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押井守のサブぃカルチャー70年「円谷プロの巻 その1」【2021年3月号 押井守 連載第15回】

長~い前フリを終えて、今回より円谷プロダクションの話題に。当時、数少なく貴重だったというSFの世界。そんな中にあって『ウルトラQ』を押井少年はどう観て、何を感じていたのでしょうか。
取材・構成/渡辺麻紀

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円谷プロは『ウルトラQ』で日本人の“顔”といかに闘って非日常のドラマを手に入れるかに挑戦した

――本当は円谷プロダクションのお話のはずなのですが、なかなかそこに行けずに3回が過ぎてしまいました。さすがに今回は本題に入りますよね? 押井さん。

私が円谷の作品を観るようになったきっかけのひとつが『ミステリー・ゾーン』(1960~1964年)だったという話だよね。お茶の間サイズの作品しかない日本のTVにうんざりしていた私にとっては、まさに理想的なシリーズだったから。
で、円谷の『ウルトラQ』(1966年)は日本で『ミステリー・ゾーン』を目指したTVシリーズだということですよ。言い方を換えると、彼らは日本人の“顔”といかに闘って非日常のドラマを手に入れるかに挑戦した。そしてもちろん、果敢に『ミステリー・ゾーン』に挑み、かなりいい答えを出しそうにもなっていた。何本かは傑作だったとも思う。ファンタジーとして評価できる作品ということですよ。当時の日本で非日常をテーマにしたプロダクションはこの円谷と、宣弘社だけですから。

――たとえばどのエピソードですか?

『鳥を見た』(第12話)やカネゴンの話(『カネゴンの繭』第15話)は秀作だと思うし、『1/8計画』(第17話)なんてとても『ミステリー・ゾーン』っぽい。日本人を1/8サイズにすれば経済的にラクになるという話。マット・デイモンが似たような映画に出てたよね?

――『ダウンサイズ』(2017年)です。設定はまるで同じですね。すでに50年も前にそのアイデアを映像化していたのは凄いかもしれません。

ミニチュアを逆手に取ったアイデアで費用対効果がよく、時代にもマッチし、しかも大胆だった。金城(哲夫)さんの脚本がよかったよね。彼や山田(正弘)さんら、優秀な脚本家がシリーズを支えていたんです。そういう意味では『エイトマン』(1963~65年)と同じ。あれも平井和正等、売り出し前のSF作家が脚本を書いていたから。

――ぺギラという怪獣は有名ですが、出身は『ウルトラQ』だったんですね。

ぺギラは怪獣ものとしてはアリなんだけど『ウルトラQ』的にはどうなんだろうとは思うよね。結果的にぺギラだけ妙に有名になってしまった。
私はウルトラマンシリーズが始まって、心底がっかりしたからね。なんだ、円谷はまた怪獣とヒーローに戻るんだって。
何度も言うけど、当時はSFやファンタジーというのが本当に貴重品だった。非日常のドラマを観るという体験そのものが貴重だと言えるくらい貴重だったから、『ウルトラQ』が1年にも満たないまま終わってしまって本当に残念だったんですよ。

――でも押井さん、映画には結構SFがありましたよ。『ミクロの決死圏』(1966年)とか面白かったじゃないですか。TVでも『サンダーバード』(1964~66年)がありましたし、そもそも『宇宙大作戦』(1966~69年)というか『スター・トレック』(1966年~)はどうです? 

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