着いてしまうのですが、1回は観てもいい映画だと思います。そこから何を得るか、感じるかは人それぞれだとして、この雰囲気を味わってみる価値は大アリだな!と個人的には思います。だって、登場人物たちが狂っていくのにつれて、見てる側も狂いそうになる映画なんて、そうそうないですよ…。本当に意味わからないし…。ぶっちゃけ鑑賞後、すぐに「ライトハウス 解説」とか検索しちゃいましたもんね。先に解説・考察を見て、全てを知った上で答え合わせのように鑑賞するのも面白いかもしれません…!私もそうしていたらポップコーン食べながらのびのび鑑賞できたかも…?いや、、、そんな余裕はなかったです。。
でも実は公式サイトに徹底解析ページもあったり、アフターフォローもばっちりの映画なので、この奇妙な雰囲気をぜひぜひ体験してみてくださいね。


結論!

怖がりでも観れる!!!観れました!!! 


じめ〜っとした梅雨のこの時期。
孤島の灯台で繰り広げられる狂気(?!)映画を皆さんも楽しんでください〜!



「ライトハウス」感想と考察
りんた

あなたは嫌いな人間と二人きりで、閉鎖された空間に閉じ込められたことはあるだろうか。こういうと妙に大げさというか、まず日常では体感できない出来事のように思えるが、冷静に考えれば頻繁ではないが日常に転がっている出来事なのではないだろうか。私自身は体験したことがあるが、想像以上に不快である。相手の一挙手一投足が気になるし、相手は話しかけてくるし、無視しようにも閉所であるため話さざるを得ない。そんな不快な状況を4週間以上にわたって味わったのが「ライトハウス」、二人の灯台守が一人、イーフレイム・ウィンズローである。

あらすじ
ウィンズローともう一人の灯台守トーマス・ウェイクは、灯台守としてニューイングランドの孤島に派遣された。初日から険悪な空気が流れる中、2人は4週間の地獄を耐え抜き、帰還の日を迎える。しかし、肝心の迎えの船は嵐によって来ず、食料が嵐によってダメにされた現状のまま孤島に二人きりで閉じ込められることとなってしまう。絶望的な状況下で、ウィンズローは次第に酒におぼれていく中、美しく恐ろしき人魚、得体の知れない触手を目撃。更にトーマスの言葉に嘘が紛れていることに気づき、恐怖と疑念に身を蝕まれていく。

感想と考察
一言感想を言うとするならば、「難解な作品であった」と誰に聞いてもそう答えると思われるほど、直接的な表現を避ける作品であった。しかし、これは決してマイナス評価につながるものではないと考える。この作品は難解と思えば思うほど、あなたは主人公の視点に立ち物語世界を堪能していると言えるのではないだろうか。最終的な(私の)解釈として「主人公はすでに狂気に心を侵されていた。」となったが、それ故に「分からない」ことが魅力となり得る。狂気に侵されたウィンズローの現実は、彼の妄想によってすでに歪まされていたことを知ると、彼の視点を共有していた我々の理解もほとんど全て信用に足るものではなくなってしまうことに気がつく。そして同時に彼が素面のまま凶行に走った理由も我々は知ることとなる。絶望的な状況であることに加え、自分が見ていた現実と日誌の差異、トーマスへの疑念、それらによって生まれる既知が未知へ変換される恐怖に彼は押し潰されてしまったのではないか。

まとめ
「わからない」ことすら魅力となり得るこの作品は、ある意味で誰でも作品の本質を体感できる作品と言える。一方で、難解であることに変わりはないため、直感的に楽しみたいと言う人にはあまりおすすめはできないだろう。考察を楽しみたい、没入体験をしたい、単に驚かされるのではなく、芯の部分からの恐怖を味わいたいという人には何の迷いもなく勧められる素晴らしい作品であると思う。もし興味を持ってくれたのならば、ぜひ部屋の電気を消して、白黒の世界にその身を投じてみてはいかがだろうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?