2024 J1 第32節 ガンバ大阪 × 東京ヴェルディ レビュー

スタメン

山田が多いですね

 シーズン前の各紙予想を大きく上回って6位に付けている東京ヴェルディ。特に3バックにしてから調子がいいらしい。前回対戦ではボランチに入っていた綱島が3バックの右を務めている。連勝の立役者のひとりである山見は契約上の理由で出場できないため、左シャドーに染野が、ベンチに山田剛綺が入っている以外は前節と同じメンバー。

 一方のガンバ。前節は累積警告で不在だったダワンを除いてスタメンは継続。ただベンチには入れ替わりが多く、江川・中野・倉田が外れ、美藤・ネタラヴィ、そして負傷離脱から8試合ぶりの復帰となった半田が入った。ベンチを含めたボランチを4人にしてもスカッドに入っている美藤。かなり評価を上げていることが伺える。


レビュー

 前半はヴェルディのコンパクトな守備が目立った。ヴェルディの守備は5-4の2ラインを形成するというよりは、3バック+ウイングバック(WB)で形成する5バックの前に、前線とボランチで形成する「五角形」を置いて中央を封鎖するようなイメージ。また、5-4-1と紐付きやすいローラインではなく、シャドーが積極的に前に出てプレスのスイッチを入れていた。結果、飛び出したシャドーの裏、ボランチとWBの間にスペースができるが、ここには積極的に両脇の3バックが飛び出してくる。後ろのラインを下げ過ぎないことでバイタルエリアを圧縮するデザインになっていた。

 効果的だったかはさておき、前半のガンバはこの狭いエリアに果敢に挑んでいた。前半よく見られたのはボランチが味方にパスを付けたあとに列を上げてバイタルに入っていく動き。トップ下の山田がインサイドハーフの位置まで降りてボールを引き出すのは定番のプレーだが、今節に関しては鈴木徳真とダワンが2人ともバイタルに入っていき、ボランチの位置を山田康太が埋める、みたいなピーキーなシーンもあった(山田康太はボランチもできるので、そうなっても普通にプレーしていたと思うが)。ただ、狭いエリアを無理やりこじ開けに行く必要があるので、ペナルティエリアまでボールが繋がらない。前半唯一のシュートはバイタルに入り込んだダワンのエリア外からのシュートだけだった。

 一方のヴェルディはWBと3バックでピッチの横幅いっぱいに広がってボールを保持する。ガンバがむやみに3バックにプレスをかけにいかないことに加え、ボランチの一角が列を降りてサポートに入ることもあったので、最終ラインでのボール保持には苦労していなかった。特に両サイドのセンターバック(CB)はあまりプレッシャーを受けていなかったので、そこからのミドルパスで一気にスイッチを入れてくるシーンが多かった。しかし、幅を広く使えるメリットの裏返しで、スイッチを入れるパスには距離が求められる。精度が伴わないシーンが多く、ミスが頻発していた。

 ガンバは福岡の持ち上がり(というよりはもはやドリブル突破)、宇佐美・山田のボールを受けに落ちる動きとつるべの動きで裏を狙うウイングなど色々な前進パターンを試していたがいずれも不発。



 後半のガンバは恐らく黒川の位置を調整。前半は高い位置を取ることが多かったが、シャドーのプレスを受けがちだったCBの横、少し低めの位置を取っていることが多かった。合わせてウェルトンを外に張らせてWBをピン留めすることで黒川がプレッシャーを受けにくくなり、そこからバイタルエリアに「斜め」にパスを通せるようになるシーンが増えていた。「縦」のパスであれば、恐らく出し手と受け手をまっすぐ捉えられるためプレッシャーをかけやすいはずだが、「斜め」だと狙いを絞りにくい。前半と比べると後半の方がよりゴールに迫れていたのではないだろうか。

 75分のガンバの先制ゴールも、出し手こそ福岡だが「斜め」のパスが起点。ここでは福岡が「斜め」のパスで一気に2ラインを突破して坂本に付ける。ダイレクトで宇佐美に落として前を向かせると坂本はそのまま谷口を引き連れて前に出る。坂本が谷口を動かして空けたスペースにフリーでダワンが入ってくる。5バック崩しの理想的な形で取れた得点だった。

 時間は巻き戻るが、55分と早めの時間に岸本に替えて半田、山田康太に替えて坂本一彩を投入。半田は58分には鈴木徳真のインターセプトに呼応してボールを引き取り、これまた「斜め」のパスで宇佐美→ウェルトンと繋ぎ、いきなりチャンスメイク。ただ、途中投入の見木の決定的な突破を許すなど怪しいシーンもあり、ベストコンディションにはもう一歩か。

 東京はこの見木のシーンが後半最大の決定機。前半と比較してミドルパスの数が減り、WBを経由してガンバのブロックを押し下げ、よりじっくりとポケットを攻略する意識を高めていたように感じる。

 69分には山下の決定機逸。カウンターから数的有利のシーンだったが相手のCBとキーパーにうまく誘導されてしまった。直後に山下はアラーノと交代。山下、ここ最近は一試合に一度は決定機を見せてくれている気がする。リーグ戦のゴールが待ち遠しい。

 先制後は久しぶりのゾーンディフェンスタイム。坂本がサイドのサポートに出ることで、WBを前に出して数的有利を作ろうとするヴェルディに数を合わせ、クローズの構えを見せる。ダワンが痛んだ際には青空会議で意思統一をしていたようなので、恐らく「守り切る」という意思はチーム全体で共有されていただろう。戻りの遅さが気になる選手は誰一人いなかった。

 ただ今節は守り切れなかった。敵陣で時間を潰し切りたいところだったが、CK⇒CK⇒FKとセットプレーを立て続けに浴び、最後はクリアボールを叩いた森田のミドルシュートがディフレクションを起こしゴールに吸い込まれてしまう。ガンバはここまでアディショナルタイムの失点が3。そのうち1つはアウェイマリノス戦のリードされた状況で前がかりになったところを突かれた失点、もう一つはホーム神戸戦で武藤に与えたPK。つまりアディショナルタイムに追いつかれる経験は今シーズン初めて、ということになる。久しく忘れていたこの感覚……。「守り切る」選択が正しかったのか。タラレバはなんとでも言えるが、ここまでチームが積み上げてきたゲームクローズの実績を思えば合理的ではあったと感じる。が、いずれにせよこれで8試合勝ちなし。サマーブレイク後は一度も勝ちがないまま水曜日のダービーを迎えることとなった。



まとめ

 3バックとの相性が悪いらしい今期のガンバ。それもそのはず、ヴェルディを上から叩く選択肢がないため、相手の密集地帯を繋いで崩し切る形に固執しがちでシュートも少ない。9番(ストライカー)不在のスカッドにおいて仕方ない部分もありそうで、居ないなら居ないなりのチャレンジも見せてはくれているのだが、結果がついてきていない以上足りないものがあるのだろう。次節は大阪ダービーだがセレッソも直近は3バックを採用中。相性の悪さを跳ね除けてほしい。




ちくわ(@ckwisb)

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