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漢詩

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記事一覧

第924回 不遇の時に感じたことを大切にして

1、漢詩と詩人その31

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、才能があっても不遇のときもある

今回取り上げるのは鮑照。

現在の江蘇省の出身で、貧しい身分から身を起こして南朝宋で立身出世を遂げます。

彼を見出したのは『世説新語』の撰者として知られる劉義慶。

南朝宋は王族が主導権争いを繰り返していましたが、

その中で鮑照も命を落としてしまいま

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第914回 直接的すぎる表現も詩にのせれば…

1、漢詩と詩人その30

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、諫言も漢詩で

今回取り上げるのは韋孟。

前漢時代の人。

劉邦の弟である劉交が楚の元王となるとその守役となり

次の代の夷王、孫の劉戊と三代に仕えた老臣です。

その劉戊が酒色に溺れているのを憂い、漢詩をもって諫めたという作品です。

元王の徳を称え、次の夷王も跡を継いで国をうまく治

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第893回 天地の秩序が保たれますように

1、漢詩と詩人その29

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、古典の散逸を埋める

今回取り上げるのは束皙。

この連載でも以前取り上げた張華に見出され、誰も読めなかった古代の竹簡を解読するなど博学で知られた人物です。

岩波文庫版の編者は詩人というより古典学者としての性格が強いとしています。

「補亡」というのは散逸したものを補うという意味です。

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第877回 隠遁生活に憧れつつも

1、漢詩と詩人その28

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、後の世で代表的な文人と評価されたのか

今回取り上げるのは郭璞。

前回ご紹介した江淹の夢にでてきたという詩人です。

現在の山西省の出身で、八王の乱を避けて江南に下り、

その才は史書、占いにも通じ、司馬睿(後の東晋の元帝)に見出されて高位に就きます。

後に王敦から反乱の是非を問われ

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第875回 自分を貫きながら生き抜いていく

1、漢詩と詩人その27

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、才を磨けば拾う者あり

今回ご紹介するのは江淹。

祖父も父も県令レベルの下流官人の家柄出身ながら

学問に励み、その才能を見出した南朝宋の建平王、劉景素に引き立てられます。

漢詩を使って諫言を行い、煙たがられて左遷されてしまいます。

それでも後の南朝斉の高帝、蕭道成が噂を聞きつけて

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第871回 皮肉屋の末路

1、漢詩と詩人その26

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、自己評価は高いけれど

今回ご紹介するのは殷仲文。

元は陳郡長平(現在の河南省)の生まれで、

はじめ桓玄の姉を妻としたことから重用されますが、

劉裕が台頭すると鞍替えし、巧みに世を渡っていきます。

それでも最後は謀反の罪で処刑されています。

期待に添えず、地方官に任じられたこと

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第858回 命を狙った人物を親友にする度量

1、漢詩と詩人その25

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、名族も生き残るのは必死

今回ご紹介するのは盧諶。

范嘩の盧氏という名族の生まれで、高祖父は盧植という三国志にも劉備の学問の師としても登場する人物です。

曽祖父は魏に、祖父は西晋に、父は司馬顒の参謀として重く用いられますが、盧諶が敵対勢力に仕えたことを理由に処刑されてしまうという悲劇

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第853回 漢詩は自らを励ますこともできる

1、漢詩と詩人その24

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、最後まで己の正道を貫いた

今回ご紹介するのは張華。

魏代に太守を務めた父を早くに亡くし、幼い頃は羊飼いをして暮らしたとされています。

そんな中でも学問に励み、地元の名士たちに推挙され

中央政界で出世していきます。

禅譲により西晋王朝が起こっても創始者の司馬炎から絶大な信頼を寄せ

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第844回 景色は見るものの心のあり様によって変わるもの

1、漢詩と詩人その23

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

https://note.com/tunawataridori/n/n2396f1765462

2、兄弟揃って

今回ご紹介するのは張載。

前回ご紹介した西晋の詩人、張協の兄とされる人物です。

官吏として中書侍郎まで務めますが、世の混乱を嫌って隠遁したとされています。

兄弟そろって引

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第838回 モノより思い出

1、漢詩と詩人その22

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、立身する身内を横目に

今回ご紹介するのは張協。

西晋の詩人で、兄の張載、弟の張亢とともに「三張」と並び称されたと伝えられています。

ただ、モノによっては張亢ではなく「張華」を含めた三兄弟として説明されています。

張華はこの連載でもなんどか取り上げていますが、

政治家としても立身

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第831回 万物は天地の炉から生まれるのさ

1、漢詩と詩人その21

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、漱石の語源

今回ご紹介するのは孫楚。

祖父孫資の代から魏に重く用いられ、孫資は驃騎、将軍父孫宏は南郡太守になっていました。

しかし、孫楚は才能を鼻にかけ、傲岸不遜と見られがちで、

そのせいか仕官できたのは40代で鎮東将軍石苞の参軍となったのが初めてだったということでした。

より

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第824回 世界をあまねく照らす君主の威光なんて

1、漢詩と詩人その20

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、文壇のスターも政争には勝てない

今回ご紹介するのはその15で取り上げた陸機の弟、陸雲です。

故国呉の滅亡後に張華に見出されて晋で立身出世を遂げるのは兄と同様です。

兄弟で「二陸」とか顧栄を加えて「三俊」だとか呼ばれていたそう。

当時の文壇のスターだったということでしょうか。

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第812回 誰が言ったか 大隠は市に隠る

1、漢詩と詩人その19

『文選』に収録されている作品と詩人を紹介していきます。

ちなみに前回はこちら

2、経歴は一切謎

今回ご紹介するのは王康琚。

生没年も不明で、晋代の人、ということ以外は経歴も不明という人物です。

逆にそれでも作った詩が残っているということは実力があったということでしょうか。

それとも誰か別の高名な詩人の別名だったりするのでしょうか。

詠み込まれる歌題も特徴的で

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第803回 好き日とはなにか

1、禅語に学ぶ 第四

松原泰道2011『禅語百選』から一つ選んで紹介するシリーズ。

今日はもう何度も見ていたはずの禅寺からの庭の眺めが

雨音とあいまって、ハッとするほど美しかったので

どうしても禅の世界に浸りたい気分になりました。

ちなみに前回はこちら。

もう半年近く前ですね。

2、日々是好日

一般にも膾炙している言葉なので目にしたことのある方も多いことと思います。

もともとは『

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