第199回 コンテンツの持つ力は一つではない
1、もののけのチカラ
ジブリの映画でもののけ姫という作品があります。
公開されたのは1997年ですからもう20年以上前になりますね。
興行収入は193億円を超え、当時の日本映画の記録を更新するほどのヒットだったそうです。
宮崎駿監督自身が各メディアの取材を受けて語っている解題なども多くありますので、
詳細はそちらをみていただくとして、
私自身が読み取ったのは、表層的に現れる自然と人間の闘争と、人間社会の抱える矛盾を解決させることなく観客に突きつけたところでしょうか。
2、対立の構図と技術を見せる
まずは自然と人間の闘争という部分。
主人公のアシタカが訪れたのは、中国山地を思わせる、山間のタタラ場集落。
タタラ場とは製鉄を行う場のことです。
砂鉄を溶かすためには膨大な燃料を必要としますので、周辺の樹木は大いに伐採されることになります。
映画で描かれるような自然界の動物たちとのいざこざは実際に多くあったことでしょう。
ただ、発掘調査で出てくる製鉄炉や、それに関連する出土遺物をわかりやすく説明するには、ビジュアル的にすごくわかりやすいのです。
各地では製鉄の仕組みを理解してもらおうというイベントもあるようですが、
もののけ姫が教養として国民全体に共有されていれば、全国で見つかる製鉄遺跡の意義を伝えやすいのではないかと思います。
3、必然性を損なわずに差別の現実を描く
そして、外せないのが、ハンセン病患者と思われる、包帯でぐるぐる巻きになっている人物たちの描写です。
ほかの集落では差別的な扱いを受けるが、ここでは人として扱ってもらえるという描写もありました。
正直、子ども時代に映画を見た時にはは全く意味のわからない部分でした。
ハンセン病は実際には伝染力がそれほど高くないにもかかわらず、腫瘍が外見に影響し、必要以上に恐れられた病気でした。
日本ではすでに世界的には治る病気になってきていた、1931年に強制隔離する政策が開始され、全国各地に療養所が作られ、多くの患者がそこに閉じ込められるようになってしまいました。
1996年になってようやくらい予防法が廃止され、国家賠償請求が認められるなど名誉回復が進みます。
我が国であった負の歴史ですが、当時を語る患者さんも高齢化し、療養所の建物も老朽化によって取り壊されるなど、風化が進んでいます。
そんな中でも若い人に向けて語り継ぐ活動も報じられています。
幼い頃に見た「もののけ姫」にも描かれていました、
そんな説明ができると、この問題も少しは身近なものとして捉えられるようになるのかもしれません。
4、持てる力を社会に活かすために
もののけ姫がもつコンテンツの力の一つとして、現代社会の矛盾をそのまま表出していることをご紹介しました。
以前のnoteで取り上げたコンテンツの持つ力とは少し違った角度で作用するエネルギーですよね。
また、ハンセン病に関しては
東京都東村山市にある国立ハンセン病資料館の学芸員さんのインタビュー記事にはすごく熱い思いが込められているのでぜひ時間があれば読んでみてください。
考古学を通じて社会にどうアプローチするか、そのお手本にしたい大先輩です。
それに比して自分の進むべき道は、まだまだ模索中です。
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