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倫理政経ポイント解説(倫理④)

仏教

バラモン教と仏教の成立

●バラモン教とは
バラモン(祭司)
クシャトリヤ(王侯、武士)
ヴァイシャ(庶民)
シュードラ(隷属民)
の4つの身分階層(ヴァルナ)からなるインドの古代文明からなる宗教。

聖典は神への賛歌や呪文を集めた「ウェーダ」に基づく。

紀元前500年を中心として「ウパニシャッド」が成立した
→それによればものは死と生を繰り返しているという。(輪廻

生き物がどこに生まれるかは業(カルマ)によって決まる。
人々は最初、善の業をつくり、死後に神となることを願った。しかしのちに輪廻から解脱することが目標になっていった。
解脱するには、個人個人の内にある本質の我(アートマン)を直観し、それが梵(ブラフマン)と同一であることを(梵我一如)を知ればよい。

●仏教の成立
商工業者の力が強まったことでバラモンの権勢は徐々に衰えていった。
そうした状況下で「ヴェーダ」の権威を否定した自由思想家たちが登場した
そのうち有力な六人の教えを六師外道(仏教側からの呼び名)という。
一覧
ヴァルダマーナのジャイナ教
道徳否定論
七要素集合論(人間の体は地・水・火・風の四元素と苦・楽・生命の集合)
宿命論
快楽論
懐疑論

また、バラモン教は変質し、ヒンドゥー教となった。

こうした状況下で快楽と苦行の極端を排した「中道」に道を見出したのが 仏陀の教え、仏教である。

仏陀の思想

仏陀(目覚め悟ったもの、覚者の意)
本名:ガウタマ=シッダールタ(ゴータマ・シッダッタ)
出生:釈迦族による国家のカピラヴァストゥの王子
29歳のときに出家35歳で真理(ダルマ、法)を悟る

仏陀が悟ったのは苦とはなにか、そしてその原因とそれを滅する方法である。以下のことを最初の説法(初転法輪)で説いた

●苦とは
生・老・病・苦:四苦
怨憎会苦・愛別離苦・求不得苦・五蘊※盛苦:四苦と合わせて八苦
※五蘊とは、人間の存在を構成する色・受・想・行・識という五つの要素
色のみが物質的要素でほかは精神的要素である

●苦の原因
執着
貪(とん):好ましい相手への執着(愛着)
瞋(しん):好ましくない相手への執着(嫌悪)
我執   :自我への執着(根源的な執着)
執着の原因
癡(ち) :あるがままに対する無知(=無明)
これらが苦の原因であり、煩悩の代表である。
この中でも貪・瞋・癡を三毒という。

●苦滅
目指すべき理想、つまり苦の消滅とは執着、煩悩を消すことで現れる涅槃(ニルヴァーナ)に至ることである。涅槃に至る道は八正道に表されている

●八正道
八正道とは極端に走らない以下の8つの中道のこと
正見  :正しい見解
正思  :正しい心の持ち方
正語  :正しい言葉
正業  :正しい行為
正命  :正しい生活
正精進 :正しい努力
正念  :正しい気付き
正定  :正しい精神統一

●四諦と縁起
人生は苦であるという真理(苦諦)
苦の原因は強い執着であるという真理(集諦)
苦の消滅とは苦の原因である執着の消滅だという真理(滅諦)
苦の消滅に至る正しい方法は八正道であるという真理(道諦)

何ごとも原因によって生じ、原因によって滅するということが仏陀の悟り
このことを縁起という。

●四法印

諸行無常:あらゆるものは移り変わる
諸法無我:あらゆるものには実体がない
一切皆苦:あらゆるものは苦しみをもたらす
涅槃寂静:苦を超えた真に静かな安らぎの境地

●智慧と慈悲

智慧:悟り
慈悲:他者を慈しんで楽を与える(慈)と他者を哀れみ苦を抜くこと(悲)

生ある全ての存在(一切衆生)

仏陀の死後の仏教の展開

仏陀の死後、仏教を信仰する仏教教団は世俗の生活を離れて修行を行う出家信者と出家修行者の衣食住の世話をする在家信者から成った。
在家信者になる条件は仏・法・僧の三宝への帰依を誓うこと(三帰)である。そのうえでもし願うなら戒を受けることができる。
戒とは・・・悪を抑え善をなすという誓いであり、基本的なものは五戒である。
↓五戒
不殺生戒:生き物を殺さない
不偸盗戒:ものを盗まない
不邪淫戒:みだりにエッチしない
不妄語戒:うそつかない
不飲酒戒:酒飲まない

仏陀が死んでからしばらくすると出家修行者たちのあいだに分裂が生じた。
最初は保守的な上座部と進歩的な大衆部に分かれ、最終的には二十の部派宗教へと分かれた。

●大乗仏教の興隆
大乗仏教とは・・・信者たちによる改革によって生まれ、自らの仏教を、全ての者の救済を目指す広大な乗り物=「大乗仏教」と呼んだ。一方で旧来の部派仏教を小乗仏教として批判した。

大乗仏教の目標と修行
→菩薩の自覚を持ち、自利・利他双方の達成を目指し、六波羅蜜※に励む
目標は仏教の悟りを得ること
※↓六波羅蜜一覧
布施(他者への施し)
持戒(戒を持つ)
忍辱(苦難に耐える)
精進(悪をやめ善をなすよう努める)
禅定(精神を集中・統一する)
般若(智慧をおこす)

小乗仏教の目標と修行
→出家して修行を行う
目標は阿羅漢(人々の尊敬・供養を受けるに値する聖者)の悟りを得ること

●空の思想

空とは
物事に実体がないことを意味する。

「般若経」では一切皆空と観ずる智慧の体得(無執着の体得)を説いた。

この思想は竜樹(ナーガールジュナ)によって深められた。
彼は空の思想によって縁起を捉え直し、縁起を徹底すると全ては無自性になるとした。彼の後継者は仏教において中観派と呼ばれる一大学派となった。

●唯識説
無著(アサンガ)と世親(ヴァスバンドゥ)は空の思想の問いを追求し、唯識論を考えた。

唯識説とは・・・全ての者は私達の心が生み出した「識」に過ぎないとし、それをヨーガの修行で悟ろうとした。

●大乗仏教の悟り

大乗仏教では、衆生の心はすでに悟りを備えている(一切衆生悉有仏性)という独自の説を生み出した。


大乗仏教は中央アジア、中国、朝鮮、日本へと伝わり、部派仏教(上座部系仏教)は東南アジアへ伝わったが、どちらも本質に変わりは無い。


今回は以上です。次回は中国思想やります。
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