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3歳の口下手さんに、話せなくなった理由を聞いてみる

口下手なお子さん(特に就学前)の親御さんに向けて、お子さんが話せなくなった理由のひとつを聞き、その子がどうしてほしかったかを紐解いていきます。

お子さんへの声がけや見守り方の参考になれば幸いです。


口下手なのか、言葉の発達の遅れなのか?


お子さんの言葉が少ないと、親御さんは言葉の発達が原因では?と気になりますよね。

言葉が少ないのは、口下手な性格なのか、発達の遅れなのか?
毎日一緒にいても、よく観察しても、多分〇〇だろうと想像するしかありません。

実は、言葉が少ない原因を特定するのは難しいとされています。言葉が少ない=言葉が遅いとも言えません。話しかけても返事のないお子さんに、親御さんの心配は膨らむばかりです。

「脳の特性や難聴といった明らかな原因があって、言葉が遅れているの?」

「コミュニケーションの機会が少なすぎるから話せないの?」

「不安が原因? 特定の場所で話せなくなる場面緘黙症なのでは?」

「極度の恥ずかしがりな性格で口下手なの?」


子どもが言葉を話すようになるための4つの発達条件


意味のある言葉を話せるようになるには、①声を出す機能、②聴く能力、③理解する知力、④話したいという本人の気持ち、この4つがそろって初めて話せるようになると考えられています。

①声を出す機能:唇、舌、顎などの筋肉の発達
②聴く能力:聴力の発達(自分の声を聞いて、しゃべるための練習をする)
③理解する知力:大脳の発達(会話や言葉がけにより語彙が増える)
④話したいという本人の気持ち

身体の発達と意欲があってようやく話せるようになると考えると、言葉の発達スピードが一人ひとり違っても当然ですよね。

自己判断では大事なことを見落としてしまうこともあります。心配な場合は、自治体ごとの健診や専門家に相談することをおすすめします。

今回は、発達は問題がなかったが、普段からおとなしい3歳児だった口下手さんに、口下手になったきっかけを聞いてみましょう。


・・・・・・ うん。・・・・ うん。 ・・うん。 うん。 うん!

言えなかった最初の言葉は 「うん」


私が3歳の時、幼稚園の自由時間。教室の中は、楽しげな子どもたちの声であふれていました。私は、トイレに行きたくなって、先生を探してキョロキョロしていました。

すると、その様子を見たお友だち2人が私の椅子の左右を囲みました。私は園児の頃からのんびりで大人しかったので、世話好きな子たちがよく声をかけてくれたのです。

「どうしたの?トイレ?」「トイレ?」
2人から同時に言われて、私がモジモジ答えられずにいると、
「間に合わないの?おしっこ?」「おしっこ?」
とまた同時に聞いてきます。

私は2人を交互に見るうち、思わずくびを振ってしまいました。本当は「うん」と言いたかったのですが、勢いに押されてもう言えませんでした。

「うん」と言えずに固まっていると、他の子たちも集まってきて、私は大勢の子どもたちに囲まれてしまいました。

「トイレ?」「おしっこ?」みんなから聞かれて、ますます言えません。

何度も聞かれる恥ずかしさと焦り。もう我慢も限界でした。

誰かが「せんせー」と大きな声を出して、その声でみんなも先生を呼び始めました。

「せんせー」「せんせー」「おしっこだってー」「せんせー」


そして、ご想像のとおり。
私は椅子に座ったままおしっこを漏らしてしまいました。
慌てて走ってくる先生、椅子の下に広がる水溜りをみて大騒ぎする子どもたち。

みんなが大声でバタバタと大慌てしている中、自分だけがゆっくりお漏らししているというシュールな光景。全てがスローモーションとなって、大人になった今でもはっきりと覚えています。恥ずかしくて哀しい瞬間です。

たったひとこと「うん」と言えなかった。

頷くだけでよかったのにできなかった「おしっこ事件」から、私は人前で話せなくなってしまいました。

これが私の口下手人生の幕開けでした。


待って欲しかったんです。もうすぐ言えたのに。
自分で言いたかったんです。

でも、だれも悪くないから、もどかしいんです。

せかさず、待ってあげる


となりのトトロのめいちゃんは4才。「トウモロコシ」が言えなくて「トウモコロシ」と言っています。

3才〜5才くらいのお子さんは、舌の筋肉が未発達なため、「おさるさん」が「おたるたん」になったり、「おさかな」が「おたかな」と発話してしまうことがあります。言いたいことがいっぱいで、どもってしまうことも。

子どもが何を言ってるかわからない時でも、大人はちゃんと聞いて「そうだね」と答えてあげましょう。そして、間違いを正すのではなく「とうもろこしだね」「おさかなだね」ってお話をよく聴いてあげてほしいんです。

どんな小さな質問でも、自分で答えられる場合は、ぜひお子さんの答えを待ってあげてください。

急かされて、先に答えを言われたり、本人の言葉など関係なく会話を進めてしまうことが続けば、お子さんは話すのが嫌になってしまいます。

自分で言えなかったという寂しい想いが、口下手さんの心の底にあります。

口下手にしないコツは「せかさず、待ってあげる」です。


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