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構造デザインの講義【トピック4:鉄・鋼による構造とデザイン】第3講:鉄骨の繊細さとデザイン

クリスタル・パレスが建築の構造とデザインにもたらしたもの。

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



鉄骨の絵画的表現と輝き、クリスタル・パレス

~鉄骨骨組構造、意匠・装飾の表現とプレハブ~

鉄骨構造が建築分野にもたらしたものは、構造性能の向上や施工性、加工性、信頼性とともに、その繊細な表現力もあります。
単体で用いた際の線による描画的表現はさることながら、その他の部材と組み合わせることで、表情や表現の幅は大きく広がります。

リタイアメントパーク、マドリード
水晶宮は、スチールデサインによるクリスタルの輝き、壮麗さ、装飾性、透明性と、骨組力学の原理を体現する強靭な構造体を実現する
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

水晶宮=クリスタル・パレスは、万国博覧会の公開設計競技において、ジョセフ・パクストンによる鉄とガラスの案が採択されました。
睡蓮の葉脈の放射と交差のイメージから着想を得たとされています。
延べ面積8万km2にもおよび、建設から6か月の1851年に完成しました。
実際に建設されたクリスタル・パレスは、パクストンの案とは異なります。
それは、3本のニレの木を伐採せず、巨木を包むように円形屋根とされました。

この水晶宮は、徹底した部材の規格化、巧妙なディテール、トラス架構、カーテンウォール、室内環境の制御、品質管理といった、今日の建設技術の原点ともいうべき総合的技術が用いられました。
いわゆる、プレファブリケーションの建設システムに通じるものです。

万博終了後、ロンドン郊外に移築されましたが、1936年、火災によって鉄とガラスが溶け、クリスタル・パレスは消滅しました。

今日、クリスタル・パレスと呼ばれる建物は、世界各地に存在しています。
クリスタルの輝きと、鉄骨の繊細で優雅な表現を見ることができます。

(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
キューガーデンのパームハウス
現存する鉄とガラスによる建築の最高傑作の1つ、と言われている
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

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