マッチレビュー ルヴァンカップ第2節 大分トリニータvsガンバ大阪

 ルヴァンカップ第2節大分戦。もしかすると「片野坂監督はこの形を完成形とみてるかも?」と感じた試合でした。結果は2対2。勝ち切れなかったのは残念でしたが、見ていてなかなか興味深いゲームでした。

スタメン

 スタメン発表の時点で3-4-2-1予想が難しかったですが(素直に受け止めればWBかCBのどちらかが足らない)蓋をあけてみれば、4-2-3-1ベースのスタメン。キーマンはトップ下に入った山本。相手ボールの際は坂本と一列目を形成していたが、ボールを奪った後には主に左に流れてインサイドハーフの位置に入り、奥野と齊藤が縦関係を取って4-3-3っぽいオーガナイズに。押し込んでいる際は、SBを押し上げて奥野と齊藤が並ぶ2-3-5っぽい形にも。

 既視感あるな~と思ったら僕が好んでよく見てる今年のレスター・シティ(プレミアリーグ)でした。山本≒ジェームズ・マディソン。

 所謂10番ロールのマディソン、8番ロールのティーレマンス、6番ロールのエンディディ。創造性豊かなマディソンと広いシュートレンジを持つティーレマンスというスペシャリティをチームとして輝かせるためのレシピ。

 ※10番?8番?6番?みたいな人は、以下の記事を参照ください。

 この日は山本が10番ロール、8番ロールは奥野、6番ロールは齊藤、という感じだったでしょうか。奥野と齊藤はちょくちょく入れ替わっていましたね。非保持では4-4-2のブロックが組めて、保持では5レーンを埋められる、といった形で、非常にバランスのいいオーガナイズだと思います。

 この可変により、所謂ハーフスペースと呼ばれるゾーンから切り崩してチャンスを作っている感じはなかなか去年までのガンバにはない形で興味深かったですね。

  対する大分も陣形は4-3-3なのですが、攻守であまり可変しない感じ。高い位置から追い込むには適しているとみられ、蹴らされて回収されるシーンが多かったですが、逆にそこをうまく回避してさえしまえばインサイドハーフの裏などを使いながら前進はできていたかなと思います。ただガンバ、シュートはそれほど打てず。最終的にどう点を取るのかという点でパサーとレシーバーが合っていないシーンが散見したり、シュートがへろへろだったりで、ゴールを脅かすシーンはそこまで作れていませんでした。

 逆に大分は、ゴリっとくる増山とか、嫌らしいタイミングでインナーラップしてくる香川とか、J1クラスの選手たちが流石のクオリティを見せてきてガンバとしては苦しいシーンも多かった。ハイプレスが決まってガンバの決定機、という形もいくつかあった(で、1点取った)のですが、それでも勇気をもってしっかり繋いできたのは流石下平さんのチームだし、片野坂さんに鍛えられたメンバーだなと感じました。

 スコアとしては1-2で折り返し。失点はCKのマークがズレて長沢にどフリーでぶちこまれる、ハンドからのPKで長沢にぶちこまれると、恩返し弾×2。それ一昨年もう見た。

 やっているサッカーとしては結構いい印象なんですが成果が伴わず。ただこれ、僕が観てるレスターでもひじょーによくある展開でして、やっているサッカーは綺麗に見えるんですが、全然守れません。原因はディフェンスにあると思ってて、今年のレスター、怪我人多すぎでCBのメンバーが全然定まらない。ソユンジュが孤軍奮闘してますが、魑魅魍魎うごめくプレミアリーグのFW陣に対してそもそも本職でもない場合すらあるCBのセットではなかなか抑えきることができない。

 何が言いたいかというと、長沢のポストプレーを御しきれないようではこのサッカーは成立しないのでは、ということです。笑

後半開始時

 後半は坂本に代わってパトリック、未月に替わって福田が投入。石毛が10番の位置に入って、山本奥野が8番6番といった感じ。大分はメンバー変更こそなかったが少し守り方を変えてきていて、4-3-3のまま守りにきていた感じの前半とは違い、IHをはっきり上げて2枚で前進阻害の4-4-2、かつ自陣ではSHが最終ラインまで下がることも許容する5-3-2、5-4-1のような守り方も採用するようになっていた。簡単に1stプレスを外せていた印象があったので、そのカバーと、自陣で守る際も5レーンを埋めてガンバに自由な攻撃をさせず、アドバンテージを守り切ろうという意図もあったかもしれない。うわー、なんかこう書いてると、「ポジショナル」って単語がヒュンヒュン頭の上をかすめてくる()。後半は奥野がよくCBの列まで落ちていたが、これは大分の守り方の変化を受けてのものとみられる。ただこうなると大分は増山が低い位置を取らざるを得ないので、ガンバとしてはカウンターをあまり警戒しなくてもいいことになり、思い切って前に人をかけられるようにもなった。そのため、後半はガンバがモメンタムを握る展開になっていく。

 あと単純に、パトリックのアドバンテージが大きかった。余裕で収まるし、同点ゴールもパトリック。スローインの流れで逆サイドに脱出した山本のきれいなサイドチェンジ、それを受けた山見、オーバーラップした髙尾からの意表をつく落としのパス、山見のクロスからパトリックのヘッド。

 ボケっと見てたら見過ごしちゃいそうだけどこの山見のクロスめちゃくちゃ凄い。利き足の右を見せながら細かいステップで相手の重心がズレるタイミングとパトが裏抜けするタイミングを合わせ、恐らく直前で判断を変えて左足でダイレクトクロス。ここしかないタイミングと場所。右足だとブロックされるし、左足でも一瞬遅れるとオフサイド。凄い。浦和戦の石毛ヒールといい、こういう「創造性!」って感じのゴールは、何回見てもいいですね。

 そこからはほとんど大分にシュートを打たせなかったのですが、選手交代を経て少しクールダウンしてしまったかも。ちょっと中盤で停滞するシーンもあり、何度かシュートチャンスを作るものの2-2で終了。いやー、勝ちたかった。

 結果こそ引き分けでしたが、ポジティブな試合だったと思います。このオーガナイズなら3-4-2-1だと居場所なさげなシウバが輝けそうだったり(今日は起用なかったけど)、小兵が多めなガンバの中盤には3センターが合ってる気がするし、守備強度の不安も、昌子や三浦、ギョンウォンが合流すればかなり解決しそうだし。なんでこれをやらなかったの~、というと、未月が起用できない状態で中盤3枚で回すフォーメーションは組みづらかったのかな?とか、所謂カタノサッカーは、選手への能力開示だったのかな?とか、色々想像しちゃいます。

 さて次は川崎戦。今日採用したオーガナイズが使われるのか、それとも浦和戦のように守ってプレスからワンチャンを狙うのか、どちらもありえそうなシナリオだけに俄然楽しみになってきましたね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?