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自分を、生成AIがサポートしてくれていると実感

ようやく春休みが始まった。

今年度は「地理総合」を担当し、複数回に渡って、生成AIを活用した実践を行うことができた。今週、その一端を学会で発表してきたところだ。

最終日の最後の発表であったので、数人しか残っていないかと思っていたところ、30人くらいの方が参加してくださっていた。

発表の中では、学習者の「創発」に焦点を当てて、2つの実践を紹介した。実践の1つを簡単にまとめるとこんな感じだ(詳細は、地理系の雑誌に寄稿しようかと考えている、受理されるかはまた別の話だけど)。

地理総合「B 国際理解と国際協力」の中項目「(2)地球的課題と国際協力」において、世界各地で見られる居住・都市問題を主題に、現状や要因、解決の方向性などを多面的・多角的に考察し、表現することを目指した。具体的な主題は以下の通り。

 学習者は、バンクーバーのダウンタウン・イーストサイド地区における人口の都心回帰の背景 と実態ならびに、都心居住の諸課題を把握し、その上で、現地で実際に起きている都市問題を解決するため、ソーシャルミックスを前提とする再開発プランを構想・提案した。

発表要旨の一部・改

ICT 活用により、作業効率は格段に改善されたとはいえ、全体で 60 を超えるグループのアイデアに対して、(中二日でやってくる)次時までに一つひとつ丁寧にコメントを入れることは、私にとってもはや限界だった(仮にそれをなせたとしてもサステナブルとは決して言える状況にはないと思っている)。

重要であるはずのフィードバックを諦めざるをえない状況。

これが、地理必履修化時代の到来という航海で最初にぶち当たった壁でもあった。

そうだ、ChatGPTとタッグを組もう。

このことを閃いて、実行に移したのは、昨秋のことだった。
ChatGPT に都市政策の専門家として、学習者の提案に対して、フィードバッ クとマイルストーンを提供させるようなプロンプトを作成した。プロンプトを公開するのはちょっと気が引けるので、出力の一部だけ、こちらでオープンにしてみる。以下が、あるグループの提案に対するChatGPTからのフィードバックである。

#フィードバック作成

**提案の強点:**
1. **公共交通機関の強化**:公共交通機関を整えることで、地域のアクセスを向上させるとともに、経済的な活動も促進します。
2. **雇用の創出**:大きな工場を配置することで低所得者のための雇用機会を提供するという考えは、地域の経済基盤を強化するものです。
3. **多世代交流住宅の整備**:これによりコミュニティのつながりを強化し、高齢者のケアの問題も解決できる可能性があります。
4. **地域住民の絆の強化**:コミュニティグループの作成は、地域住民同士の連携を強化する手段として有効です。

**提案の弱点:**
1. **大きな工場の配置**:都市の中心部に大きな工場を設置するのは環境問題や騒音問題などの面から難しい場合があります。
2. **具体的な財源の不明確**:提案された活動やプログラムの実施には資金が必要ですが、その資金源についての考慮が見られません。
3. **既存の建築物や施設の扱い**:再開発を行う場合、既存の建物や施設の扱いについての考慮が必要です。

**ソーシャルミックスの類型との対応:**
提案内容は特に**1)エリア開発を含む政策**と**3)異種コミュニティ交流政策**に最も合致していると考えられます。

**考察や研究を奨励するための問い:**
1. 具体的にどのような公共交通機関の整備を考えていますか?
2. 大きな工場を置く場合、どのような業種を考えていますか?
3. 複合住宅の詳細な構造や設備はどのように考えていますか?
4. 多世代交流住宅の運営体制や管理方法についてはどのように考えていますか?
5. コミュニティグループを作る際の運営方法や目的、活動内容は?
6. 既存の建物や施設の扱い方についての具体的な方針は?
7. 提案の実現に必要な資金の調達方法は?
8. 地域住民の意見やニーズをどのように取り入れる予定ですか?
9. 高齢者の介護の具体的な方法や施設、サービスは?
10. 再開発後の長期的な維持管理や運営についての考えは?

**それぞれの問いに対するマイルストーン:**
1. 公共交通機関の整備計画の作成
2. 工場設置の業種選定
3. 複合住宅の設計計画の作成
4. 多世代交流住宅の運営ガイドラインの策定
5. コミュニティグループ活動の具体的なガイドラインの策定
6. 既存施設の調査と再利用計画の策定
7. 資金調達の具体的な方法の選定
8. 地域住民との対話のセッションの実施
9. 高齢者のケアに関する具体的なサービスメニューの策定
10. 維持管理計画の作成

フィードバックとして、高校生の提案には多くの魅力的な要素がありますが、具体的な実現方法や資金調達、既存の施設の取り扱いなど、いくつかの点でさらなる詳細化や具体化が求められます。これらの点を考慮し、さらに計画を練り直すことで、より実現可能性の高い提案になるでしょう。

ChatGPTが生成したフィードバックの一例

このフィードバックを受けて、学習者はアイ デアをさらに練り直し、計画の提案を目指した。学習者たちのChatGPTによるフィードバックの評価をまとめると以下のようになる。

 ChatGPTを活用したアイデアのブラッシュアッププロセスにおいて、生徒たちは多くの新たな気づきと学びを得ました。特に、自分たちが見落としていた問題点や改善すべき箇所をChatGPTが指摘したことに対しては、AIの有用性を実感すると同時に、提案された修正案が新たなアイデアに乏しい点に一部物足りなさを感じる意見もありました。しかし、ChatGPTによる迅速かつ客観的なフィードバックは、アイデアの質を高め、より現実的で具体的なプランを作り上げるのに大きく寄与したとの声が多数ありました。生徒たちは、ChatGPTの提案を盲目的に受け入れるのではなく、批判的に吟味する重要性も認識。全体的に、ChatGPTを利用したブラッシュアッププロセスは、新たな視点を提供し、アイデアを深めるきっかけとなったことが明らかになりました。

学習者の意見全体をChatGPTを用いて要約


学習者ともに、ルーブリックやピア・レビューの価値や重要性は理解しつつも、今回はあえて授業者である私(ChatGPT)によるフィードバックを行うことにしたわけだが、この実践は、生成AI活用によって、教員の負担を軽減しつつ、学習者のアイデアの創発を促すことができた(のではないか)と思っているが、どうだろう?


エビデンスの測定も含めて、次なる実践へと続く

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