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この夏、注目の"やらかしフェス"【大根仁 7月号 連載】

おおね・ひとし●公開中の映画『リコリス・ピザ』(ポール・トーマス・アンダーソン監督)にコメントを寄せています。

1999年の苗場初開催のフジロックフェスティバル以来、毎年夏は何らかのフェスに参加してきたが、今年は7〜10月まで連ドラの撮影があるので、22年ぶりのフェスに行かない夏になりそうだ。ようやくコロナも収まってきてフェスが本格的に復活するというのに……海外アーティストも来日して本来のフェスが戻ってきたというのに……せめてラインナップやタイムテーブルを見て、行かないフェスに妄想参加するかと、各フェスのHPやトピックをネットで調べていると、聞いたことのない名のフェスが目に入ってきた。

ラッキーフェスティバル? 00年代後半以降、全国で乱立しているフェスだが、中にはフェスとは名ばかりの単なるダサい屋外イベントであることも多々ある。さらにオレほどのフェス通になると、ネーミングだけでそのクオリティがわかってしまう。ラッキーフェスティバル……ぷんぷんと臭ってくる偽フェス感……これはチェックせねば!!と、早速HPに飛んでみると、正式名は【LuckyFM GREEN Festival’22】、7/23・24開催で主催は茨城放送、通称LuckyFes、「音楽と食とアートの祭典」として5つのコンセプトで開催、その5つはグリーン・クロスオーバー・テーマパーク・ファミリー・安心安全とあり、それぞれに政党のマニフェストのような能書きが書かれている……これは間違いなくヤバい案件だ。

さらに読み進めるとこのラッキーフェスの成り立ちがわかってきた。茨城のフェスといえば、ご存じROCK IN JAPANフェスティバルである。2000年の初開催以来、茨城県ひたち海浜公園で行われてきた日本3大フェスの一つで、出演アーティスト数・集客数では日本一を誇ってきた、誰もが知るフェスである。ところがコロナの影響で2020年は中止、2021年は開催直前になって茨城県医師会からのチェックが入り中止。ブチギレたロッキンオン代表渋谷陽一氏は茨城に見切りをつけて、今年から会場を千葉に移転することを発表。つまり茨城は20年間かけて根付かせてきた日本最大のロックフェスを逃してしまったのだ。

そこで白羽の矢が立てられたのが、ラッキーフェスの総合プロデューサー堀義人氏(誰?)らしいのだが、HPのメッセージにはこうある。【県民の落胆、茨城のフェス文化の喪失、経済的損失を考慮すると、県内唯一の放送局かつ昨年の主催者でもあるLuckyFM茨城放送の取締役オーナーとしては、「ここで何もしなければ、水戸っぽのながすたる」「やるっきゃねーべよ」と独自のフェスを開催することとしました。】……なんだよ?水戸っぽって?やるっきゃねーべよ? いやあ、やらない方がいいんじゃないかなー。

これ以降も頭がクラクラするようなダサいメッセージが続くのだが、無視して肝心のアーティストラインナップをチェックしてみよう。さすがにすべて記すことはできないが、目についたところだと、CreepyNuts・CHAI・Awich・BAD HOP・般若・SOIL&PIMP SESSIONS・ブラフマン・MAN WITH A MISSION・水曜日のカンパネラ・MIYAVIなどなど……と、期待したほど悪くはない。他にも若手のHIPHOPグループやSNSで話題系シンガーなども押さえていて、へえ誰もが知るビッグネームはいないけど、これはこれでアリなんじゃないかと思っていたら……石井竜也、杏里、相川七瀬、ゴールデンボンバーと、誰もが知っているけどフェスで観たいか?的な大物アーティストがずらり。ダメフェスの典型に参加アーティストのバランスの悪さがあるが、これはそのお手本のようなラインナップである。幅広い客層と年齢層を意識したのだろうが、まったくもって客の顔が見えていない。

石井竜也がブッキングされたのは茨城県出身だからだと思うが、百歩譲って米米クラブならまだしも、石井竜也って。えー、ここまで書いたまさにこの瞬間(7月1日午後)、ラッキーフェスティバルのタイムテーブルが発表されました。石井竜也、トリです。別に石井竜也に恨みはないが、石井竜也がヘッドライナーのフェスってどう考えてもねえだろ。ちなみに開催3週間前でようやく発表されたタイムテーブルだが、会場マップや飲食店・駐車場の位置などはいまだに未掲載。運営のドタバタが伝わってきます。

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