第386回 まだまだ埋もれた文化財が
1、読書記録60
新刊が届いたので今日はこれをご紹介します
月刊文化財 第669号
新指定の文化財―美術工芸品―
累計ごとに新たしく指定・登録された文化財の紹介がいつもなされていますが、
今回は「美術工芸品」ということで数が非常に多くなっています。
2、新指定・登録リスト
国宝は5件、重要文化財は44件、登録文化財は2件。
さらに追加指定なども含めると膨大な数に上ります。
国宝
【絵画】キトラ古墳壁画 奈良県明日香村
【彫刻】木造五智如来坐像 京都府京都市 安祥寺
木造薬師如来立像ほか5躯 奈良県奈良市 唐招提寺
重要文化財
【絵画】絹本著色春日鹿曼荼羅図 奈良国立博物館
絹本著色釈迦三尊像 京都府京都市 大徳寺
紙本金地著色唐獅子図 京都府京都市 本法寺
絹本著色東大寺縁起 奈良県奈良市 東大寺
絹本著色鯉魚跳龍門図 長崎歴史文化博物館
【彫刻】木造弁才天坐像 神奈川県藤沢市 江島神社
木造日蓮坐像 京都府京都市 妙覚寺
木造獅子狛犬 京都府京都市 教王護国寺
木造金剛力士立像 京都府綾部市光明寺
木造僧形八幡神及諸神坐像 大阪府羽曳野市 壺井八幡宮
木造千手観音立像 兵庫県加東市 朝光寺
木造地蔵菩薩立像 奈良県奈良市 新薬師寺
木造阿弥陀如来立像 福岡県福岡市 萬行寺
【工芸品】漆塗彩桶 文化庁
銅置物「十二の鷹」 東京都 国立近代美術館
色絵十二カ月和歌花鳥図角皿 静岡県熱海市 MOA美術館
黄瀬戸福字鉢 大阪府大阪市 湯木美術館
跋子・銅鑼 愛媛県今治市 東円坊
【書籍・典籍】続華厳経略疎刊定記巻第五 東京都 五島美術館
元版一切経 京都市 東福寺
紺表紙小双紙 京都市 仁和寺
【古文書】 朝鮮国告身慶尚道観察使兼巡察使洪履祥伝令幷書状 九州国立博物館
豊臣家文書 東京都個人蔵
和田家文書 大阪府個人蔵
鰐淵寺文書 島根県出雲市 鰐淵寺
太宰府跡出土木簡 福岡県九州歴史資料館
琉球国時代石碑 沖縄県立博物館
【考古資料】兵庫県神戸市 池田古墳出土品
和歌山県新宮市 阿須賀神社境内出土品
鳥取県鳥取市 青谷上寺地遺跡出土品
徳島県徳島市 矢野遺跡出土品
福岡県福岡市 元岡古墳群G群6号墳出土 金錯銘大刀
大分県大分市 府内大友氏遺跡出土品
鹿児島県鹿児島市 三角山遺跡出土品
【歴史資料】カラフトナヨロ惣乙名文書 北海道札幌市 北海道大学付属図書館
蝦夷島奇観 九州国立博物館
彫金後藤家関係資料 東京藝術大学
伊江御殿家関係資料 那覇市歴史博物館
交代寄合西高木家関係資料 愛知県 名古屋大学付属図書館
ホジ6014号蒸気動車 愛知県 リニア・鉄道館
八重山蔵元絵師画稿類 沖縄県 石垣市立八重山博物館
新登録
【歴史資料】建築教育・研究資料 宮城県仙台市 東北大学
官立高等教育機関営繕組織近代建築図面 東北大学
「美術工芸品」という括りが大きすぎるのかもしれませんね。
3、珠玉の二つ
この中で最も気になったものを2つだけご紹介したいと思います。
まずは 黄瀬戸福字鉢(きせと ふくじ はち)
所蔵する湯木美術館は、日本料理店「吉兆」創業者の湯木貞一が創設した美術館で、氏が造詣の深かった茶道に関する資料が多く、国の重要文化財も含まれています。
最も名高いのは大名物と呼ばれ、織田信長・豊臣秀吉も所有した紹鴎茄子。
茶の湯の道具は銘がつけられたりと物語を伴っていますが、鉢のような、高級とは言え食器が重要文化財となったのは珍しいかもしれませんね。
黄瀬戸というのは美濃(現在の岐阜県)で16世紀後葉から17世紀初頭に焼かれたもので、文字通り黄色い発色が特徴です。
桃山時代より前には灰釉と鉄釉という単色のみだった焼き物に色彩の多様性が生まれ始めたという意味で画期的なモノです。
この作品は形や見込み(器内部の中央)に「福」の字を印花(スタンプによる文様)で施されている点などは中国の陶磁器の影響が強く表れています。
このような陶芸史上の価値が評価されたというところでしょうか。
府内大友氏遺跡出土品
中世から近世初頭に支配した大名大友氏。
その館跡周辺の町屋や万寿寺跡などから出土した一括資料が新たに重要文化財になりました。
内訳は土器・陶磁器555点、土製品・瓦138点、金属製品324点、木製品140点、石製品72点、ガラス製品27点、骨角製品11点、油煙墨残欠2点。
特筆されていたのは
イエス・キリストが写った布(聖骸布)が表現された「ヴェロニカメダイ」やガラス製のコンタツ、真鍮製のチェーンなどキリスト教信仰に関わる遺物は注目です。
さらに中国のみならず、朝鮮、タイ、ベトナムなど海外生産の陶磁器が多数出土し、町の国際性を表していると評価されています。
情報を遡ってみますと2017年に県指定になったばかりですのでなかなかのスピード出世です。
さて、いかがだったでしょうか。
リストが長すぎましたが、これはひとえにまだまだ評価しなくてはいけない
文化財がたくさんある、ということに他なりません。
みなさんが気になるものもあったでしょうか。
ぜひコメントで教えてください。
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