2021 J1第7節 サンフレッチェ広島vsガンバ大阪 レビュー

 ちくわ(@ckwisb)です。前回の神戸戦レビューからまさかこんなことになるとは流石に予想できませんでした。リーグ戦は6試合が吹っ飛びガンバはなんと35日ぶりの公式戦。待ちに待った試合前の高揚が、やはり推しチームの試合が観れる週末は尊いということを思い出させてくれます。

 再開後初戦の対戦相手はサンフレッチェ広島。シーズン6試合を戦って未だ無敗。今シーズンからは4バックという新しいオーガナイズに挑戦していますが大崩れのない安定した戦いを見せていることが数字からも伺えます。


Why 4-4-2?

 早速試合を振り返っていきます。

 この試合のガンバ、まず特筆すべきは4-4-2のフォーメーションを採用したことでしょう。"フォーメーションなんて電話番号でしかない~"云々は逆に手垢が付いたフレーズになりつつありますが、電話番号にあえて意味づけをするなら今日のガンバは「狭く守る」ことを志向していたのだと思います。

 ゼロックスや開幕戦でガンバが採用していた4-3-3は「広く守る」という指向だったと思います(できたとは言っていない(小声))。イメージを図示するなら下のような感じでしょうか。

広く守ると狭く守るの違い

 まず中央を固めて相手にサイドを経由させる、ローリスクローリターンなやり方が前者、相手を中央に呼び込んで奪い返すハイリスクハイリターンなやり方が後者、といった感じです。

 なぜガンバが今までのチャレンジをやめて「狭く守る」方針に舵を取ったかというと、ひとえにそのリスクを取るだけのチームコンディションが整っていなかったから、と言えると思います。相手は数試合をこなして代表ウィークで疲れも取れて万全、こちらは90分の公式戦を1か月以上こなしていない、となると、ここでの「チャレンジ」はチャレンジというよりもはや無謀とも言えると思います。実際65分を過ぎたころからガンバの運動量は明らかに落ちていましたので、仮に4-3-3でハイリスクハイリターンな勝負を挑んでいればどうなったか。勝ち負けにこだわりたい宮本監督の志向がよく出ている部分かな、と思いました。


「今日のタスク」と「今期のコンセプト」

 守り方については「狭く守る」、言い換えれば「去年のスタンス」に近いものを見せていたガンバでしたが、攻め方については今年からチャレンジしていたであろう形が出ていました。特に左サイド、倉田が幅を取って藤春がインサイドに入ってくる形は何度も見られました。

 このインサイドに入る動きの効果は、先日DAZNで内田篤人がやってる番組でもやってましたね。張ったサイドに一発で通せるとか中央に選手が多くなるのでカウンタープレスが機能しやすいとかそういうやつです(もう見れないのか~アーカイブ残してくれェDAZNさん)

 今節に関して、この形がうまく作用していたとは言い切れないと思いますが、ガンバで最も「愚直」という言葉が似合う彼がこういうタスクをこなし続けているのは、チームが目指す形を測る指標になると思います。

 一方でこうした今期のコンセプトと今日のタスクのすり合わせに苦労していたのが山本だったと思います。具体的には「中央のサポートに入るタイミングが遅い」シーンが何度も見られました。3センターの場合と2センターの場合だと、どうしても2センターの方が可動域が広くならざるを得ないのは分かるのですが、藤春のタスクと照らし合わせると、ボール保持の時はもっと「アンカー然」とした振る舞いをしてほしいはず。

 普段の山本であれば、多少ポジションがズレてもその圧倒的なボールスキルで帳尻を合わせられていたと思うのですが、今節はフィーリングがまだ嚙み合わないのからしくないパスミスやボールロストが目立っていました。井手口と合わせて、ビルドアップ時のポジショニングにはまだまだ向上の余地があると思います。

 はっきりそう思ったのも、82分にその山本との交代で入ったチュ・セジョンのプレーを観たからです。セジョンは、山本と比べると明らかに「アンカー然」としたポジションをとってくれるシーンが多く、多くの選手にとってサポートの選択肢になっていました。

 セジョンにはそこからシームレスに逆サイドに展開できるキック力もありました。左サイドのパス交換で相手ブロックを引き寄せる→サポートに入ったセジョンに戻す→一発で逆サイドに流して高尾がフリー→折り返してシュート……まではいけませんでしたが、短い出場時間の中で立て続けにチャンスを作っていました。

 このプレーを見て一番首筋が冷えているのは山本でしょう。セジョンはコロナ感染から復帰したばかりでまだ90分戦えるコンディションではないと思いますが、コンディションが戻れば山本も安泰ではないはず。切磋琢磨してお互いに伸びて行ってほしいですね。


「質」≒「時間操作」?

 セジョンのプレーでもう一つ観るべきところは「パスを出すタイミング」の話です。先ほどTLにこんなツイートが流れてきました。

 「位置」についての話は先ほどしましたが、ここで述べられているいいチャンスを作るための「質」≒「時間をどう操作するか」について。前回の神戸戦は、この「質」の部分でどこに強みを見出すのかが今一つ見えない試合でもありました。

 チュ・セジョンの特筆すべきもう一つのパスは裏へ抜けた福田へのパス。ボールが入った時にしっかり「タメ」を作って、福田がフリーで受けられる抜群のタイミングでパスを供給してくれていました。この「タメ」≒「時間操作」が「質」の具体例だと思います。

 セジョンが入ったいい流れの中で点が取れれば最高でしたが、彼のプレーを起点にFWがエリアに飛び込む動きが少ないところを見るとまだまだそこも発展途上なのかなと思います。

 もう一つ、「質」≒「時間操作」という観点でいいプレーを見せてくれたのはチアゴ・アウベス。少し低めの位置で受けてから、ドリブルで前に運んでくれることで周りの選手に時間を作ってくれるシーンが何度か見られましたね。ここも、彼のドリブルを起点に周囲の人間がどう噛み合わせるのかを詰めれば、もっとチャンスに繋がってくると思います。


「質」の観点で広島についてもちょっと

 さて、最後に少し広島にも触れておきたいと思います。この試合で広島は、4-3-3という新しいオーガナイズを用意していました。冒頭で触れた「広く守る」というやり方と少しタイプは異なりますが(インサイドハーフが前に出てきて4-4-2っぽく変化する局面が多かった)、いずれにせよ高い位置で奪ってチャンスに繋げたいという意図のあるオーガナイズだったと思います。

 先述した山本がビルドアップで苦しんだのも、広島のインサイドハーフがかなり積極的にプレスに来たことも影響していると思います。

 一方で、攻撃の局面ではどこで「質」を作るのかがまだ曖昧に感じました。この試合では、サイドに張ったジュニオール・サントスのアイソレーション(1vs1)を使う局面が多かったように思います。実際に彼とのデュエルで高尾はかなり後手を踏んでいました。

 ですが、彼はスピードで抜き切る、というよりは、逆を取ってイーブンな状況を作り、フィジカルで抜き切る といったパターンが多かったように思います。そこで時間を食ってしまうので、ガンバのサポートが間に合ってしまう局面が多かった。

 中央に居たドウグラス・ヴィエイラは三浦・昌子という代表CBコンビに対して強みをみせられるシーンがほとんどなかったので、ジュニオール・サントスのところで時間を作っても次に繋がらないシーンが多かったかなぁ、、と思います。その意味で、「質」の活かし方には、まだ検討の余地があるかもしれません。

 ただ、後半ずっと広島のターン!だったように、高い位置からプレスをかけて蹴らされて回収……はかなりキツかったので、IHの運動量をベースにその方向で突き詰めていくのも面白いかもしれませんね。


 以上、息子が保育園デビューしたちくわでした。


@ckwisb

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