【「降りる宇佐美」についての一考察】2020 Jリーグ第7節 ヴィッセル神戸vsガンバ大阪
みなさんこんにちはこんばんはおはようございます!(Youtuberっぽい挨拶)ちくわです!しかし狂ったペースで試合が進みますね。ついこないだ再開したばっかりなのにもう7節かー。色々ありましたがやっぱサッカーのある日常っていいですね。自分はなかなかスタジアムに行くのも難しい状況なので、いろいろとお布施をしながら過ごしています。だいぶ前にTwitterにアップしたけど、ガンバのベビーロンパースめっちゃ可愛いです。多分Kidsユニも買っちゃうなこれは……
そんなこんなで第7節の相手はヴィッセル神戸。カップウィナーであり去年は1分1敗と一度も勝てていない強敵。ホームでの逆転劇に現地で涙した人間としてはここいらで一発、ほら、あれよ、最近また流行りの、そう、倍返しだ!ってやつをやってほしいわけよ。果たして結果は2-0でガンバの勝利!よくやった半沢ァ!違う!半沢直樹は面白いんだけど見てると結構な確率で息子が起きちゃうのが玉に瑕。あいつらうるさいのよ。怒鳴る人は職場の生産性を下げるらしいよ。どうでもいいですね。はい、進めていきます。
スタメン
ガンバはおなじみの3-1-4-2。前節とは倉田⇒小野、ヤット⇒矢島と中盤を入れ替え。強敵相手に先発復帰が期待されたアデミウソンと小野瀬は怪我のためベンチにも入っていないという状況です。これからも過密日程が続くので早くよくなってほしい。
神戸は前節セレッソ相手に3バックを採用しましたが今節ははっきりと4-3-3できました。渡部が外れてフェルマーレンがいきなりの先発。サンペール・菊池・西が抜け、小川・藤谷が右サイドに入ります。注目はアンカーに入った佐々木。自分が観た大分戦・セレッソ戦では途中出場からも目立っていましたがいきなりの抜擢です。
前半:鍔迫り合い、リスク管理
この試合は神戸のボール保持を中心に動いていたのでそこを中心に整理していきます。神戸はボール保持で2つのネタを用意していました。アンカーが列落ちしない「1+2+1枚のビルドアップ」と佐々木or蛍が列落ちする「3+1枚のビルドアップ」です。基本的には「ガンバを食いつかせつつその裏にボールを供給する」というスタンスのようでした。
序盤、神戸は初期位置に近い「1+2+1枚」で試合を進めようとしたと思います。対するガンバは、3センターが自分の担当エリアに入ってくる神戸の3センターをしっかり捕まえられていたので、「食いつかせて裏に出す」神戸の狙いは出しにくい状況だったと思います。
結果、「中盤をスキップしたギャンブルっぽいパスが出る」⇒「パスの受け手となるハーフスペースに入り込む神戸のウイングには最終ラインがアタック」⇒「そこでガンバが回収して裏返し、チャンスメイク」、というシチュエーションが何度かみられました。
ガンバが序盤にチャンスを多く得た要因は、神戸が「1+2+1枚」を選んだことにあったと思います。この形での前進を試みた場合、トランジションの局面で神戸のアンカー脇にスペースがあり、そこでガンバの攻撃陣が自由にボールを受けられるようになっていました。
神戸は時間が経つにつれ「1+2+1枚」から「3+1枚」に形を変えていきます。この形のビルドアップに切り替えることで、前述のガンバと同様ハーフスペースへの迎撃ができるので、試合の流れを見て、リスクを鑑みての戦術変更だったのかもしれません。
給水タイムを過ぎたころから若干ガンバの(特に2トップの)チェイシングが厳しくなり、3+1枚のビルドアップの際「3」の両端にいる神戸のプレーヤーにプレッシングがかからなくなってきます。
そうすると神戸は時間に余裕を持った状態で中盤にボールを供給できるようになるので、古橋+酒井高徳+時にイニエスタが絡む神戸の左ではかなり分が悪くなってきます。そこから何度かチャンスを作られますが大事には至らず前半終了。
ガンバとしては最序盤のペースを握っている時間帯で点を取れるのが理想的でしたが、リスクを取って仕掛けるシーンはあまり見られませんでした。アウェーでの難敵相手というシチュエーションを受けての慎重さもあったと思います。そうしたガンバのスタンスと、神戸の状況を見て手札を切っていくスタンスがかみ合って、前半はお互いの腹を探り合うような緊張感のあるゲームになっていたと思います。
「降りる宇佐美」についての一考察
さて、後半の話に進む前に。最近ノリで開設した私の質問箱に以下のような質問をいただきました。
それに対する私の回答は一旦置いといて、今節でも宇佐美が降りてきて攻撃の組み立てに参加するシーンが見られました。せっかくなので今回は「降りる宇佐美」についてもう少し考えてみたいと思います。
そもそも宇佐美が何のために降りてくるのか?を整理すると、大体以下の4つに大別できるんじゃないかなぁ、と思ってます。
①ビルドアップの出口になる
②藤春のサポートをする
③後ろの枚数を増やしてゲームを落ち着ける(仮称:ヤットロール)
④その他、気まぐれ
先ほどの質問箱に対する私の回答は、「一概に悪!と断ずるつもりはない、チームとして共有できてる動きなのか、降りるにしてもどこまで降りるのかによる」とちょっと総花的な回答になってしまってたので、上記の①~④を使ってもうちょっと解像度を上げて考えてみたいと思います。
「①ビルドアップの出口になる」これは問題ないと思います。前半の図にも書いた通りチームとしてボールを運びたい場所に降りていく。この目的で宇佐美(というより、実態は2トップの片割れ)が列を降りる動きに呼応して、落としを受けられる位置や裏に抜けてスルーパスを受けられる位置にインサイドハーフやもう片方の2トップがポジションを取ります。チームの狙いとしている動きだと思います。
「②藤春のサポートをする」これは良し悪しあると思います。左WBに入る藤春は、右の高尾、小野瀬、福田と比べるとどうしても足元の技術やプレービジョンに劣ります(それでも僕が藤春を観始めた時と比べると向上しまくってるとは思いますが)。よって「ボールを受けた時に自分のアクションで選択肢を作りにくい」⇒「周りが選択肢を作りにいく必要がある」⇒「そのサポートに宇佐美が出ていく」という流れですね。
別に関与するのが宇佐美である必要はないかもしれませんし、増やそうとしている選択肢が余計だったりする場合もあるかもしれません。なので△。
ただ最近は、②の流れで外で受けた宇佐美がブロックの外から鋭いクロスでチャンスメイクしていたりするので、「宇佐美が外で持ったらクロスに飛び込む動きを取る」など、チームとして共有した狙いに転化できるなら、これもありなのかな、と思います。
「③後ろの枚数を増やしてゲームを落ち着ける(仮称:ヤットロール)」ここからかなり怪しくなっていきます。最後方でのビルドアップの局面で降りてきてプレーに関与してくるケース。勝手に「ヤットロール」と名付けましたがヤットがボランチに入った時にDFラインとパス&リターンしながら保持を落ち着ける、よく見るアレです。
これは「その仕事する人はほかにいるよね?」なのでさっきより×寄りの△と考えています。例えば矢島とか、矢島と入れ替わったインサイドハーフとか、ヤットが出てるならヤットとか。結局、ここに人数をかけすぎることで前の人数が足りなくなって前進のしようがなくなる、ボールは落ち着くかもしれないけど何も起きない、みたいな状況に陥ってしまう。かけるべき人数はできるだけ少なく前進できるようになりたいですね。
「④その他、気まぐれ」ここについては論じる必要もないかもしれませんが、よく「試合の中でボールタッチを増やして感覚を増やしていく」みたいな話を聞くこともあるので分けてみました。チームの中で宇佐美をどれだけスペシャルな存在と位置付けるのか?によると思いますが、そうやってボールタッチを増やさないと後述する反則外人シュート(語弊)が打てない!というなら一考の余地はあります。事情が分からないのでノーアンサー。
説明の都合上、上記のように①~④で分けてみましたが、実際のところ「今は目的①!今は目的②!」みたいな形でMECE(漏れなく、ダブりなく)には区別はされておらず、①~④の目的がそれぞれ〇%ずつ……みたいなグラデーションなのが実態と思います。意識/無意識含め、選手の頭の中はわかりませんので、あくまで宇佐美の動きとチームの動きを見ての仮説にはなりますが。
ピッチ内外の両面で、宇佐美というプレーヤーがガンバの中で特別な存在と位置付けられているのは確からしい。なので、ある程度の自由を与えられており、その上で周りがアジャストしている、が現状な気がしています。
ただ宇佐美の言動を追いかけていると、人としては周りの空気を読んで場を調整したりするのを好むタイプなように思うので、合わせてもらうだけじゃなくて、合わせにもいこうとしているはず。最適なバランスをピッチの中で見つけていってほしいです。
後半:これだからやめられねぇんだわ
さて、宇佐美の考察でだいぶパワーを使ってしまったので後半はさくっとまとめていきたいと思います。
後半、ハーフタイムを経て再び走れるようになったガンバが圧力を強め、引き続き前半に見られた中盤での鍔迫り合いが繰り広げられます。53分ごろ、ガンバ陣に押し込んだ後の流れから神戸は古橋と小川のポジションを入れ替えていました。これについては後述。
先行したのはガンバ。最終ラインの高尾から神戸の守備ブロックを切り裂くようなスルーパスが差し込まれ、飛び込んだのは小野。移籍後初となるゴールでした。
まず千真が前述の「降りる宇佐美」の項ですこし説明した「ビルドアップの出口に降りていく」動きでアンカーの位置に入っていた山口と酒井高徳の間で迷わせるようなポジションを取り、ボールを収めます。
そこから逆サイドに展開し、フリーの藤春にボールが渡る。ここで神戸のラインを押し下げているのが千真とのローテーションで2トップの位置に入った小野と宇佐美でした。藤春は一旦バックパスでやり直すことを選択しますが、それを受けたヨングォンが右の高尾に強いパスを送ります。そこからのスルーパス、という流れ。
右で受けて左へ展開、さらに右に流して斜めのパスを左に送る。神戸のブロックを左右に振り回した結果スペースが生まれており、小野は完全にフリーでシュートが打てました(ミスキックにはなりましたが)。フェルマーレンを引っ張って小野へのコースを開けた宇佐美の動きも素晴らしかったと思います。
このシーン、神戸DFフェルマーレンと大崎の位置が左右で入れ替わっていました。流れの中で入れ替わった状況でしたが、それで誰が誰を見るのかの意識がズレた可能性はあります。神戸の選手たちは、流れの中で入れ替わった後にプレーが切れても、しばらくポジションを戻さない傾向があるように感じました。これにどのような意図があるのかは聞いてみたいところです。
ゴールを決めた小野はそのまま倉田と交代でお役御免。神戸は郷家・田中順也を立て続けに投入し、前線への圧力を強めていきます。神戸は古橋が定位置である左サイドに戻り、両サイドバックが幅を取ってウイングが内に入ってくる5トップのような形に変わります。
田中順也は中央でどっしり構えていたドウグラスと異なり、モビリティ高い動きを志向していました。ガンバは自陣で左右に振り回され厳しい状況に追い込まれていきます。
さらに、高尾が足を攣ったため、J1初出場の松田がスクランブル発進。左サイドに戻ってきた古橋・イニエスタとのマッチアップで何度も後手を踏まされ肝を冷やしましたが東口のスーパーセーブで何とかしのぎます。
この時間神戸は左サイドから何度もチャンスを作っていました。古橋を右で使ってから左に戻してハーフスペースを攻めさせる、というのは、フィンク監督の90分を見越したゲームデザインだったのかもしれません。
しかし追加点を挙げたのはガンバでした。ロングボールで陣地回復した後の流れで、攻め疲れてかやや寄せが甘くなっていた神戸のバイタルエリアに顔を出した宇佐美が右足一閃。エリア外からのまさにスーパーゴラッソで神戸を突き放します。しかしどうやったらあの細かいステップからあんな重たいシュートが打てんだろ。これだから宇佐美はやめられねぇんだわ。
追加点を取った後はパトリック・山本・黒川を投入し5-4-1に変形、試合を締めにかかります。山本・黒川に井手口が絡む敵陣での鹿島り(最近鹿島が鹿島ってるのあんまり見てないんだけど)で時間を潰してゲームセット。4連勝で連戦を締めくくりました。
まとめ:攻撃にも勇気を
神戸に長くボールを保持され、前節の広島戦に続き厳しい戦いとなりましたが今節も何とか勝利を挙げることができました。前節に続くクリーンシートですが、追加点が入るとこんなに気持ちが楽になるんですね。久しく忘れていた、試合を決める追加点の気持ちよさ……。
ガンバはもう少しボールを持ちたかったはず。特に後半、神戸に押し込まれ始めた時間は、恐らく宮本監督の「顔出せ!」という激が良く響いていました。周りがサポートに入って、全体で押し上げていくという意識があればなお良かったんだろうなぁ。結果としてチャレンジングな縦パスから裏返されてピンチを招く、ということが何度かあったので。
神戸はさすが大人のサッカー、って感じでした。全員が意図を共有していて、何をするにもレスポンスが早い印象。ただ連戦の中でメンバーを入れ替えながら戦っていく影響か、チャンスメイクが古橋とイニエスタという違いを出せるプレイヤーに収斂してしまう傾向があったような気がしました。西やサンペールが入っていれば結果は違ったかもしれません。
ガンバはこれで4連勝。去年1回も勝てなかった大分-広島-神戸という並びを見た時は「まあ勝ち点4取れれば御の字……」と内心思っていましたがまさか3連勝で乗り切ってしまうとは。申し訳ありませんでした。
どの試合も全然楽じゃなかったですけど、試合を経るにつれチームのベースは上がってきているような気がします。自分として違いを感じているのは特に守備の部分です。3センターと2トップの役割分担、その網をかいくぐられたところに対する最終ラインの迎撃。
「守備とは相手ボールへの攻撃」みたいなことをどこかで聞きましたが、そんな前向きのパワーを感じるようになってきました。この前向きのパワー、言うなれば「勇気」を、ボールを保持する局面でも発揮できるかどうか。そのへんが、さらなる伸びしろになってくるかと思います。
そんな中迎えるのが再開後6連勝とかいうふざけた成績の川崎。ホームでの相性は決して悪くないですがお前ら何人か貸せよと言いたくなるほど分厚い選手層で盤石の体制を築いています。
恐らく今日と似た、守備の時間が長くなるようなゲームになると思いますが、「勇気」をもって試合を運ぶことができるかが鍵になると思います。めちゃくちゃ怖いチーム相手ですが、1位と2位の直接対決なんていつぶりだ?楽しむしかない!
雑談BOX
・松田J1初出場おめでとう!初出場のワンプレー目でイニエスタと出会って5秒でイエローカード、って、一生使えるネタじゃねーか。ほろ苦いデビューになったかもしれないけど、まあ日本でこれ以上のプレッシャーを感じることもないから次は余裕でしょう。期待してます!
・古橋と東口がお互いのプレーを称え合うシーン(79分くらいかな?)、尊すぎた。
ちくわ(@ckwisb)
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