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「勝てるチームへ」2020 Jリーグ第8節 ガンバ大阪vs川崎フロンターレ

 お疲れ様です!

 徒歩圏内にユニクロの店舗があるんです。最近めちゃくちゃ暑くなってきたんで夏用のカッターシャツを買おう!と思って行ったんですけど、店を出たらシャツに加えてなぜかTシャツを2枚買っていたのに気が付きました。ザ・ブランズ・マスターピース、って、メーカーの傑作商品をデザインにあしらったTシャツ。こんなん買ってまうやろ。なんでユニクロに行くとあんなに余計なものを買っちゃうんでしょうね。確かそういう本を読んだ気がしますが忘れました。どうでもいいですが僕はポストイットのやつとゴミ箱のやつを買いました。

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 はい、今週の近況報告ノルマ終了(上記の与太話は本編と一切関係ありません)、本題に入りますよ。上位対決、川崎フロンターレ、意気込んで臨んだけど試合は0-1の敗北。近況報告でごまかしてみたけどやっぱり負けは負けだった。でも得るものはある負けだった、と思いたい、まあそんな感じで振り返っていきましょう。

スタメン

00 スタメン

 上位対決、お互い現状のベストメンバーをぶつけてきた、といっていいでしょう。ガンバは怪我から復帰した小野瀬が先発、福田がベンチに回ります。

 川崎は前節先発の守田と下田が控えに回り大島と田中碧が先発に回りました。えっ、守田?下田?この人たちベストメンバーじゃないの……えっ、斎藤学、ベンチ外……?ちょっと何言ってるかわからない感じの層の厚さを見せつけてきやがりますね。

前半:思ってたんとちゃう

 冒頭引用するのはとあるフロサポさんのツイート。僕は見た瞬間にクスっときていいね&リツイートしたんです。面白いですよね鬼滅の刃。最近の川崎戦といえば、まあ基本的には相手がずっとボールを持っててボカスカシュートを打たれるけどなんか知らんけど守れてなんか知らんけど勝ってる、みたいな試合が多かったと思うんですよ。

 さて、今日はどんだけシュートの雨が降るかな……(前髪サラァ と構えて前半のキックオフを迎えた訳ですが、そこで見たのは意外にも「スリリングで拮抗したゲーム」でした。

 ゲームが拮抗していた要因を川崎のボール保持・ガンバのボール保持それぞれのシチュエーションで紐解いてみます。

 まずは川崎の保持から。この試合のスタメンは福田⇒小野瀬の入れ替えのみでしたが、メンバー以外でもう一つ変更がありました。矢島と井手口のポジションです。

 神戸戦、大分戦のレビューでも説明しました通り、ガンバのアンカーの役割の一つに、「相手のアンカーを監視する」という役割があります。普段はアンカーに入っている矢島がそのタスクを担っていたのですが、今日のアンカーは井手口。相手アンカーの田中碧を抑えにかかります。

 この変更には2つ意図があったと思います。一つはやはり川崎の中央攻撃への警戒。練度の高いパスワークは川崎の代名詞ですので、その起点になりうるアンカーについては守備範囲の広い井手口をちらつかせて塞ぐという意図。もう一つの意図は後述します。

 前節の相手とは異なり、川崎は4-3-3から大きくフォーメーションを変えずに前進を図っているように見えました。4枚のDFが幅を広く使ってパスコースを作りにいくというイメージでしょうか。

 それをガンバの初期フォーメーションである3-1-4-2と嚙み合わせると、基本的にはSBが浮く形になりますので、ここを起点としたいのが川崎だったと思います。が、今節は小野瀬が一列上がって4-4-2のブロックを形成し登里へのプレスを行うことでその起点をつぶしにかかっていました。

 小野瀬が上がることで下図の通りガチっと噛み合う形になったガンバと川崎。そのため川崎はクリーンに前進するというよりは、どっかでデュエルできる局面を作って勝てれば前進、のような形が多かった印象です。このやり方だとガンバは時間を稼げるので、仮に前を向かれてもブロックは組めている状況で、ピンチらしいピンチはありませんでした。

01 川崎保持

 翻ってガンバのボール保持。川崎は試合開始直後こそ前線から追いかけるそぶりを見せていましたが、ある程度時間が過ぎると「前からいく」というよりは「ブロックを組む」志向が強くなっていきます。5分過ぎのヨングォンがいなして縦につけるシーンなど、ガンバのプレス耐性を評価したのか、そもそもあまり前からいくつもりがなかったのか。

 川崎はあまりポジションチェンジを行っていなかった、と先ほどボール保持の項で説明しましたが、それは守備の部分でも同じ。両WGがそのまま降りて4-5-1でブロックを作って守る、というのが川崎のやり方に見えました。

 しかしこのやり方だと、1トップに入っている小林の脇でガンバの足元自慢の2CBが起点を作ることができます。この起点をどう潰すのか?というのが川崎に突き付けられた課題。

 この起点を潰すための川崎のアプローチとしては、①WGが詰める ②IHが詰める ③詰めない、入ってくるのを待つ の三択があったと思います。ここで先ほど「後述する」として残しておいた「矢島と井手口のポジション変更」のもう一つの意図が表れてきます。

 矢島の特徴といえばやはり「間受け」。相手ブロックの間にあるスペースを感知して素早く飛び込み、相手のプレスがかかる前に前を向くスキル。このスキルが遺憾なく発揮されたのがこの前進局面でした。

 相手が矢島(を含め、ガンバの間受け)を警戒して①WGが詰めるなら、そのサイドで幅を取ったWBに通す、幅を使われることを警戒して②IHが詰める、あるいは③誰も詰めないなら間で受ける、という形で、時間・スペースに余裕があるクリーンな形で前進することに成功していました。

02 ガンバ保持

03 ガンバ保持パターン2

 結果としてフリーで前を向いた小野や小野瀬からのアーリークロスからシュートに至ったシーンなど、デザインされたチャンス、という観点ではガンバのほうが多かった前半だったと思います。モメンタムをつかんでいながら点が取れなかったことは悔やまれます。

後半:「エクストラプレイヤー」をどう操る?

 川崎はハーフタイムに脇坂に替えて三笘を投入。左WGを務めていた旗手を右WGに回し、右WGを務めていた家長がIHに入るという変更を打ってきました。前段で述べた通りボールをクリーンに進められていなかった中盤に家長を置くことで改善を図る意図があったと推察します。

 そして後半開始早々に先行したのは川崎。失点シーンでは流れの中で家長が左、大島が右のIHにいましたが、大島の斜めのランに対する井手口と小野の意図のズレ、バックラインのカバーに入った井手口と三浦の意図のズレなど、どこをどう埋めるかが整理されていない中でバイタルエリアで大島がぽっかり浮いている状況でした。ここしかない、というコースに蹴り込んだ大島を褒めるべきですが、ガンバとしては少し糸が切れてしまったような失点になったのは前半に続き悔やまれるところです。

 そこからは再びガンバが勢いを取り戻します。前半と同様、4-5-1のブロックを敷いて守る川崎に対して、ブロックの間を起点にボールを受けて前を向き、ゴールに迫っていたガンバ。ブロックされましたが、矢島の縦パスを受けた小野が前を向いたシーンなど敵陣に押し込める時間が続いていました。

 しかし、60分の小野⇒倉田への交代、65分の千真・矢島⇒ヤット・福田への交代から、徐々にガンバは敵陣に侵入できなくなっていきます。この時点でのガンバは、ヤット・宇佐美の2トップに小野瀬・井手口・倉田の3センター、という形。前線と最終ラインをつなぐ役割を果たしてきた矢島がいなくなった影響か、相手の間で前を向いてクリーンに前進するシーンがめっきりと減りました。

 そして給水タイム後、川崎がIHを入れ替え中盤でのプレッシャーがさらに強まったことで、裏へのロングボールや長い距離のサイドチェンジなど、一発のパスで一気に前進しようとするリスクの高いプレーが増えていきました。前進できればまだいいのですが成功率がそれほど高いわけではなく、かつ、奪われてしまえばこちらのスペースも広いので川崎に一気に運ばれてしまい、またカロリーをかけて前進しなければならないという状況。ボールは握れていましたが主導権は握れていないまま時間が過ぎていきます。

 パトリックの投入はそうした状況に対する手当だったと思いますが、うまく機能したシーンが少なく、選手交代以降、ガンバはほぼノーチャンスで試合を終えることになってしまいました。


 後半、川崎とガンバが好対照だったのは「違い」をもたらす選手=エクストラプレイヤーの扱い方です。川崎におけるエクストラプレイヤーは家長。家長といえば、JリーグMVPにも選ばれた突出した技術を持つ選手。足元に入ればまずボールキープされてしまうため、いい形でボールを受けられてしまうと守る側としては撤退を選ばざるを得ません。後半は、家長にボールが入ってそこで時間を稼がれ、押し上げられるというシーンが何度もありました。

 その家長は、前半は右WG、後半開始からはIH、給水タイム後の選手交代では再び右WGと、何度かポジションを入れ替えていました。川崎の鬼木監督はある程度の自由を許容しつつも、ポジションを入れ替えながら、どこにボールを落ち着けるべきなのかについて、家長を使ってチームに基準点を与えていたように思います。

 一方のガンバでエクストラプレイヤーを挙げるなら、やはり宇佐美でしょう。前回の記事でも取り上げました。前半は前線のフリーロールとして、ボールの受け手として要所でボールを収め、前進に貢献していました。

 ただ、後半投入されたヤットも、自由に動いてボールを引き出すこれまたエクストラプレイヤー。宇佐美とヤットという2人のエクストラプレイヤーが同時にピッチに立っていた時間帯、ガンバはチームとしてどうボールを進めていくのかがわからなくなっているように見えました。結果的に「宇佐美がビルドアップのサポートに出て、前線に誰もいなくなる」みたいな、ちぐはぐな状況が生まれていました。

 前節の記事を引用して整理するなら、①ビルドアップの出口になるなら効果的な動き、と呼べるはずの宇佐美の降りる動きが、③後ろの枚数を増やしてゲームを落ち着ける ④その他、気まぐれ といった、チームとしての意図が共有されていなさそうなプレーに広がっていった状況でしょうか。

 チームとしての規律を保ちつつ、「違い」をもたらしてくれる選手をどう組み込むのかについてはまだまだ整理の余地がありそうだ、と感じた後半でした。

まとめ:「ちゃんとしたチーム」から「勝てるチーム」へ

 後半の印象がかなり悪かったので試合直後は萎えてましたが、改めて90分を見直すと、自分たちのアクションで首位相手にしっかりと主導権を握れていた時間もあり、去年のダメな時に比べるとチームとして何がしたいのかをしっかり表現できている「ちゃんとしたチーム」になっていたのは良かったと思います。

 ここから「ちゃんとしたチーム」から「勝てるチーム」になるためにはどうすればいいのかを考えるフェーズに入ってきたんだなと。

 川崎は、後半直後の交代でまごついているガンバの隙を逃さず刺し、オーガナイズを保ち、ウノゼロでゲームを畳む「勝てるチーム」としての振る舞いを見せてくれました。ただ、川崎にも90分通して隙がなかったとは思いません。その隙をしっかり刺せるチームにできるかどうか。

 例えば、前半40分過ぎ、主導権をこちらが握る中で無理目な前進を図った川崎を裏返し、数的有利のカウンターに持ち込めたシーンが二度ありました。しかしそこで宇佐美が、或いはチームが選んだのは「リスクの小さいミドルシュート」「スローダウンしてゲームを落ち着ける」という選択でした。もちろん、チャレンジングなプレーに取り組むことで川崎に再び裏返されてピンチを招く可能性はあります。ただ振り返れば、もしかしてあの時間が「刺すべき時間帯」だったんじゃないのか?とも思うわけです。

 この敗戦を通して、チームは刺すべき時間帯に刺すことの重要さを、監督は90分を通してどうチームをオーガナイズすべきなのかを学んでくれているはず。時計の針を戻す必要はありません。次のゲームで、得た課題とその回答を示してもらいましょう。それは新たなプレイヤーなのか、チームとしての習熟なのか。それを測るのにおあつらえ向きなカップ戦がやってきます!




雑談BOX

・交代直後に倉田と笑顔で挨拶する登里と谷口。スポーツマンシップって尊いわ……おっさん最近涙腺弱くてさ……

・ついにベンチ入りを果たした昌子!待ってましたー!でも高尾も好調だしな~。うーん、どっちも見たい。12人でサッカーしませんか?


ちくわ(@ckwisb

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