第1017回 2021/2/9〜15の歴史ニュース
1、きっと忘れた頃にやってくる
13日の深夜に起きた地震びっくりしましたね。
私の住んでいるところも震度は5強ということでけっこう揺れたような気がしましたが、
本棚から数冊飛び出したくらいで大きな被害はありませんでした。
所管する文化財の被害も幸い軽微なもの、と言っていいかな、というくらいで一安心です。
さて今回もヘッドラインの後ろのRはコメントをつけてリツイートした際にいただいた、いいねとリツイートの件数、Cはコメントがついたことを示しています。
ちなみに前回はこちら。
2、今週は近代の話題が多め
①大阪府高槻市の芥川山城跡で、櫓とみられる塼列建物を確認 R10
②シベリア南部・アルタイ地方中央にあるパジリク古墳群で230年前のブーツを発見 R11 C
③岩手県一関市で明治時代まであった「鬼死骸村」というおどろおどろしい地名を活用した地域おこしに取り組む R9
④岩手県紫波町の旧紫波郡役所庁舎を県指定文化財へ R15 C
⑤富山県高岡市で重要伝統的建造物群保存地区の山町筋にある赤レンガの銀行(旧富山銀行本店)を富山銀行から無償譲渡 R6
⑥神奈川県横須賀市のヴェルニー公園(横須賀市汐入町)内で整備が進められている「ティボディエ邸」の開館が延期 R13
⑦長野県の老舗旅館「よろづや」(国登録文化財)で火災 R5 C
⑧愛知県豊橋市中央図書館で企画展「飽海(あくみ)遺跡―吉田城の地下に眠る古代役所」を開催 R2 C
⑨滋賀県彦根市の彦根城博物館で特別展「雛と雛道具」を開催 R4
⑩新潟市秋葉区の国史跡・古津八幡山遺跡内に復元された竪穴住居4棟が、1月上旬の大雪の影響で柱が傾くなどの被害 R15 C
https://www.niigata-nippo.co.jp/news/local/20210213598538.html
3、求められるバランス感覚
いかがだったでしょうか。
個人的には⑩の弥生時代の復元住居の話題が気になりました。
今年はいつになく大雪が降ったとはいえ、
復元してから10年以上経過していたとはいえ、
雪の重みで入り口の扉が土に食い込み、開きにくくなっていたり、倒壊の危険があったりといずれも住居内の見学は現状では難しい。
という状況になってしまうものなんですね。
そんな過酷な環境にあっても縄文時代から長きにわたって人々は暮らしていたのですから、人の営みとはなんともたくましいものですね。
それはそうとして、古代の住居というと竪穴建物、というのが定番で
史跡整備の際によく復元されていますが、維持管理が大変、ということもよく聞く話。
内部で日常的に火を焚いていないと耐久性が弱くなってしまうようで
人手不足の昨今では手が足りないようです。
ただ当時の景観をイメージするだけで、倒壊の危険があるからと
内部に入ることができないのでは、効果も半減ですよね。
史跡整備のあり方自体も再検討すべきかもしれません。
管理しやすさも重視した形に。
時代は大きく隔たりますが、④も⑤も同じ問題を抱えています。
無償譲渡を受けられるのは、それだけ維持管理や活用のための修繕コストがかかるからであって、
それだけの価値を生み出すには一工夫が必要です。
現役で使われなくなるということは、そういうこと。
公的なものだから赤字でも構わない、というのでもなく、
活用のために文化財としての価値も損なわないように配慮しつつ
という絶妙なバランス感覚をもった施策が必要です。
行政に求められる素質はますます高くなってきている気がします。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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