第611回 2019年の歴史関連10大ニュース日本編その3 総合

1、絞りきれない諦めきれない性格

年を跨いでしまいましたが、どうしても2019年の振り返りをあと1回したかったので延長戦で失礼します。

これまで

今年の10冊

歴史関連ニュース海外編

日本編その1企画展示

日本編その2発掘調査成果

とまとめてきましたが、そこに含まれなかったジャンルの歴史関連ニュースを10件選んでみました。

2、テーマごとに選定したつもりです

①滋賀県大津市の国宝延暦寺根本中堂で保存修理現場を公開

各地で文化財建造物の修理が行われていましたが、一つ挙げるとするとこちらでしょうか。昨今は修理現場も公開活用が求められる時代。「修理中」の様子が見られるということに価値を見出すようになってきました。

②名古屋城の整備に関する有識者会議に出席した文化庁の担当者が石垣への影響を検討することとの必要性を強調

こちらは何度も話題に出てきました、復元のあり方が問われる案件。

まだまだ予断を許さない状況ですが、市民の良心が最後の砦になりそうです。

③百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録

こちらはもう説明は不要かと思いますが、今後はどう活用されていくのかに注目が集まります。次は北日本の縄文遺跡群だ!

④兵庫県姫路市で「生きた歴史体感プログラム」(リビング・ヒストリー)の一環として大名行列を再現したイベントを開催予定

文化庁の新しい枠組みとして始まったこの事業。

文化遺産が自ら稼いで、修復費用を捻出しようという考え方が念頭にあります。

他でも歴史的イベントの再現とか、城に宿泊するプランだとか

先進地では時流にのって新しい取り組みを始めています。

流れに乗れないところはどうなっていくのか、

今後も注目が必要なところです。

④岩手県立博物館で保存処理のために預かった資料を無断で切り取り

2019年は耳を疑うような文化財の毀損事件が相次ぎました。

土器を窃盗した疑いで逮捕された専門職員がいたり、

借り物の資料に油性ペンで直接ペンで番号を記したり

遺跡が事前の発掘調査等の手続きを踏まずに破壊されてしまったとのニュースも少なくありませんでした。

職員体制の不十分、行政内外の理解不足など原因は多様であるとは思いますが、今年はこのような悲しい話題が少ない年であることを願います。

⑤国立研究開発法人国立環境研究所と国立大学法人帯広畜産大学は生物分布と遺跡分布の統計分析により製鉄など太古の人間活動が現在の哺乳類の地理的分布を説明できると発表

古代の製鉄について全く新しいアプローチとして、大変興味深い話題でした。

人間活動の中でも、自然に対する影響が大きいものは、生物分布からも検討することができるということがわかります。

他のテーマにもぜひ取り組んでもらいたいですね。

⑥滋賀県の琵琶湖文化館が後継決まらず老朽化が懸念

京都や奈良に次いで文化財が多い印象がある滋賀県。

まさか11年も休館したまま、

国宝も含む1万点以上の文化財が人目につかず保管されているという衝撃。

しかも借り物の資料の保全に関しても心配な要素が出てくるとなると

事はさらに重大になります。

県レベルで、しかも意識が高いであろう滋賀でもこのような状態では

地方の零細自治体はどうなっていくのか。

国レベルでなんとかしないといけない課題ではないでしょうか。

むしろ民間の大資本がこの文化財の潜在的な価値を再評価してくれないかな。

⑦滋賀県甲賀市の藤栄神社に伝わる十字形洋剣が400年前に国内で生産されたことが判明 

賤ヶ岳七本槍の一人、加藤嘉明がゲームキャラクターとしてレイピア使いに描写される未来が見えます。

⑧冷泉家時雨亭文庫が定家本の『若紫』を新たに発見

2019年最大の発見と言っていい話題。

控えめに言って「教科書が書き換わる」ということ。

これを機に「源氏物語ブーム」がくるといいのですが。

⑨ミッドウェー海戦で沈んだ旧日本軍の空母「加賀」を発見

ある意味水中考古学かな。

某ゲームの影響で旧日本軍の軍艦は知名度が上がっているので

もっと探索が盛り上がってくれるといいですよね。

⑩富山県南砺市の城端別院善徳寺に残されている1万点余りの古文書の調査にNPO設立

この案件はお寺の文化財護持の会が母体となるNPOとのことですが

常々考えていることとして、行政が文化財の担い手として唯一でない方がいいのではないかということ。

ちょっと話は飛躍しますが

非正規雇用の学芸員を頼るしかない自治体だったり

単独の自治体規模で賄えない仕事を広域で、という考え方が出てきたり

全てを行政内部で解決するのは難しいというのが個人的な感想です。

適切な形でNPOのような外部団体が担うべきことがあってもいいように思います。

3、川の流れに手を差し伸べて転がっていく小石を拾うように

いかがだったでしょうか。

首里城の火災はもう別格で、殿堂入りだとしても

意外と知られていない話題も多かったのではないでしょうか。

外せないニュースに独自の解釈をのせるのも必要なことですが

情報過多の時代に、あえて流されて欲しくない、掬い上げてみんなで考えたい話題を見逃さないことこそ

自分の役目ではないかと思っていたりします。

ぜひ貴方の2019年に1番気になったニュースも教えてください。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


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