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「積み重ねを確信に」2023 J1 第7節 ガンバ大阪 × 川崎フロンターレ レビュー

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 期替わりの忙しさにかまけて湘南戦のレビューをすっ飛ばしてしまいました。ミスからの大敗を経て、リバウンドメンタリティを発揮したルヴァンカップFC東京戦で完勝したガンバ。この勢いを繋げたいガンバがホームに迎えるのはここ5年もの長い間勝てていない川崎フロンターレ。川崎も前節の札幌戦こそ勝利で終えましたが、リーグテーブルでは下位に位置しており不調が伺えます。

 状況を打破し上昇気流に乗りたい両チームでしたが、結果は2-0、ついにガンバがリーグ戦初勝利を果たします。勝てない時期でも曲げずに積み重ねてきたことがようやく結果に結びついた、そんな試合を振り返っていきたいと思います。

メンバー

ガンバ:前節湘南戦からは4名の変更。
    武蔵、食野、山本(悠)、江川
    →ジェバリ、杉山、ネタラヴィ、クォンギョンウォン

川崎 :前節札幌戦からは2名の変更。
    田邉、山田→車屋、チャナティップ


レビュー

「一瞬止まって」前進の川崎、ブロックで迎え撃つガンバ

 序盤はフロンターレがボールを握る展開が続きました。フロンターレのベースポジションは4-2-3-1。前進の際はボランチが縦関係を作ってCBのサポートに降り、SBは高い位置を取ります。登里は素直に大外のレーンを担当することが多かったですが、山根は家長が大外を担当する場合は内側に入ってパスコースを作ることもあった感じ。そこにトップ下から流れてくるチャナティップも含めると、特に右サイドで多くのパスコースが生まれる仕組みになっていました。

 この局面で川崎の選手は「一瞬止まる」のが上手だった印象です。一瞬止まってガンバのプレッシングのリズムを外す、そのタイミングで受け手がパスコースを作り、前進する。そうした相手のリズムの作り方に対して戸惑っていたのがこの日久しぶりのスタメンだったジェバリ。パスコースがなかなか消せず、1stディフェンダーとしての役割を果たせていませんでした。

 ただガンバは前進されたとしても両ウイングの戻りが早く、ブロックを組んで迎え撃つ態勢に素早く移行できていました。川崎は川崎で、前述した通り列落ちを絡めて数的優位を作りながら前進していくスタンスだったことも影響してか、ブロックの内側に送り込める人の数が少なかった印象。なので、それなりに前進されてしまうもののラストパスの段階ではガンバのDFがしっかり間に合っている状態で、ピンチらしいピンチには繋がりませんでした。ボールを奪うことができれば、ブロックを組む段階では浮いていたジェバリがカウンターの橋頭保として機能したので、そこで時間を作ってカウンター、という形が作れていました。

 形勢が変わってきたのは15分ごろから。川崎がGKソンリョンから始めたビルドアップをハイプレスで捕まえることができ、石毛に絶好の得点機が訪れます。シュートのタイミングがずれゴールには至りませんでしたが、川崎とすれば自陣から繋いでのビルドアップがやりづらくなり、ガンバとすれば敵陣でハイプレスをかけやすくなる状況が生まれます。そこからソンリョンのロングボールの選択肢が増えたことで、自陣でクリーンにボールを回収できる展開が増えたガンバ。次第にボール保持の時間が増えていきます。


フリーのウイングにボールを届ける効能

 ガンバのボール保持でポイントになっていたのはウイングへのパスライン。前半の早い時間帯では川崎にトランジション局面を制されて落ち着いてボールを持てずウイングがなかなか使えませんでしたが、上述の展開を受けDFラインで余裕を持てるようになったことで、インサイドハーフが外に出る可変なども絡めながらフリーになったウイングにボールを届けられるようになっていきます。

 フリーのウイングにボールが届くことの効能のうちの一つが「横パスを使ってアンカーのネタラヴィを前向きにプレーさせられる」こと。CBがボールを持っている局面ではネタラヴィにはマークが付いているのでそう簡単に前を向かせることはできませんが、「ウイングを経由して戻す」ことでそれが可能になります。当然川崎の選手もプレスバックしてくるのですが、少しの時間があれば絶妙なターンでプレスを剥がせてしまうのがこのネタラヴィというスーパーな選手。彼が前を向けばそこから自在に展開することができるので、手薄なスペースを使って一気にチャンスが作れます。27分の杉山のヘッドに繋がる一連のビルドアップはまさに狙った形による演出。そこから得たCKでガンバが先制します。

 一方で、前向きのネタラヴィをうまく活用できた理由は相手方にも理由があったように思います。気になったのは家長の動き。彼はボール保持の際にポジションを離れて色々なエリアに顔を出すのを許されていました。ガンバの得点に繋がる前述のビルドアップ局面においても、家長は直前のプレーで左サイドまで流れてきていたので、そのまま流れの中で宮代と入れ替わってトップに入っている状態。ウイングからのバックパスを受けるネタラヴィへのプレスバックが弱く、逆サイドへの展開を許すことに繋がっていました。川崎、即時奪回できなかった際は家長を基準に回りの選手が空気を読んでポジションを取るので、プレスのタイミングが計りにくい状態になっていたことが伺えます。

 先制点を奪ったことで落ち着いて試合を展開できるようになったガンバ。川崎の攻撃に対しては前述の素早いブロック形成でエリア外で時間を浪費させることに成功し、一方の保持では落ち着いて後方でのやり直しを繰り返しながら川崎のプレスを外してネタラヴィを使って展開、押し込み、というサイクルを作れており、試合の主導権を握った状態で前半を終えることに。近年の川崎戦ではなかなかみられない展開でした。


再現性のあるチャンスメイクからの追加点

 後半の立ち上がり。大きな変更なく入った両チームでしたが、早々にガンバが追加点を奪取します。自陣から実に20回のパスを繋ぐことで、川崎の守備をサイドに圧縮させた状態からのサイドチェンジに成功。そうなると左サイドで広大なスペースが使えるため、オーバーラップした黒川を囮にカットイン、フリーな状況で足を振りぬくことに成功したアラーノのゴラッソが決まります。前半から再現されている形での追加点。チームとしても自信になる得点になったのではないでしょうか。

 ただ、2点リードしたこともあってかその後は受けに入ってしまっていたガンバ。ペースを上げる川崎に対してブロックを組んで迎え撃つのか潰しに出るのか判断が中途半端になったことで後追いの守備が続き、クリーンに奪えずに押し込まれる展開が続きます。その中から59分に宮代のクロスからあわやオウンゴールという展開を招きますがここは谷が間一髪でクリア。

 このまま押し込まれる厳しい展開が続くかと思われましたが、直後のプレーでようやく「後追い」ではなく「先読み」の守備が発動。縦パスを読み切った石毛のインターセプトが車屋の2枚目のイエローカードによる退場を誘発。大きな優位を持って試合を進められることになります。

 その後はバランスを崩して攻めに出ざるを得ない川崎、その裏をカウンターで突くガンバ、という構図が続きます。ジェバリやクォンギョンウォンなどケガ明けでコンディションの整っていなさそうなメンバーを早めに交代させながら時間を過ごしていくガンバ。途中こぼれ球から危険なシーンを作られますが半田の近足タックルでピンチを防ぐナイスプレーもあり、総じて無難にゲームを進められていたと思います。

 川崎は5人交代を使い切った後に途中投入されたCBの田邉が負傷でプレーを続けられなくなり、最終盤は9人でのプレーを強いられることに。ガンバとすれば3点目・4点目を奪えればベストな展開でしたが、VARでのゴール取り消しなどがありつつも2-0のまま試合終了。7試合目にしてようやくのシーズン初勝利となりました。


まとめ

積み重ねを確信に結び付ける

 川崎の退場・負傷によって終盤はゲームが壊れてしまいましたが、それまでも狙いを持ったプレーを使いながら主導権を握ってゲームを進められていたという点で完勝と言っていい試合だったと思います。

 これまでの6試合、勝利から遠ざかっていたポヤトスガンバ。ただ試合内容に目を向ければ同じコンセプトの中で色々な戦い方を経験できており、チームとして前進している感覚は掴めていたのではないでしょうか。今日の勝利でそれは確信に結びついているはず。

 一方で、今日の試合に目を向けてもゴール期待値は決して高くなく、アタッキングサードでのユニット練度などまだまだ課題もありそうな状態です。次の対戦相手は京都で、そこが問われる試合展開になりそう。課題を克服しながら連勝街道といきたいところですね。


飯田主審のジャッジ(2枚目のイエロー)について

 ところで……。今日の「2枚目のイエローカードにアドバンテージを適用する」という飯田主審の判定はジャッジリプレイでも取り上げられていました。要点については下記のツイートでまとめていますが、その後に続く私とせこさん・ゲキサカ竹内さんとのやり取りも読んでいただけると、別の視点も加わりより面白いと思いますので、是非ご覧ください。



ちくわ(@ckwisb


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