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プリン

最初に作ったプリンは、プリンの元を牛乳に溶かし、冷蔵庫で冷やすものだった。(そういえばあれにはゼリーの元もあった。)今にして思うと、どちらもゼラチンで固めるタイプだったのだとわかる。

それから少ししてさまざなお菓子の作り方が載った本の中に、プリンがあった。レシピははっきりとは覚えていないが、卵と牛乳と何か。ここで初めてゼラチンではなく、卵自体で固めるタイプに出会う。材料を混ぜ合わせ、うちにあった中では大きい鍋に、水を張り、底蓋をセット。そう、うちの蒸し器はこれだった。そこに小さな器をセットして蒸し上げてゆく。出来上がったプリンは、それまでのものと違って、舌触りが良くない。甘みも随分と少なかった。

しばらくして世間では柔らかいプリンが話題になった。それはそれはやわらかく、お皿に「プッチン」として出して食べるものではなく、買ってきた容器にスプーンを滑り込ませて食べるもので、どれほど柔らかいかを競い合っていた。あれは生クリームをたくさん含み、もう固めるということはしていないのだと思う。それがそのまま缶ジュースになったのも自然の流れか。

そんなブームも過ぎ去りコロナがやっと数を減らした頃に出てきたのが、硬いプリン。レトロ喫茶店ブームとともに、苦味が強目のカラメルとともに横から見ると台形でエッジの立ったピシッとした姿。プリンアラモードともなると中心に置かれその存在感たるや、まさに富士山の如く聳え立ち、頂にはホイップクリームの雪を冠していたりする。

随分と立ってから蒸し器でガンガン熱を加えなくとも、フライパンに水を貼り、卵汁をはった容器をそこに並べ数分。沸騰させるのではなく卵が固まる80度ぐらいにして、余熱で熱を入れてゆく。子供の頃に食べたプリンの舌触りの悪さは熱を入れすぎて空気が入ってしまったせいだと分かった。なので、器に貼る時も漉し器を使ってそーっと空気が混じらないように、器に入れた後も、小さな泡を爪楊枝でプチプチと割っておく。レシピも牛乳の割合を増やすとやわらかくなる。(そういえば、家庭科の教科書に出汁と卵の割合でかたまり具合が変わる茶碗蒸しの例が載っていた)

プリンひとつとっても色々な変遷があるな、とコンビニスイーツの棚を見て思った。

街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな