2019 J1第29節 ガンバ大阪vs川崎フロンターレ レビュー

 みなさんご無沙汰しておりますちくわです(2記事連続2回目)。

 どうでもいい近況の話ですが最近引っ越しまして。広くなったリビングにでかいソファとコーヒーテーブルを導入しましたところ、試合を観ながらPCをカタカタやるのに非常におあつらえ向きな空間が目の前に立ち現れてくるじゃありませんか。そんな状況に絆されて久々にレビューを書いてみようと思い立ち、こうして筆を執っている次第です。

 私がレビュー更新をお休みしている間に、ガンバは魔の引き分け街道を驀進したりなんかちょっと目に悪いユニフォームの色をした近所のチームにコテンパンにやられたりその直後に日本版ミラノダービーみたいな色のカードで今期絶不調のミラン(によく似た色のチーム)をボコボコに屠って留飲を下げた後にカップ戦で同じチームに負けて地団駄を踏み倒したりと色々、ええ本当に色々ありましたね……。

 泣いても笑っても残り6試合でシーズンは終わります。タイトルの望みも失われ、ここまで曲がりくねった道を歩んできたガンバの今シーズンに一体何が残るのか、そういうことに思いを馳せながら試合を振り返っていきたいと思います(気が早い)(でもこれが今シーズン最後のレビューになるかもわからないから気が抜けない)。

スタメン

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 前節2トップを務めた宇佐美とアデミウソンがどちらも負傷の影響でメンバー外。本職のパトリックと千真の2トップも予想されましたが宮本監督は小野瀬をセカンドトップに配した3-5-2(3-1-4-2)の形を採用してきました。小野瀬の位置には福田が、福田の位置には藤春が入っています。それ以外は変更なし。
 一方の川崎。ルヴァンカップで鹿島を0-0に抑え込んだメンバーをベースにしています。ただ、こちらもけが人には苦しんでいるようです。CBには本職……本職?どこ?な山村が。そして右SBには左利きの登里が入ったりと色々用兵に苦労している様子がうかがえますが、大島が先発復帰できたのは好材料ではないでしょうか。

機能する2トップ

 スクランブルで採用された小野瀬・千真の2トップですが、この試合においてはボール保持でもボール非保持でもよく効いていたように思います。

 まずはボール保持。ガンバは矢島が最終ライン近くまで降りてヨングォンと高尾が幅を取るいつもの形でビルドアップを企てますが、前線の位置がいつもの2トップと少し違いました。

 宇佐美・アデミウソンが前線でコンビを組む場合は主に宇佐美がインサイドの近くまで落ちてきて組み立てに参加しようとしますが、一緒にマーカーも引き連れてくるので中盤のスペースがなく、ビルドアップに手数がかかってしまう側面があります。一方で今日の2トップはどちらもやたらめったら落ちてくるわけではないので、比較的使えるスペースは見つけやすかったのではないかと思います。

 また川崎のプレッシングもそれほど整理されているようには見えませんでした。ボール非保持の際は中村憲剛が前に出て詰めてきますが、全体が連動しているようではなかったので、ガンバはキーパーも加えて数的優位を作りつつボールを動かせば最終ラインでは余裕を持ってボールを持てたのではないかと思います。

 結果として最終ラインからのロングパス・ミドルパスでの前進が何度か決まっていました。東口から井手口へのミドルパスや、最終ラインに落ちた倉田のパスで相手SBの裏に抜けて前進した小野瀬のシーンなど、どちらかといえばサイドに流してからウイングバックやインサイド、フォワードも含めたローテーションで前進という形が多いガンバですが、シンプルに前につけてチャンスを作るという形が何度か見られたのはよかったと思います。

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 先制シーンも最終ラインに落ちた矢島からのロングボールが起点になっていました。登里の処理ミスを藤春がうまく突いた形になりましたが、矢島がフリーでルックアップ⇒ロングボールから決定機、という形はこれまでも何度か見られる形だったので、「何かが起きやすい」ボールを蹴れる状況だったのが奏功したとも言えそうです。

 ボール非保持の際も2トップがボランチを抑えながらセンターバックを見ることで相手の攻めをサイド方向に限定することができていたと思います。小野瀬が少し低い位置を取ってボランチをけん制しつつサイドにボールを流させる⇒そのままサイドのパス回しを観察しつつ味方のプレスに合わせてCBへの戻しのボールにアプローチ、といった連続性のあるアクションを取ることでミスキックを誘発してボール回収ができるシーンもありました。

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機能しない撤退守備

 ただ、2トップを突破された後はかなり緩い守備になってしまっていました。ボールホルダーへのアタックのタイミングがチームで揃っておらず、ワンツーや逆をついたトラップなど、プレスのベクトルを外す動きで簡単に外されてサイド深くまで前進を許してしまいます。

 自陣深くに押し込まれ、セカンドボールを拾われ、また押し込まれ、となると先述したガンバの脆い面ばかりが出てしまいます。特に二度三度追い回せる井手口がいない左サイドではレアンドロ・ダミアンの決定的なヘディングなどヒヤッとするシーンを何度か作られていました。

 正直いつゴールを割られてもおかしくなかったですが、前半が終わりに近づくにつれ川崎の前線にも疲れが見えてきたのかパス回しも大人しくなっていきました。逆にガンバが自陣からのロングボールで一気に陣地回復して攻め込むチャンスを作るなどモメンタムが傾きつつありましたが前半は1-0のままで終了。シュート数は川崎4に対してガンバ8と、持たれるシーンは多いながらも総じてみれば優勢に試合を進められていました。

川崎の変更に対応できないガンバ

 後半から川崎は森田を田中碧にチェンジ。同時に大島の位置を明示的に上げてきます。大島がパスの受け手として前線に並ぶことで最終ラインからスパスパ縦パスが入ってしまい、後半開始直後は川崎がガンバを押し込みます。何度かガンバがボールを弾き返すシーンもありましたが途中出場の田中碧を中心にセカンドボールはあらかた川崎が回収してしまいます。そんな川崎の勢いに飲み込まれるようにガンバは早い時間に失点。

 ここでガンバがマズったな~と思うのはクリアボールの扱い。この時間ガンバのクリアはとても中途半端でした。恐らくボールを繋ぐことで落ち着きたいという意図があったのだと思いますが、個人的にはもっと滞空時間の長いボールを意図的に蹴ってよかったと思います。

 というのも、前半だと押し込まれてる時に小野瀬がプレスバックに戻っていたんですけど、後半はあまり落ちてこなかったんですね。これが監督の意図なのか2トップの意図なのかわかりませんが、前半はロングボールからの陣地回復がかなり機能していたのでそこに手ごたえがあったのかもしれません。「もっと蹴ってこればいいのに」という2トップと「繋いで落ち着きたい」という後ろの間での意識のズレが後半の一方的な展開に繋がっていたのではないでしょうか。

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 失点後ガンバはコンディションが悪くなった藤春に代えてスサエタを投入。小野瀬を定位置である右WBに戻しスサエタを小野瀬が入っていたセカンドトップで起用します。

 スサエタは交代直後からCBに追い込みをかけ、前半と同様にサイドへの誘導を試みますが失点はその追い込みから。片サイドへの誘導がかかりきらず川崎にサイドチェンジからの前進を許してしまい、ガンバ左サイドにできた広いスペースで2対2の状況が生まれます。家長へのアプローチにヨングォンが出ますがワントラップでかわされてしまい、福田も戻り切れず、三浦はダミアンの視野外からの突破にも対応できずと後手を踏み続け、初手で相手に作らせてしまった時間とスペースの貯金を減らせないままゴールまで運ばれてしまったような失点でした。

 ただ、これでガクっとこなかったのがようやくホームらしい戦績になりつつあるパナスタの力でしょうか。失点後のキックオフからのワンプレーでガンバが同点に追いつきます。福田-小野瀬の両WBで川崎のブロックを広げてDF間にクロスを入れるという形。起点となった福田の力強いサイドチェンジが印象的でした。1度目はクリアされましたが2度目は完全にフリーになった倉田がヘディングを叩き込んでの得点。

 素晴らしいゴールでしたが、倉田は遅れて入ってきた登里とまともに頭を衝突させてしまい、そのまま両者とも負傷交代。今シーズンフィールドプレーヤーの中で2番目に出場時間が長く、またチームトップタイのスコアラーでもある倉田をここで失うのは非常に痛い。できるだけ早く復帰してくれることを祈ります。代わって入ってきたのは高江。

 一方の川崎も、DFの替えがいないなかでの登里の負傷ということで、ゲームプランを大きく狂わせる負傷だったと思います。脇坂が投入され、中盤でボール回収に存在感を見せていた田中碧が右SBに入ります。

負傷交代で見えたささやかな積み上げ

 そこからしばらくは後半最初と同じような形で大島の代わりに脇坂が高い位置を取り川崎がガンバを押し込みますが、カウンターからの家長の決定機以降はややガス切れの感。

 80分以降はガンバのポゼッションの時間が長くなり、最終ラインにGKを絡めたビルドアップでうまくボールを前進させることができるようになっていました。前線に交代カードを割けなかった川崎のファーストプレスがほぼ機能しなくなっていた、というエクスキューズはありますが、今日の東口は最後まで集中してうまく前にボールを供給できていたと思います。また小野瀬が右WBに戻り、高江が途中出場したことで、高尾-小野瀬-高江がローテーションしながらサイドを攻略するいつものチャンスメイクも何度か見られました。

 負傷交代でお互いに事前に用意したゲームプランがなくなってしまった状況だからこそ、普段からの積み上げが出やすい状況だったと思います。そこで下手にオープンにならず規律を保ちつつ試合を進めて普段のチャンスメイクのパターンを出せたというのは、スクラップ&ビルドを繰り返してきた今シーズンのガンバにおいてもささやかな積み上げが感じられて良かったと思います。

 後半最後には山村、長谷川の立て続けの負傷でモメンタムはガンバに傾き、何度かゴールに迫るシーンもありましたが最後までゴールは割れずに2-2のまま試合終了。
 勝ちきれはしなかったものの、残留争いを戦うガンバにとっては貴重な勝ち点1となりました。

まとめ:期待とあきらめの間

 上位相手に引き分けは御の字といえば御の字なのですが、またしても前半のリードを守り切れなかったガンバ。リードして受けに回った瞬間からボール非保持の貧弱さが露わになってしまい追いつかれるという親の顔より見た光景を今節も見る羽目になってしまいました。

 これだけ同じ状況が繰り返されると、さすがに監督、なんとかしてくださいよ~という気持ちにもなります。今までの試合を観ていても、宮本監督はプランAは準備できてると思うんですが、ゲームが動いて状況が派生していくととたんに対応のまずさが浮き彫りになっている印象です。

 サッカーは複雑系のスポーツなので全ての状況に対応するのは難しい。なので対応力を上げるためにチームとしての基準を整理するのは監督含めコーチングスタッフの仕事だと思います。今年のガンバは夏にがらっと選手が入れ替わって色々とままならない状況であることは理解していますが、それでももう3か月ですからねー。

 例えば今日、小野瀬が実戦で表現した2トップの守備での仕事を次の試合(出るかわかりませんが)宇佐美やアデミウソンに落とし込むことができるか?とか、そのうえで一列目のラインを超えられたあとに組織的なディフェンスができるようになるか?とかが監督の腕の見せどころだと思うのですが、ここまでの試合を観る限り「期待とあきらめの間」というのが偽らざる気持ちです。

 報道によると来期についても「契約が残っている」というやや消極的な理由で続投が決まっているらしい宮本監督。続けさせるのであれば、何がよくて何が悪かったのか、そのうえで上を目指すために何を新たにクラブとして準備する必要があるのかの見極めが大事だと思います。

 もたもたしている間にも周りはどんどん先へ進もうとしています。未だままならない状況ではありますが、できるだけ早く残留を決めて先のことを考えたい。

 未来のことを考える時間はどれだけあっても足りないですし。

その他、気になったあれこれ

・倉田の負傷に対する谷口の対応について一部で盛り上がっていたようですが、語りえぬことには沈黙を選ぶスタンスです。
・久しぶりに長い時間スサエタを見た。攻撃でのボールを引き出し方を見るとさすがだなぁ……と思う反面、プレッシング時の立ち回りを見るとやはりサイドの方が向いてるように思える。小野瀬とうまいこと共存できるようにしてほしいが……
・小野瀬のサイン会行きたいな……
・そういえば僕、まだ宇佐美が出た試合のレビュー書いてないな……
・嫌いではない、むしろ好き

ちくわ(@ckwisb

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