見出し画像

日本と世界の国民性の違い

海外で働く日本人が陥りやすい心理

マレーシアに進出した日本企業の知り合いの方が撤退して日本に帰任するとき、最後に言い残した言葉

「なんか虚しくなったんですよね・・・」

この言葉は今も私にとって印象深く残っています。

マレーシアに進出した日本人が罹る病というかマイナスの心理状況。

私はマレーシアに来て「日本人は世界的にみてもトップレベルの労働力をもった国」だと感じるようになりました。

具体的には

- 非マネージメント型の自発的な仕事スタイル
- 自分の職責を超えた柔軟な仕事への対応
- 他人の仕事にまで気を配り、あまつさえ仕事を自発的に手伝うメンタリティー
- 納期(約束)を守る心根の強さ
- 無償ともいえるサービス精神

などです。

この根底には日本人の考え方として「思いやりの精神」が仕事の場でも職責を越えて遺憾なく発揮されている、という事が上げられると思います。

もちろん日本人すべてがこのような人ばかりではありません。ただ、日本人は私生活と仕事の境界線が曖昧で、職場においても職務や金銭を超えたホスピタリティーを持っている。これは、日本にいるときは何も疑問に感じませんでしたが、マレーシアに来てから、それが「普通ではない」と知りました。

世界的にみても、こんな国は、珍しいんじゃないかなぁと思います。

日本人はそれを
「当たり前」
と思う人が多く、これは逆に言えば、日本を息苦しくしてしまう要素でもあるのですが・・・

ともかく、そんな日本人達がマレーシアに来て、そしてまじめにビジネスをしようとすればするほど、虚無感に襲われるんですね。

ホフステッド指数

もう少し客観的な視点で世界の人たちと日本人を比較していきましょう。

面白いデータがあります。

1980年頃にホフステッドという人が、米IBMの世界40ヶ国11万人を対象に文化と国民性の違いを定量的に分析したホフステッド指数というものがあります。

ホフステッド指数には以下の6つの指標があります。

1.Power distance :権力格差への従順さ
2.Individualism :個人主義の強さ
3.Masculinity :男性社会
4.Uncertainty avoidance :リスクオフの傾向
5.Long-term orientation :長期目線
6.Indulgence versus restraint :快楽主義

今回、中国、日本、マレーシア、そしてベトナムの4つの国で比較してみたいと思います。

画像1

日本人はどうでしょう。権力に対しては程よく従順で、適度な個人主義をもっています。これは組織の中ではチームワークを維持しつつ、時には上司の判断がなくても自己判断で仕事を処理できる事を示しています。しかし、どちらも強くも弱くもなく、バランスがあります。そして、圧倒的な男性社会。また常に長期的な目線で物事を考え、リスクを冒さない、という国民性が見えてきます。

ただ、極端に偏ったリスクへの恐れがあり、「出来ない」事を極端に恐れています。これは変化の激しい時代においては後手にまわってしまう弱点にもなりえます。

こうして比較してみると、ちょっと意外な一面も感じますが、なかなか面白い傾向が見えてきますね。

画像2

ついでの米国と日本人も比較してみましょう。米国では圧倒的な個人主義ぶりが目を引きます。そして長期よりは短期的な目線、リスクに対してはバランスをもって対処する国民性が見えてきます。

https://www.hofstede-insights.com/country-compariso

日本人とベトナム人

私はマレーシアとベトナム(ハノイ)の2つの国に駐在し、さらにインドネシアの人達とも一緒に仕事して分かったことがあります。

ホフステッド指数を見ると、日本人とベトナム人の国民性は類似点が無いように見えます。しかし、実際の体験した肌感覚としては仕事を一緒にやりやすいように感じます。

こんな事を言うと、ベトナムに駐在する日本人であっても「そうかなぁ?」と違和感を感じるかもしれません。しかし組織に対しての適度な従順さと勤勉さ、そしてある程度の将来的な長期目線をもちながら、リスクを恐れず突き進める。

アジアの中で近年の発展が著しいベトナムでは、このような国民性は日本人との相性が良いのではないかと思います。

いずれにせよ、日本人が世界の人達と仕事をしていくためには、文化と国民性の違いを理解し、多様性を肌感覚で身につける必要性を感じます。

その中で日本人が日本人のままの国民性で、そのまま一緒に仕事が出来そうな国。それはベトナムだと思いました。

ただ、誤解しないで欲しいのは、私はベトナムを賞賛するために、このような事をいっているのではありません。

言い換えれば、ベトナムだけに限らない話ですが、一つの外国経験をもって海外を認識することは日本人として判断を間違う可能性があるという事です。

日本人が身につけるべきは多様性

ホフステッド指数が示しているように、世界には様々な国があり、そして異なる文化と国民性を持っています。

海外で仕事をするということは、日本人とは異なる文化と国民性を理解する必要があり、これは理屈ではなく肌感覚として身体に染み込ませる必要があると思います。

そのためには、様々な国を体験して多様な文化と国民性を理解する事が必要だと感じています。

私がマレーシアに駐在した最初の数年間で理解できたことは少なかったです。むしろベトナムに駐在することで、マレーシアとベトナムを比較する事ができました。それによって、私はマレーシアという国を始めて理解できたような気がしたのです。

かように他国の文化や国民性を理解するのは難しく、そして簡単ではないと思います。「日本人の感性のまま外国を理解したつもりになる」ことは注意しなければならない事なのだと感じています。

最後に

ITという新しい産業が急速に発展しています。

それは世界のこれまでの在り方を変え、そしてネットワークを介して日本と世界との繋がりを加速させています。来るべき新しい時代に向けて、私たち日本人も変わっていく必要があると痛感しています。

日本人が進化し、アップグレードするための方法はいくつものアプローチがあると思います。

異なる文化を体験して多様性を身につけ、ハイブリッドな日本人になる事は、そうしたアプローチの一つになるのかもしれません。

Twitter:
https://twitter.com/turbomaru_hiro

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?