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構造デザインの講義【トピック3:古代の石と木による構造】第4講:構造と装飾の深い関係

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



構造と力学の追及が、フォルム・装飾・空間の美につながる

ゴシック建築の構造と装飾

ドゥオーモは、イタリア語の大聖堂Duomo、ドイツ語ではDom、今日のドームの語源です。
ラテン語の、人々のすまいを意味するDomusが語源ともいわれています。
このドームは、切石やレンガによる組積造によって実現されてきました。

二重殻ドームは、軽量化や、内部空間の確保、曲げ抵抗を高める効果がある

ゴシック建築の壮麗で装飾美にあふれた内部空間は、壮麗で装飾的な空間構成を追求したことで、構造や力学と結びついて完成しています。
ヴォールトは、アーチの連続形です。
すなわち、常に脚部の水平推力・スラストに対する処理が必要となります。
パンテオンをはじめ、厚い壁を設けて強固な構造体を設けることがあります。
しかし、ゴシック建築の代名詞でもあるステンドグラスなど、光を取り入れるための壁を設けることの支障となります。

(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

これらの課題に対し、ゴシック建築の構造的技術革新が用いられました。

尖塔アーチは、高さやスパンの調整が可能となり、脚部の接線の角度を調整することでスラストを抑えることができます。

先端を尖らせた尖塔の形状は、内部空間を高くするとともに、スパンを調整して、スラストを抑えることができる

天井の交差ヴォールトは、リブ効果によって構造の安定性をはかります。
また、装飾性をもたらし、天井を高く見せ、軽量感などの視覚的効果が得られます。
まさに、一石二鳥の技法です。

(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

フライング・バットレスは、建物の自重による力を、側廊外側の控壁(バットレス)に伝達します。

外縁に設けられた小尖塔・ピナクルは、その重量によって、フライング・バットレスなどから伝達される力を下向きに変換し、スラストを抑える効果があります。
バットレスでは、鉛直力と水平力の合力により、石積みの控壁に引張力が作用しないように、ミドルサードの原理に基づき、重量や壁厚が設けられています。

構造、力学の発展は、建造物の崩壊や倒壊、さらに、尊い人命の犠牲を受けて、繰り返さないための努力の賜物です。
構造物の崩壊の現象を観察すると、力の流れや弱点が顕在化します。
古代・中世の大空間構造の崩壊や、近年の自然災害などによる構造物の崩壊は、今日の安全・安心な建物を実現するうえでの礎になっています。

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