海外と日本の採用の違い
日本から海外にくる若者たち
海外で仕事をしていると日本から「自分の英語力を生かして海外で活躍したい!」と希望に胸を膨らませて渡航してくる若者たちを見る機会があります。
時には日本での勤務経験もなく、新卒で海外に飛び込んでくる若者もいます。
今回は、誤解を恐れずに私の正直な気持ちを書いてみようと思います。もちろん、これは私個人の考え方なので、必ずしも正しいわけではないでしょう。そこのところを理解してもらいながら、読んでもらえればと思います。
英語が出来る=スキル?
皆さんは、英語が出来る事が海外でスキルになると考えていますか?実は海外では英語が出来ることはスキルにはなりません。なぜなら、海外では皆英語が話せるからです。
逆に日本国内を想像してみましょう。日本語が話せる外国人がいて、ネイティブではないが日常の会話は問題ないレベル。あなたは彼の何を評価し、何を期待するでしょうか?
おそらく、彼の日本語よりも英語力をビジネススキルとして評価するでしょう。
日本国内では英語をネイティブで話せる人が少ないので、それは立派なスキルとして有利になります。
では海外では?
そうです。海外でスキルになるのは、英語ではなく、日本語がネイティブであることが評価されるんですね。
日本人は元々ネイティブなのでピンとこない人もいるかも知れませんが、日本語がネイティブ、これは海外では立派なビジネススキルです。
ですので、マレーシアでも日本の顧客向けのサポートセンターとして日本人の採用枠があります。募集要項には「英語力不問」と書いてあるかもしれません。
海外で働けば、より英語力が磨けるはずだ、と思ってマレーシアに来る人も多いですが、実際には殆ど日本語しか使わずに思ったようなキャリアを積めない人も多いと思います。
海外と日本の採用の違い
これは良く理解しておく必要があると思うのですが、海外では、スキルファーストの採用が行われます。あなたが持っているビジネスで生かせるスキルの価値があなたへの評価です。
これは日本の採用とは大きく違う点です。
日本ではメンターシップ採用と呼ばれる採用を行います。
特別な専門性のあるスキルを問わずに学生の学歴やポテンシャルを判断して採用するやり方です。
社員を長期雇用することが前提であるため、会社が社員に必要なスキルを教育していきます。企業にとっては必要に応じて柔軟に仕事を依頼できるメリットがあり、組織を熟知した人材を育成することはチームワークをより堅密にします。また、社員にとっても給与をもらいながら社内で育成してもらえてスキルアップ出来るというメリットがあります。
反面、海外ではスキル採用です。
募集はJob Descriptionという「必要なスキルセット」を満たしている人を前提とした採用を行います。また、一般的に社員を社内で育成することはしません。スキルアップは個人の努力で行うべきというスタンスです。非常に合理的なシステムです。
「今は特別なスキルは持っていないが、海外で仕事をすれば成長できるはず」という期待を胸に海外に飛び込んでみたものの、数年たってもまったくスキルが身についていない、そんなケースもよくあるのです。
これにはJob Descriptionに記載されている仕事以外は任せてもらえないので、それ以外の仕事を経験するチャンスが与えられないことも多い、という事を意味します。
必要に応じて、自分で勉強して高度なスキルの資格を取得し、転職しながらキャリアを築いていかないといけません。
私達は海外では外国人
これは特別な意味ではなく、当たり前の事ですが、日本であれば、私達は日本国民として様々な面で守られています。
しかし、海外では私達は外国人です。
外国人はその国で労働力として期待されているから採用されるのであって、病気やケガをして働けなくなれば、どのような待遇になるか。これはしっかりと覚悟しておく必要があります。
また、海外で面接に合格したとしても、いざ渡航しようとしても労働ビザが降りないという事もあるんです。こればかりは、その国の労働局の判断になるので、どうしようもないです。
リスクを抑える海外生活
私は会社の辞令を受けて出向という形で海外勤務を経験しました。振り返ってみると、このような出向による海外勤務は極めてリスクが少ないです。
雇用が保証されている上、海外で必要な事は会社からのバックアップが期待できます。
労働ビザも確実に申請が通ってから渡航すれば良いのです。場合によっては補助金も出るでしょう。また、海外ぐらしが馴染まなかった場合は日本に戻ることも出来ます。
また、日本から出向する場合、立場的にある程度のポジションを与えられて仕事を始められることも多く、より力を発揮しやすいかもしれません。
かなりのリスクがヘッジできるのでお勧めです。
長い人生、一年や二年は多少の不便があっても人生の貴重な経験になります。チャンスがあれば思い切ってチャレンジすることも考えてみてください。
海外で仕事をして暮らすということ
割と暗い話も多かったかもしれませんが、私は何も海外へいく事を反対しているわけではありません。多分、どこで暮らしていても同じだとは思うのですが、海外にいくなら、より「マンパワー」が必要になると思ってほしいのです。
それは組織に頼らず、個人で突破する力です。
様々な人脈を広げていく社交的なアプローチもあるでしょう。または、個人のスキルを磨いて、どこでも通用する人材になる必要があると思います。
一つの方法として、日本国内の企業に就職して何年かキャリアを積んでから海外を目指す方法もあると思います。
教育に力を入れていて、海外志望の人を支援する制度がある、あるいは社に海外からの人材が多いグローバル化された企業など。
実践経験を積めるチャンス、育成環境など、見極めるべきポイントはあると思います。
日本でしっかりと経験を積みながら社内外で信用を重ねていけば、海外にチャレンジする時、それが財産になると思います。
まとめ
私はビジネスマンの視点から、今回このような話しをしました。新卒、あるいは中途採用という形で海外にチャレンジする方達を意識しています。まだ若い学生であれば留学などの違ったアプローチもあるでしょう。
多くの日本人が海外で生き生きと活躍することを願っています。
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