ちくわのガンバACL日記:第2節vs全北現代

 はい、第2節。グループ一番の強敵、Kリーグ王者、全北現代(チョンブクヒョンデ)との対戦ですね。結果は2-2のドロー。時間もないし忙しいのでサクサク進めていきますよ。

第1節(vsタンピネス)の振り返り

・2-0の勝利で暫定グループ首位
・タンピネスが自陣で繋ぎ、ガンバがショートカウンターを狙う展開
・決定機の数は圧倒的にガンバが上回るも決めきれないシーン多数
・ボール保持の形、守勢に回った際のブロック練度は課題

スタメン

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・ガンバは前節の4-4-2から3バックに変更
・高尾out→ヨングォンin 倉田out→奥野in 中2日ながら2名の変更のみ

・全北は5名の入れ替え。エースストライカーっぽいグスタボ、バロウなどの助っ人外人がベンチに回ったので、ターンオーバー?

試合メモ

 試合はいきなり全北の得点でスタート。ゴールキックで競り勝たれて繋がれ、最後は10番のイルチェンコ(昨年のKリーグベストイレブン)がゴール。強烈なシュートで東口動けず。リアルタイムでは監督が抜かれている間に失点していたので何が起こったのかさっぱりわかりませんでした。

 見返すと
 ・昌子が競り負けた
 ・セカンドボールを拾いに飛び出したイスンギ(14番)に誰も付いていなかった(井手口が付いていくべき?)
 ・ハンギョウォン(7番)へのプレッシャーが弱かった

 と、いくつかのミスや緩みが重なった失点だったように見えます。全北に目を向けるとゴールキックの威力、前線で起点になれる強さ、ダイレクトで正確にボールを置ける上手さなどJではなかなか味わえない「パワー」の片鱗を見せられた瞬間でした。これぞACL。

 出鼻をくじかれたガンバの守備について書いていきましょう。3-4-2-1と前節とフォーメーションこそ違いましたが、敵陣から積極的にプレスをかけにいく戦い方はそれほど変わっていないように見えました。前節のタンピネスはガンバの自陣からのプレスをいなして繋ごうとしていましたが、全北は無理をして繋ぐよりはクリアに逃げるシーンが多かったと思います。

 チェンライとの対戦では保持に回る時間が長かった全北。保持の局面では4-4-2のブロックからサイドバックの片方に高い位置を取らせ、3-2-5のような可変を行いボール循環を図っていました(EUROとかでもよく見るトレンド)。ガンバは敵陣深くからプレスをかけることで「全北が可変する時間」を奪い、保持の形を作らせない狙いがあったと思います。とはいえ、先制シーンのようにロングキックで一気に局面を打開するだけのパワーも持ち合わせている全北にはそうした展開を受け入れる懐もあったはず。

 ガンバもCKの流れなどからチャンスを作りますが全北に追加点が入ります。決めたのは邦本。アンダー日本代表の常連でありながら規律違反でJリーグを追われ、Kリーグで再起を果たしたあの邦本です。

 強烈なシュートのディフレクションが吸い込まれるといった、ガンバにとって少し不運なゴールではありましたが、その前にインターセプトした宇佐美のトラップが流れてしまったところで少しチーム全体のベクトルが揃わないところを突かれたのが痛かった。

 「ふわっと入ってしまった」とはありがちなビッグワードですが、こうした強敵相手だからこそ、一瞬の油断というか、"「今は何をすべき局面なのか」についての共通認識のロスト"が即失点に繋がる、勉強になる失点だったなぁと思います。

 苦しい展開を強いられたガンバですが果たしてサッカーの中身は決して劣勢とは言えないものでした。シュートチャンスの数では全北を上回っていたのもここまでの時間帯。ここでガンバが光明を見出していたのは「2トップの脇」のスペースでした。

 ボール非保持の時間はコンパクトな4-4-2のブロックを組んで守ろうとしていた全北。一方で、4-4をコンパクトに保とうという意識は強いものの、ブロックの外にあるボールをどう捕まえていくかという観点では整備されていない部分も見て取れました。

 全北の2トップに対してガンバは3バックで保持しており特に三浦・ヨングォンの両CBがビルドアップの起点となるシーンが多くなっていました。ここに対して、FWが横にスライドしてプレッシャーをかけるのか、サイドハーフが縦にスライドしてプレッシャーをかけるのかについて、意図やタイミングが共有されていない場面が多かった印象です。

 ガンバはパスの出し入れで全北のブロックを左右に動かしつつ、2トップの脇から自在に展開を図っていました。

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こちらはそのうちの一場面を切り取った略図ですが、

・先制点のシーンはフリーで受けたヨングォンに対してサイドハーフが遅れてプレッシャーにいったところでその裏のスペースに藤春が飛び出し、ダイレクトのクロスをパトリックまで届けたもの

・同点弾のシーンはこちらもブロックの外側で受けた宇佐美に対してサイドハーフが行くのかFWが行くのか中途半端になったところで逆サイドの矢島までボールが通りその冷静な折り返しをパトリックが沈めたもの

 と、いずれも「2トップの脇」を起点として生まれたチャンスだったことが分かります。全北がここを修正できずにいるうちにガンバは立て続けにチャンスを作ります。2点といわず3点4点と取れるチャンスはありましたが時間が過ぎるにつれペースダウンし2-2で前半終了。


 後半全北は選手交代という形でこの部分のケアを図ります。CBのホンジョンホに替えて若手のパク・ジンソンを投入。元鳥栖のキムミンヒョクがCBに回り彼が左SBに入ります(失点シーンも確かに彼はCBっぽい絞りで矢島にスペースを与えてしまっていた)。

 加えてボランチのチェヨンジュンに替えてグスタボ。イスンギがボランチに回ってグスタボがトップに入ります。ポジションを入れ替えて色々な使い方をするあたり、全北の台所事情も決して余裕があるわけではなさそう。

 全体的に攻撃寄りのアレンジで守備をカバーする交代には見えませんが、前線を決して守備範囲が広くない外国人2トップにしてしまうことで、"「2トップ脇」の処理を行うのはサイドハーフである"とはっきり決めてきた感じのある全北。縦にスライドしてCBをふさぐ、上がったWBについていって受け手を消す、など、基本的にはSHが人数調整を行うことでガンバのサイド攻撃をふさぎにかかっていました。

 これで前半と比べるとプレッシャーを受ける機会が減ったガンバの3バック。バックラインでの保持は安定した一方で、これまで出しどころになっていた部分を塞がれたことに対する次の一手を探りながら進んでいく慎重な立ち上がりになりました。激しく動いていた後半とは一転して、前半は静かなテンポで試合が進んでいきます。

 こうしたテンポになると全北の強みも出てきます。オープンな展開だとアジリティやスピードなどどちらかというとJリーグに分がありそうな能力が問われるシーンが多くなりますが、クローズドな展開だとマッチアップの強度などKリーグに分がありそうな能力が問われる局面が増えたように思います。特に苦しんでいたように見えたのは奥野。こういう試合で戦えるようになると一気に強い選手になれるはずなので頑張ってほしい。

 全北は対角のシンプルなロングボールに強力助っ人外国人を競らせて起点にしたり、SBのゴリブルからファールをもらってセットプレーをもらったりと徐々に自分たちのチャンスの数を増やしていきます。

 しかしここは前半の反省もあってかガンバの3バックはきっちりとシャットアウト。中盤ではやや後手に回りがちなマッチアップでしたが、最終ラインでは明確な攻略ポイントを作らせない五分以上の立ち回りを見せてピンチを未然に防いでくれました。

 試合が進むにつれ、「点を取られるよりは同点のままで終わったほうがよい」というリーグテーブルを考慮した両者の思惑が徐々に重なったのか、双方無理にバランスを崩して攻めるシーンは少なくなっていった印象です。

 前線へのロングボールという、バランスを崩さないままでチャンスを作れる武器があった全北とそうではないガンバという対比で、ガンバの方が無理目な縦パスで相手にボールを渡してしまう機会が多くなっていましたが、そのロストも大きなチャンスには繋がらず結局そのまま2-2で試合終了。

 全北とガンバ/チェンライとタンピネス という、2強2弱っぽい構図になったACL Group H。最終的には将来を見据えて勝ち点1を分け合う、という決着となりました。一時2点差をつけられたことを考えれば勝ち点1は御の字。ただチャンスの数では相手を上回っていた部分もあるのでそこは残念。まぁお互いにとって悪くない結果だったかなと思います。

まとめ

 タンピネス戦に続き悪くない結果でした。そこで課題に挙げていたボール保持へのチャレンジ、ブロック守備での対応など、全て改善できていたわけではないですが一定のチャレンジは見られたという点で内容もそれなりにポジティブだったかなと思います。

 一方で後半のような硬直をどう打開するかは引き続きこのチームの課題と言えそうです。この試合では最終的に引き分けのインセンティブが高くなったので問われませんでしたが、Jリーグのことを考えると同じようなシーンで「勝ち点3を取らねばならない」局面の方が増えてくるはず。

 試合をじっくり見れば個々の選手の効果的なアクションは浮かび上がってくるのですが、それを個人の作用ではなくチームの作用にしていくことでより効能が上がっていくはず。次のチェンライ・ユナイテッド戦は恐らくその硬直をどう打開するかが問われる試合になると思いますので、引き続き注目していきたいです!

 結局4000字近く書いちゃった。

 試合中ツイートのまとめはこちら。
 記事には書けなかった色々な印象とかも入ってます。


ちくわ(@ckwisb

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