見出し画像

EPUB戦記

ユニコード戦記の筆者が今度はEPUBの国際標準化の中で日本語の仕様をどのように組み込んでいったかを書いた本。

日本の技術は最初に出たとしても必ず突き当たるのが国際化の壁。ガラパゴスと揶揄される状態だが、それは既得権益という自分たちだけ、かつ目先の利益しか考えず、広い視野で考えることができないことに起因する。せっかく国が税金を使って何かをやろうとしても、結局、各方面の顔立てるため、寄せ鍋のような仕様を作る。そんなものが国際標準になるわけもなく、せっかく国内で広がった技術も、海外の技術に推されて縮小することになる。その度にツールが多数化し、移行せざる終えなくなるのという不便を利用者が被ることになる。この状況は1990年代からずっと続いて何度も繰り返しているのに、改善されることがないのはなぜなんだろうか。

EPUBの日本語仕様の標準化には、「日本語を表示するため」というアプローチではなく、縦書き文化がある国に積極的に協力を仰ぎ、こうした国々のためにも標準化が必要だという進め方で見事に組み込んでいる。

紙の本から電子化するということには様々な漢字がコード化されていること、それを表現するために必要な技術などまずそれら下地が必要となるが、それに加え、今日本語を表示する条件にはどのような決まりがあるのかを文章化しそれを世界中の人に伝えなければ標準化などできない。こうした積み重ねとそれをいかに伝えるかが客観的に書かれている。

本には古来から巻物と冊子という形態がある。今の電子書籍は冊子形態がメインだが、ブラウザで上から下へのスクロールは巻物の形態である。という書き方はなるほど、と思った。

筆者が、出版社から日本ワープロソフトトップのソフト会社に移り、そこから独立してゆく中で培った、日本語および、印刷に関する知見もすごいが、会社を超え、学校、研究所などさまざまな人との繋がりを広げているところも自分には無いもので感心した。

技術的な読み物としてはユニコード戦記の方が面白かった。がこれは、著者の立場の違いからくるものだろう。ユニコードは筆者が中心に進めたが、EPUBはメインではないがその近くでどのように進めたかを見ていたという立場で書かれているためだと思う。
しかし、本の「自炊」をギロチンと呼んだり、「人は一生で3冊本を書ける。自分の経歴について、自分の仕事について、自分の好きなことについて。」など、心に刺さることがたくさん載っている。

電子書籍が普及する時代になった今、第4章書物の未来へは、ここに記事を書く人、電子媒体で文字を読む人、書店で、図書館で書物を手にする人に是非読んでみて欲しいと思う内容だった。

街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな