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やはり認知戦の真っただ中、対全体主義勢力への防諜が大事、かと。

ここ数年で「地政学」とのフレーズを聞くことが増えてきました。戦前は日本でもそれなりに盛況で、有名どころではマハン、マッキンダー、ハウスホーファーあたりの名前が挙がってくるのでしょうか。戦後は、ナチスの行動理念のベースにあったとかの評価もあったせいか公的には忌避され、少なくとも日本においては体系的に学べる場がなくなって久しいようです(認識がズレていたらすいません)。

国家の海上権力を左右する主要な条件として、次の諸要素を挙げることができよう。
(一)地理的位置。
(二)地勢的形態ーこれと関連して天然の産物と気候をも含む。
(三)領土の規模。
(四)人口。
(五)国民性。
(六)政府の性格ー国家の諸制度を含む。

出典:『マハン海上権力論集』(編集/翻訳:麻田貞雄/2010年12月)

ちなみに私が初めて「地政学」との言葉を目にしたのは、高校生くらいの時に読んだ『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』という空想SF小説シリーズにて。同時期に確か『沈黙の艦隊』も流行っていて、潜水艦つながりで手に取ったような覚えがあります。その後、紺碧・旭日のシリーズどちらともに続編の手前位で挫折した覚えがありますが、、完結はしたのかな、久々に図書館とかで探してみるかなぁ、そこそこなボリュームだったのを何となく覚えていたりも。

そういえば最近『沈黙の艦隊』が映像化されてますね。こちらは物語の後半から性善説からの地球連邦軍化?な構想に対して、UC(ユニバーサルセンチュリー)でも見据えてるのか的なツッコミをしたくなった覚えがありますが、確か、合本版が屋根裏に全巻眠っていたような、スピンオフと共に。『紺碧の艦隊』、『沈黙の艦隊』、時代背景こそ異なるものの、どちらも潜水艦を題材にした物語としては面白かったなぁ、、閑話休題。

アメリカをはじめとする西側諸国が、ウクライナ侵略においてウクライナに加勢する理由は、武力による現状変更を認めたら国際秩序が崩壊するから

「ウクライナのNATO加盟を脅威と思ったロシアがウクライナに攻撃をしかけたことはしかたないこと」というロシアのナラティブに寄り添うような言説

陰謀論を拡散する人は、親ロシア的な行動をとることが多いということがデータ上でも証明された

2024年1月の台湾総選挙に向けて、徹底的な影響力工作を仕掛けてくるでしょう。そのとばっちりは日本にも絶対に来ます。

出典:『経済で読み解く地政学』(著:上念司/2023年7月)

で、案の定来てたりもします、、ただ憂うべきはこの「影響力工作」が、いわゆる左派勢力(含・左翼全体主義者)ではなく、自称保守(実態は右翼全体主義者)によって流布された部分も少なくないとの点でしょう、「(論理的裏付けを持たない)おきもち」だけで騒ぐのはパヨク系統だけだと思ってたのですけどねぇ、、

穀物生産地であることに加え、クリミア半島にある軍港セヴァストポリは、ロシアが黒海の制海権を確保するために、地政学上、どうしてもおさえておきたい

日本にとって最大の脅威は北朝鮮ではなく、中国なのですから。

出典:『ニュースの❝なぜ?❞は地政学に学べ』(著:茂木誠/2023年4月)

2023年の比較的早い時期に、違う人から違う見方で、同じような見立てが出ているのは興味深いですが、今年(2024年)に入っても、、

習近平体制下の中国で、ネットなどの言説空間を通じて自国の影響力を高め、あるいは敵対国に混乱を引き起こそうとする「影響工作」の規模が拡大している。筆者は、中国からの偽情報のみならず、情報の取捨選択によって拡散しようとするナラティブを分析する重要性を指摘する。

恣意的に流布される情報は、ほとんどの場合情報自体は正しい。そのため不正なナラティブだと一刀両断することができず、世論にじわじわと浸透する。CCPのこうした影響工作の手法は、今後も重大な安全保障・外交案件に関して使われていくであろう。

ターゲットにされているのは、われわれ個々人である。伝えられる情報をそれ単体として捉えるのみならず、情報の束の中に規則性を見出し、情報発信者の政治性を意識したうえで情報を摂取したい。

出典:「敵対国を内側から攻撃する影響工作:中国が「語らないもの」の政治性」
(「公益財団法人ニッポンドットコム」2024年1月25日)

といった興味深い分析からの論説や、ここ最近、夕刊部門が右翼全体主義者(日本保守党)に引っ張られすぎていやしないかとの懸念を強めつつある『産経新聞』さんでも、、

見落としてはならないことがある。開戦に際してプーチンが掲げた3つの戦争目的、すなわちウクライナの「非ナチ化」「非軍事化」「中立化」を素直に受け取る限り、ロシアが目指しているのは領土拡張(土地)ではなかったということだ。

ロシアにとっては、特別な隣国と見なすウクライナの体制を転覆し、ロシアに逆らうことも同盟国を持つこともできないようにすること、やや古臭い表現を用いるなら、属国化することがこの戦争の目的であると考えざるを得ないのではないか。

何もロシア連邦という国家体制を崩壊させようというのではないし、そんな力は米国にさえない。ただ、侵略戦争はうまくいかないし、なんのプラスももたらさなかったという歴史を、現代史に残しておきたいのである。いつか「日本は現実を見なよ」という言葉を投げかけられないために、今できることをすべきではないか。

出典:「<正論>ウクライナに日本ができること」(『産経新聞』2024年2月9日)

といった興味深い分析が出てきています。こういった論説を掲載できる辺り、産経さんもまだ冷静な部分が残ってるのかな、、なんにせよ、戦前のように右翼全体主義者に肩入れはしないよう注意してもらいたいなぁとは思います(朝日系列やNHK、毎日・TBS等々は既に手遅れと思いますから)。

コロナ禍で初めてワクチン反対派になった人の特徴を分析し、陰謀論やスピリチュアリティに傾倒している人がワクチン反対派になりやすく、さらに参政党への支持を高めた可能性を示した。

ワクチン反対派などの特徴を分析した研究は多く存在するが、本研究ではどのようにワクチン反対派に転じるに至ったかを時系列的な分析に基づいて明らかにし、さらにその政治的含意も示した。

公衆衛生に対する脅威となりうる反ワクチン的態度の拡散を食い止めるための手がかりが得られ、将来のパンデミックに対して重要な教訓を得た。

出典:「人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析―」
(『日本の研究.com』2024年2月5日)

その他に興味深かったのが、「人はなぜワクチン反対派になるのか」との分析レポートについて、日本保守党とはまた違った意味でカルト色の強い「参政党」の名前が挙がってるのが、ふむふむと(なぜかウマ娘が被弾してますが)。

その上でネガティブに思い出したのが、少し前に左翼全体主義者に阿る様な偏向報道がはなはだしい某公共放送の「クローズアップ現代」にて、一時知の巨人とかで持て囃されていた佐藤優さんがまさしく「ロシアの代弁者」と化していた事です。

「ジャーナリズムとプロパガンダの間には超えてはいけない一線があります(中略)色々な立場、色々な見解を伝えることは必要。プーチン大統領や金正恩委員長の演説を伝えることも必要。問題はそれをどう報じるか」

日本において、非常に影響力のある公共放送であるNHKの中でも、看板番組の一つとも言える「クローズアップ現代」が、今回、欺瞞に満ちた「平和主義」でプーチン大統領のプロパガンダを垂れ流したことは、極めて大きな問題

出典:「「佐藤優クロ現問題」でNHKに批判相次ぐ―世論分断工作に加担?ウクライナ取材のジャーナリストが解説」
(『志葉玲ジャーナル-より良い世界のために』2024年2月11日)

大枠での問題点は、こちらの記事にて分かりやすくまとめていただいています。にしても、佐藤優さん、2015年位までは著書もよく拝読していて、どちらかというと肯定的にとらえていた方です。いつ頃からか、恐らくは公明党(創価学会)と距離を縮め始めてから、その内容にも首をかしげるケースが増えてきて、自然と手に取らなくなっていった覚えがあります(手持ちの書籍も数冊を除いて処分してしまっています)。

今にして思うと、著作も自己模倣の再生産になりつつあった感もあるので行き詰っていたのかな、なんて、こちらの高野さんのポストを拝見しながら、推察してみたりも。

個人は国家を通して人類の文化の建設に参与する事によって永遠に繋がる事が出来る

国際政治は、性善説ではなく、性悪説に立脚した「力の論理」を冷徹に認識した上で組み立てた方が周辺世界との軋轢も少なく、結果として自国の国益を極大化する

出典:『日米開戦の真実』(著:佐藤優/2011年2月)

安倍晋太郎氏は外相職を去った後も、政治生命を賭して日ソ関係の改善に努力した。

安倍晋三首相は「価値観外交」、麻生太郎外相は「自由と繁栄の弧」という表現で、日本外交を特徴づけようとしている

出典:『地球を斬る』(著:佐藤優/2009年8月)

この頃(~2015年前後)までの著作は、興味深く拝読していましたし、いろいろと考えさせられるヒントもいただいていたと思います。少なくとも、冷徹な「力の論理」を踏まえた上で「力による現状変更は認めない」との前提をお持ちだったとは思いますが、、それだけに、残念ではあります。

今現在(2024年)の佐藤優氏は内在的論理との言葉で、強いものによる侵略に我慢して妥協しろと主張しているようにしか見えませんが、さて。

・「力による支配」を脱却し国際法の誠実な順守を通じた「法の支配」を目指すこと
・力や威圧による領域の現状変更の試みは決して認めないこと
・国連憲章の原則の重大な違反に対抗するために協力すること

出典:「国連総会における岸田内閣総理大臣一般討論演説」
(外務省HP「国家間の法の支配」2023年9月4日)

日本が寄って立つべき「普遍的価値観」を共有する陣営において、「力による現状変更を認めない」はコンセンサスだと思います(折々で日本政府の公式の立場としても表明されてます)。

そのためにも、.地域としての抑止力を高める必要があると思いますし、今回のロシアによるウクライナ侵略を受けて、今までNATOへの加入を見送られていた、見送っていた国々がロシア(というより共産主義勢力)に対する包囲網を構築する観点からも、参加を開始しているのはその一つの証左かと。そういった意味では、、

今年11月の米大統領選で野党・共和党の指名候補になる見通しが強いドナルド・トランプ前大統領は10日、在任中に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に対し、その国の「軍事費負担」が不十分ならばアメリカはその国を守らず、ロシアに「好きにするよう促す」と発言したのだと、支持者集会で明らかにした。

出典:「トランプ米前大統領、NATO加盟国攻撃をロシアに「促す」……在任中の発言に批判 軍事費負担めぐり」
(『BBC News JAPAN』2024年2月12日)

国内外問わずにオールドメディアでは大分切り取られていますが、発言自体は在任中で、恐らくは当時のメルケル首相下のドイツを念頭に置いていたと推察されます。これを、今の時期に再度言及しているのは「安全保障へのフリーライドはさせないよ」との、ある種日本も含めた「西側諸国」全体を念頭に置いての対共産主義戦争への覚悟を迫る内容でもあるかと。

そういった意味では、先日に江崎さんが「トランプさんが再選したら日本もいろいろと覚悟を迫られる」と仰っていた内容ともリンクします、、ふむ。(トランプさんの)言い方はさておき、言っている内容は意識しておく必要があるなぁ、とあらためて痛感していますが、ここまで踏み込んで分析されている方々の論説は、やはりきちんと拝見しておきたい所です。

国連安保理事会では、定席のメンバーである「常任理事国」ー米・英・仏・露・中が特権を持ちます。五大国の1か国でも拒否権を発動すれば、決議は通らないのです。

国連が、平和を守ってくれるというのが幻想です。これが世界の現実なのです。

出典:『ニュースの❝なぜ?❞は地政学に学べ』(著:茂木誠/2023年4月)

「拒否権を持っている国が侵略の当事者」になっている時点で、国連総会が現実的な対応力(術)を持ちえないのは、古代ローマの時代から変わらないですね。あらためて拒否権を持つことの強力さを実感させられている事案なのが、今回のロシアによるウクライナ侵略戦争です。

今後、このロシアによるウクライナ侵略戦争の結果、ウクライナが1ミリでも妥協したら、それをとっかかりにして、ロシアは北海道を、共産中国は台湾はもとより日本をも侵略してくると思います。その「現実の危機」をより実感するからこそ、佐藤氏の今回の振る舞いには警鐘を鳴らしたくもなりますが、さて。

佐藤氏は「内在的論理」とのフレーズ自体は昔から使用されていたと思います。個人的には、それは「結果が出きってからの事象(歴史)」のみを対象として使用されるべきで、当事者が現存している現在進行形の事象には不適切だと思いますし、氏も実際に2015年位まではそういう使い分けをされていたような気がしていますが、これが変節ってものなのでしょうか、、あるいは「共産主義勢力に屈することを選んだ」結果に過ぎないだけなのか。氏の存在自体の否定はしませんが、彼の言説を否定せざるえないのが、非常に残念であることには変わりはありません。

左右の全体主義たちによって帝国憲法そのものが骨抜きにされ、選挙によって示された民意を重んじる憲法習律も否定されていった

報道に対する国民のリテラシーを高めることであって、自分が気に入らない新聞の「廃刊」を叫ぶことではない

出典:『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(著:江崎道朗/2017年8月)

『敵を知り己を知れば百戦危うからず』

出典:『経済で読み解く地政学』(著:上念司/2023年7月)

いずれにせよ、今現在が認知戦の真っただ中である事を念頭に置いて、左右問わずの全体主義者の流言飛語に載せられないよう、かといって、彼らの存在自体を否定しきらないよう留意しながら、自身の軸をブラさずにリテラシーを高めておきたい所です。

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