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今までと何も変わらないよ

「今までと何も変わらないよ」

それって、変わった側の意見ですよね?
母の再婚により、事実、私は「実家」がなくなった。
母からかけられたその言葉を4ヶ月も引きずっている。



突然再婚を告げられて4ヶ月ほど経った。
あの頃よりは少し落ち着いたけど、「気持ち悪い」という感情から未だ抜け出せないでいる。

4年ほど前に離婚。
親の介護・死を経験し、将来に不安を持ったんだろう。
妹が結婚し家を出て行くため50にして初めての1人暮らし。
日に日に悪くなる身体。支え合えるパートナーが欲しかったのだろう。

頭ではちゃんと理解してる。
した上で「気持ち悪い」以外の感想が出てこなかった。

「マンション買ったし、部屋も余ってるからいつでも遊びにきてね!」と告げられたけど、母親が知らんおじさんと住む家に行くわけがない。

同情を求め妹に連絡すると「頭かたすぎ(笑)」と嘲笑われた。
今秋のお前の結婚式を欠席する決意が固まった。


なんでこんなに受け付けないのか?
人生経験が浅すぎたか?
知り合いの不倫や再婚話は興味津々で聞くのに?
身内に降りかかると急にシュンとなっちまうんだな?
夜な夜なアラフィフの●メ撮り動画ばっか見てるの悪影響だったか?
まぁ確かに生々しいもんな?

などなど原因を探る。



そんな折、取材先の方に「ねぇちゃんは元気でいい子だ。きっと母ちゃんが明るい人なんだな」と言われた。
「カップラーメンが苦手なんです」と伝えると「母ちゃんがちゃんとご飯を作って育ててくれたってことだな」と言われた。
その通りだった。


育ち盛りの娘たちを1人で育ててくれた。
仕事や人間関係の愚痴は全く言わない。
やりたい、と言った習い事は全部通わせてくれた。
どんなにグレてもちゃんと向き合ってくれた。
どんなにしんどくても家を片付け毎日化粧をし、オシャレをしていた。
大変な時でも笑っていた。

何でこんな人間が育ってしまったのか、と不思議に思うくらい完璧な母。
美人でスタイルが良くて、私にないものを全て持っている自慢の母。


だからこそしんどかった。
今まで食べてきたご飯をこれからは知らない男に作ることが。
知らない男のパンツとか洗うことが。
朝から晩まで知らない男と母親が笑って生活することが。
全部耐えられなかった。

アラサーにもなってこんな感情を抱いてる未熟な自分が恥ずかしい。
結婚、出産、老後、とライフステージが変わると考え方も変わるだろう。理解できる日が来るだろう。

「理解」はしているが「容認」はできない。
今はこの気持ちととことん向き合う。


「もうどうでもいいよ」
「勝手に生きて勝手に死んでくれ」

そう告げ別れてから連絡をとってないので、日々何を考えて生きてるのか、どんな生活をしているのかも知らない。

最後に会った時「私の総意ではないけど面白いよ」と野沢直子さんの書籍を渡した。
「このままどちらかが死んだら後悔すると思うから伝えとく。あなたは自慢の母だよ」という手紙を添えて。


昨晩、ナンを食べながら思い出した。
母と私はナンが大好きだが妹が苦手だったため、インド料理屋になかなか行けなかった。
でも妹が、修学旅行や友人と遊びに行って2人きりの時。
「ナンチャンス!!!!!」と朝から騒いで食べに行っていた。
そんな、どうでもいいけど、何年後も鮮明に思い出すことができる”何てことない日常”が私にはたくさんある。
そしてその思い出たちに絶対に登場するのがいつも笑顔の母親だ。


いつかまた、普通の親子に戻れるために、私は精神的に大人になりたい。
「遅いよ」と母に見捨てられたとしても、「だよね」と受け入れる器のある大人に。

でもきっと、母は私を見捨てない。
私と違って強い人だから。

最低な母親だったらとことん嫌いになれるのに。
ありがたく縁を切れるのに。
好きだからこそ、大嫌いなんだ。

またこんな写真が撮れる日が来るのかしら。全く想像できないな。