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東京ドームに頼りすぎ問題【2022年7月号 風間俊介 連載】『ダンスはうまく踊れない』

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最近、何かを紹介したり、「これ、実はこんなに凄いんですよ」と伝える仕事を多くさせてもらっています。「最近」と書きましたが、テレビのお仕事は基本、そうなのかもしれません。誰かに「これは、こんなに凄いです!」と伝えるときに大切になってくるのが、比較です。前の製品より、こんなに効果が上がった。こっちより、多くの人が良いと思ってます。などなど、短い時間で凄さを伝えるには、どうしても、ものさしが必要となってくるのです。この『ものさし』を何にするかで、人々への伝わり方、深度がガラリと変わる。それを踏まえた上で、ずっと思っていることがあります。

あのぉ、『東京ドーム○○個分』って、あれ、分かりやすいのかな? 最早、お決まりの表現過ぎて、分かりやすいかどうかを議論することもタブーに感じてしまうけど、そんなことないんですよね。もう東京ドームも困惑してないだろうかと思うんですよ。「うん、例えとして名前を出してもらえるのは嬉しいんですが、えぇ、まぁ、何でもかんでも、僕、何個分っていうのは、どうしたもんかなぁって思う時はありますよ」みたいな感じになっていないかと。

スポーツの会場やイベント会場の大きさとして東京ドームを挙げるのは分かるんですよ、同じ土俵だから。グループがなんとなく同じなら、ピンとくるんです。世界一高いビルが、東京タワー〇〇個分とかは、全然、分かるの。でも、東京ドームはいつでも、異種格闘技みたいな戦いに放り込まれるでしょ。大きさ自慢じゃないのに、牧場とか富豪の所有地とか、嘘みたいな相手と比べられ続けていないかと心配になるのです。「え? 僕、野球場なんで、野球が出来る敷地面積が基準なんですよ。それ以外の相手と戦うって…。いや、大丈夫です。負けるのは分かっていますが、僕、やってみます」みんな、東京ドームに頼り過ぎていないかと。「大きさの表現はもう、東京ドームに任せておけば良いんじゃね」的な感じになってないかと。私もテレビで、「なんと、東京ドーム〇〇個分なんです」と言ったことがあります。その上で、一石投じたい。

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