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オフパコ☆メモリアル(デビュー編・その1)

 ヨッシャ、はじめてのオフパコの話を書いていくぞ。

 もう二十年近く前なんだけど、当時はSNSなどはなくてブログブーム全盛期だった。ついでに言うと「オフパコ」というスラングもまだ存在していなかった。せいぜい「ネット恋愛」という新語がようやく浸透しつつある頃だったね。

 ともあれ、そのような時流に乗ってライブドアブログやFC2ブログなどの各サービスが林立する時代だった。

 俺が利用してたのはアメーバブログでな。正直他のブログサービスと比べても、あまり使い勝手が良いとは言えなかったが、交流機能に関してはわりと充実してたんよな。

 たとえば、ログインした状態で他人のブログにコメントすると、自分のブログのリンクが自動的に貼られたりするのね。すると、コメントされた相手もこちらのことが気になって、高確率でこちらのブログを訪問して時折コメントも返してくれたりするわけ。

 さらに、気になるブログをお気に入り登録しておくと、更新を通知してくれる。これらの機能は今でこそ珍しくないけど、当時は特徴的だったんやね。よって、自分のブログを更新しつつ、更新通知の来た他人のブログにコメントなどをしてるうちに自然と交流が生まれることが多かった。

 この「自然と」ってのが地味に大事なことよね。今現在のマッチングアプリなどの男女交流がギスギスしてるのはどこか「不自然」な出会い方だからだと思うもん。そりゃあ、お互い警戒心バリバリになるっていう。

 話を戻そう。その頃、俺がブログに書いてる内容といえば、すこしおどけた雑記のようなものが多かったのね。なんのことはない、今とやってることあまり変わらんね。

 すると、その交流の中で時折「オイパラさん(実際は当時のスクリーンネーム)面白いです!」などと肯定的なコメントをくれる女の子がおったんよ。なので、俺もその娘のブログに飛んで、コメントを返したりしていた。

 その娘はプロフィールやブログの内容から、ミュージシャンを目指しつつ音楽教室に通う学生さんやったのね。 さらに、複雑な家庭の事情を抱えていて、父親が欧米人、母親は日本人のハーフでもあった。

 その両親はすでに離婚済みで、その一因が父親による家族への虐待やったらしいのね。その父親は彼女の幼少期にすでに帰国している。

 加えて、母親もどうやらなんらかの精神疾患に由来する性格難を抱えているとのこと。そのため、ブログでも母親との関係における苦悩について綴っていることもあった。

 また、彼女は自作の歌詞を時折ブログにアップしていた。素人のオリジナル歌詞といえば、大体お寒いモンが多いんやが、彼女の書く詩には何処か俺の琴線に触れるものがあったんやね。

 歌詞の内容はどちらかいうと華やかで楽しげなものは少なく、横文字などもあまり使わずに、哀動を綺麗な純日本語で綴っているものが多くて、全体的にソリッドな印象だった。そのため、歳のわりに大人びているというか、達観している娘やなあというイメージを彼女に抱いていた。

 その「枯れ方」が彼女のワケあり幼少期に由来しているかもと考えると、軽く心を締め付けられるような思いもした。その時点でまだ会ってもいないのにな。

 俺以外にも彼女の詩に惹かれる人はそれなりに居たようで、ブログのコメント欄にも時折賛辞が寄せられていた。それを見るたびに「そうだよな。彼女の詩には力があるよな」と妙な納得感を覚えたりもした。

 そのような交流が続いたある日、音楽教室の成果発表を兼ねて、彼女がピアノの弾き語りライブを行うという告知がブログに記されていた。 加えて「仲のいいブロガーさんもできれば来て欲しい」という要望が添えられていた。

 場所は神戸の某ライブハウスで、時間は日曜の午後からと、調整すれば行けない話でもなかった。 そこで、彼女にメッセージを送ることにした。

「俺でよければライブ鑑賞に寄せてもらってもいいですか?」

 彼女からの返信はすぐに寄せられた。

「嬉しいです!ぜひお越しください!」

 その後もしばらくをやり取りを続け、インターネット上の親交を深めるうちに、ライブ当日がやってきた。

つづく。

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