第976回 2020年の歴史ニュース日本編その3 その他編
1、年は越してしまったけれど
さて昨年末からまとめてきた2020年の歴史ニュース。
海外編
日本編その一 調査成果編
日本編その二 展示公開編
とまとめてきましたが、最後にその他編としてどちらにも入れられなかった話題から10件選んでみます。
ちなみに昨年分はこちら
2、明暗はどこで分かれるの
①旧秋田藩主佐竹氏に伝来した太刀「八文字長義」が売り出される
旧藩主の宝物で、重要文化財クラスのもので、本来は県立博物館などに鎮座していてもいいようなものが、売りに出されていても
自治体には購入資金はどうやってもない、という話。
クラウドファンディングで山鳥毛の里帰りプロジェクトを実施した瀬戸内市とは対照的ですね。
②大分県豊後高田市で田染荘の“荘園領主”と称した水田オーナーを募集
こちらは資金調達に際して切り口を工夫した例。
荘園領主って言われるとちょっと嬉しくなりません?
歴史オタクだけかな。
③文化庁文化審議会は史跡整備の新基準を示す
文化庁とその諮問機関である文化審議会が2020年に発表した案件はいくつもありましたが、一つあげるとしたらこちら。
ちゃんと史実に基づいた「復元」と「復元的整備」をはっきり分けることで
弾力的な運用を図る、という話。
現場の実情に合わせて基準を変えるということは、賛否両論ありつつも
やっぱり必要なことだと思いますね。
④京都府福知山市で「本能寺の変 原因説50 総選挙」を企画
明智光秀が築いた福知山城を有する市が特設のミュージアムも建設し、盛り上げ企画として立ち上げたのが総選挙。
いろいろなパターンを組み合わせて50説も考えて、投票総数は35,359件にもなったというから驚きです。
結果は是非リンク先を確認してみてください。
⑤山口県田布施町で内部告発した職員を町史編纂室に異動か
こちらもTwitterでは話題になりましたが、懲罰人事で異動させられるポジションに町史編纂室が当てられているのが悲しいということに尽きますね。
⑥2020年7月の豪雨で九州各地で少なくとも54件の指定文化財が損壊
2020年も災害の年になってしまいました。毎年文化財の被害も報道されています。
⑦熊本県人吉市の国宝・青井阿蘇神社で、奉納刀の修復でクラウドファンディングを実施
災害からの復旧という側面でも日本刀の持つ力はすごいな、という記事。
⑧長野県御代田町でふるさと納税の返礼品に町内で出土した土器のレプリカを追加
一方こちらは返礼品に本物そっくりの土器を贈るという報道。
確かに博物館の学芸員さんたちは実験考古学的な見地からも土器の再現を試みていますので
中には本物そっくりのクオリティに仕上げてしまう人もいます。
私なんか不器用なんでからきしダメですが。
刺さる人には刺さる、一点ものの返礼品です。
あまりに精巧に作られすぎたらいつかどこかの遺跡から出土して
未来の考古学者を困惑させてしまわないでしょうか。
⑨沖縄県の県立博物館・美術館の来年度の指定管理者に、現管理者の沖縄美ら島財団が応募していないことが判明
博物館に指定管理が導入されていることはもう珍しくなくなりました。
先日取り上げた川崎市民ミュージアムもそうでしたね。
民間事業者であれば景気の動向でいつか破綻することもあり、
手を引いた時に、なら元の直営の運営に戻しますか、
と単純に戻せるものではない、という当たり前の問題に直面しています。
本来は民間の力を借りて効果的な運営を、という趣旨の制度だったのに
どうも経費削減、人件費抑制のために外注する、という傾向が強くなってしまっています。
減らされた公務員でどう運営していけばいいのか、
実質はもとのとおりの運営はできなくなってしまうのかもしれません。
また構造的な問題になってきます。
⑩宮城県仙台市で仙台城の大手門復元へ
そんななかで新たに管理する物件を増やそうという挑戦も。
地元民としては戦災で失われた象徴的な建築物が復元されるのは
心情的にとても嬉しいですが、
今後の社会が情勢を鑑みてそれが果たして正解なのかどうかは
自信持って断言できない、というのが本音です。
しっかりと議論されていくことが期待されます。
3、それでも生きていく
いかがだったでしょうか。
2020年は総枠でみると大変な年で、暗いニュースが多かったと思いますが
独自の創意工夫や、知恵を出し合ってきらりと光るものを生み出すところも
ないわけではありません。
厳しい時代だからこそ、生き残るために必死に努力する必要があるし
その過程で生み出されるものはとても価値のあるものになることでしょう。
2021年も強く生きていくしかありませんね。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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