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倫理政経ポイント解説(倫理⑤)

今回は中国思想です。

中国の春秋戦国時代に現れた有力な思想家を諸子百家と呼ぶ

諸子百家 思想家        思想内容
(学派)
儒家   孔子         仁と礼
     孟子        性善説、王道政治
     荀子        性悪説、礼治主義
道家   老子        無為自然
     荘子        万物斉同
法家   商鞅・韓非子    法治主義
     李斯
墨家   墨子        兼愛・非攻説
名家   恵施・公孫竜    論理的思考
縦横家  蘇秦・張儀     外交策(合従連衡)
兵家   孫氏・呉子     戦略・戦術論
農家   許行        農本主義
陰陽家  鄒衍        陰陽五行説

この中でも主要な太字の諸子百家について解説します。

儒家

孔子を代表とする

●孔子
孔子の教えは弟子たちによる「論語」に収められている。
仁と礼を重視した。

・仁
人間にとって最も望ましいあり方であり、一言でいうと他者への愛である。
他者に対する愛は「孝悌」(親子兄弟間の愛)を基本として広がるとした。
また、仁は
克己→自分のわがままや欲を抑えること
恕 →自分がされて嫌なことを他人にしない思いやり
忠 →自分を偽らない
信 →他人を欺かない

ことに帰着する。

礼は心の有り様である仁が外面に現れたものであると考え
「己に克ち礼に復る」(=克己復礼)が仁の実現であるとした。

・君子
孔子は仁と礼を備え、正しく生きること(義)を志すもののことを君子。
利だけを求めるものを小人とよんだ。
君子がかたよりのない中庸の徳を身につけるべきとした。

・徳治主義
孔子は君子が国を治めることを理想とした(徳治主義)
また、法治主義には反対した。

●孟子
孔子の死後100年後に生まれ、孔子が人間性に信頼をおいていたことに基づき、その考えを発展させた。

・性善説
彼によれば、人間は生まれつき四端の心を備えているとした。
四端の心
仁の端→他人の不幸を見過ごせない惻隠の心
義の端→自分や他人の不善を憎む羞悪の心
礼の端→他人を崇敬する辞譲の心
智の端→善悪を見分ける是非の心

これらを養うことによって仁、義、礼、智の四徳を実現し、不動の心である浩然の気を持つとした。浩然の気を持つ人は大丈夫(だいじょうふ)と言われる。

・王道政治

四徳をと並ぶ社会生活の秩序として、親・義・別・序・信という五倫を説いた。

また、四徳の中でも孟子は仁と義を重視し、仁義による王道政治を理想とした。
王道とは人民のための徳に基づく政治のことで、民意に従わない王は天命によって追放されるという易姓革命の説を支持した。

●荀子

・性悪説

孔子が礼を説いた点に注目し、人間の本性は悪であり、それを礼によって矯正すべきとした。

・青は藍より出でて藍よりも青し(氷は水これをなして、水よりも寒し)

学問は中断してはいけない。努力すればするほど精錬されてすぐれたものになるという意味。

●儒学
儒家による儒教が研究され、四書(論語・孟子・大学・中庸)や五経(詩経・書経・易経・春秋・礼記)などの書物が作成された。
また、以下のような哲学も発展した。

・朱子学
朱熹(朱子)が代表
宇宙の原理(理)と万物の元素(気)によって世界の成り立ちを考える理気二元論を説く。
理はあらゆるものの根拠であり、人間の本質(性)もまた理である(性即理
人間は本来理と一体(本然の性)であるが、現実の人間は物質的な気に妨げれられている(気質の性)
そのため人欲を捨て(居敬)理を極める(窮理)によって天との一致をなす(天人合一)によって聖人となることを理想とした。

また、朱子は孔子の君子による統治について修己治人とし、理を極め知を完成させることを格物致知とした。四書の中でも「大学」を重視した。

・陽明学

朱子に対して王陽明は生まれながらの心を天理(心即理)とし、善悪是非を判断する心(良知)に従って生きる致良知を理想とした。彼によると具体的な事物に正しく接することで良知は磨かれ(事上磨練)実現するとし、知ることと実践は一致する(知行合一)を説いた。

法家

荀子の性悪説を受け継ぎ、主に弟子の韓非子らが法治主義(法と刑罰による統治)の考えを作り上げた。

墨家
墨子を祖とし、儒家と同様に親愛を重んじた。
他者を区別なく愛する兼愛のもとに博愛平等の社会(兼愛交利説)を唱えた
兼愛に反する戦争を否定(非攻説)し、衣食住や葬祭にかかる費用の倹約によって社会全体の富を増やすこと(節用、節葬)を主張。

道家

●老子
万物の根源を説明のできないであるタオ)とした。
人間としての正しいあり方は、すべてを無為自然にゆだね、他と争わず身を低くする(柔弱謙下)ことであるとし、このような人間による自給自足の共同体こそを国家の理想とした(小国寡民

●荘子
老子の考えを深め、万物が本来平等一体(万物斉同)であることを説き、知恵や執着を捨てて心を空にして(心斎)、己を忘れて自然と一体になる(坐忘)ことで心の調和が実現するとした。
この境地を逍遥游とし、そこに至った人間を真人と呼んだ。



今回は以上です。次回からは日本思想に入ります。
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