まいごのみかた


ぼくは、お母さんと、ショッピングセンターに、買い物にきた。

野菜売り場で、枝豆をかごに入れたとき、ぼくの保育園のお友だちのお母さんが、話しかけてきたんだ。

お母さんたちは、おしゃべりを始めた。


ぼくは、しばらく、トウモロコシのひげを眺めたり、一番大きいスイカを探したり、パックの中のミニトマトの数を、かぞえたりしていた。


やっぱり、話は長そうだ。ぼくは、お母さんに言った。


「ねえ、お菓子見ててもいい?」

「ああ、いいわよ、お母さんあとで行くね。」


いつも買い物に来ているから、お菓子うりばの場所は、よく知ってる。ぼくは、お菓子うりばを、すみからすみまで、じっくりと、楽しんだ。今日は、お母さんがいいって言ったら、恐竜の骨の形のチョコレートを買ってもらうんだ。

それにしても、お母さん、遅いな。

ぼくは、もう一度、野菜売り場にもどった。


お母さんは、いない。

胸がどきん、として、ぼくは、他の売り場も、探してみた。やっぱり、いない。

どうしよう、どうしよう。


そのとき、とうもろこし売り場の上のライトが、ピカピカ光ったんだ。

いくらなんでも、まずしすぎる、何だろう?って、上を見たら、それは、UFOのライトだった。

つまり、スーパーの天井に、UFOがうかんでいて、ピカピカと、買い物客を照らしているんだ。


ぼくは口を開けて、しばらく、UFOを見上げていた。すると、UFOはゆらゆらと揺れながら、シュウーとちぢんで、小さくなった。そして、スーパーの中を、移動しはじめた。

ぼくは、UFOのうしろを、ついて行った。


納豆を手にしているおばさんの、すぐ横を通ったのに、おばさんは、UFOに見向きもしない。ひょっとして、みんなには、見えていないのかな。

UFOは、冷凍売り場の通路をとおり、曲がり角で、少し止まった。まるで、「ちゃんと、ついておいでよ。」と、ぼくに言ってるみたいだ。

ぼくがそばまで行くと、また動き出す。


いくつかの通路をすぎて、ぼくはまた、もとの、お菓子売り場まで来た。

そこに、ぼくの、お母さんがいた。

「あー、いた!ごめんね、おそくなって!心配した?」

「べつに。」

と、ぼくはこたえて、天井を見上げたときには、もう、UFOは、きえていた。


ぼくは、レジに並んでいるときも、買ったものを袋に入れているあいだも、きょろきょろと、あたりを探した。

でも、どこにも、UFOは、いなかった。


「お母さん、スーパーの中でさ、迷子の子を、UFOが助けるような、サービスってある?」

「おもしろい!いいね、それ。」

おかあさんは、ぎゅうぎゅうの買い物袋のてっぺんに、つぶれないように、パンを入れながら、笑った。


「あ!恐竜のチョコ!」ぼくは、きゅうに思い出して、言った。

「ざんねーん、こんどね!はい。」お母さんは、軽いほうの袋をぼくにわたして、歩きはじめた。

「約束だよ、ぜったいだよ!」

お母さんとぼくは、笑いながら、車に乗りこんだ。


そのころ、とうもろこし売り場の上では、キラキラと光るライトが、まわっていた。

【7ガツ 28ニチ 17ジ 36プン 5サイ ノ コドモ キュウシュツ セイコウ】





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