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Perfumeの唯一無二の“物語”を表す4曲

2020年9月21日、結成20周年&メジャーデビュー15周年を迎えたPerfume。Perfumeの魅力というと、完璧なアートフォームを形成するダンスパフォーマンス、中田ヤスタカによるハイ・クオリティな楽曲、アクターズスクール広島時代から続くメンバー3人の仲の良さ……と枚挙にいとまがないが、その中でも唯一無二の“物語”が表出している4曲をピックアップする。

文/小松香里

こまつ・かおり●編集者/ライター。カルチャー誌、音楽誌の編集部を経て、2019年8月に独立。音楽・映画・アート関連の記事を中心に幅広く携わる。

「ポリリズム」でブレイクしたのち、アルバム『GAME』がオリコンチャートの1位を獲得し、“Perfume時代の到来”が有無を言わさぬものとなっていた2008年。その時期にリリースされたのが8thシングル「Dream Fighter」だ。この曲によって、Perfumeとは、あ~ちゃん、かしゆか、のっちの3人がいかにして<最高を求めて 終わりのない旅>を続け、<現実に打ちのめされ倒れそうになっても きっと 前を見て歩くDream Fighter>であり続けられるのか──その戦いを続けていくグループなのだということを思い知った聴き手は多いはず。それは聴き手のみならず、中田ヤスタカからこの曲を託されたPerfumeの3人にとっても同様で、現状に満足することなく、攻めの姿勢を決して忘れないこれまでの歩みを見ても、「Dream Fighter」で歌われている“初心”は脈々と実践されている。


コロナ禍により、初の4大ドームツアー「Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」のファイナル・2月26日の東京ドーム公演2日目が中止になってしまった。しかしPerfumeは毅然と前を向き、結成満20周年&メジャーデビュー満15周年を迎えた当日の2020年9月21日、7時間に及ぶ“P.O.P”(Perfume Online Festival)を行う。


オンライン上でいくつものブースが出現し、3人それぞれの嗜好に沿ったトーク番組等、同時に様々なコンテンツが楽しめる“フェス”仕様。中でもやはり凄まじかったのが、メインブースのトリを飾ったライブパフォーマンス「Perfume imaginary Museum“Time Warp”」だ。

場面は、ライブが実現できなかった2020年2月26日の東京ドームに飛び、ドームの外にいる中止を残念がるお客さんの想いを成仏させるように、ひとりひとりが光の粒となって上昇、世界中に広がっていく。その粒がバーチャルの東京ドームに集結し、「もう一度、あの日から始めよう」という3人のナレーション。ステージ上には、「Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」のセットが再現されている。そして、ツアー同様、「Opera」からのライトセーバーを持っての「GAME」でスタート。2月26日に途切れてしまった物語が再生された──。


ライゾマティクスが最新技術を注ぎ込んだ素晴らしい映像作品であったが、その根底にPerfumeの物語が深く流れているというところが、何よりもこのライブを特別なものにしていた。
「GLITTER」では3人の周りをアニバーサリーを祝うTweet画像が舞うという多幸感。「edge」は暗闇の中3人が歌うシーンのかっこよさに鳥肌が立ち、しかもドームツアーと同様の直角二等辺三角形TOURバージョン。
楽曲の特徴的な振り付けを次々とつなげていく「Visualization」は、ドームツアーの「Challenger」の振り付けが追加。

「Challenger」とは、昨年9月にリリースされたベストアルバム『Perfume The Best “P Cubed”』の1曲目に収録された新曲だが、リリースされる約16年前、Perfumeの当時のマネージャーがこの曲を聴いて中田ヤスタカにプロデュースを依頼することを決めたという、Perfumeと中田の出会いの曲でもある。その運命的な曲によって、Perfumeの物語が見事に更新されていたのだ。


ノンストップでパフォーマンスを展開してきた3人は、「再生」を歌ったところでMCを展開。

そこでのかしゆかの「私たちの可能性ってまだまだある」という言葉に象徴される通り、Perfumeはいつだって前を向いて未来を見せ続けてくれる。その最新の意志が投影されていたのが、ラストに披露した最新シングル曲「Time Warp」。リズミカルなテクノに乗せて歌われる、<あの頃に見てた 全てがほら 宝物になる それぞれが今を生きる 胸に手を当てて 思い出すのさ 僕の Time Warp><再々体験を 幾度と重ねても 1ページを めくる時の気持ち 忘れない ドキドキしてたいの>というメッセージ。


これからもPerfumeは、これまでの出来事を宝物に物語を更新し続ける、そんな確信を抱いた記念日だった。

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