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不謹慎ゲーオブザイヤー『ウルフェンシュタイン2』でおまえも革命のレジスタンスにならないか?

【注意】
CERO:Z(18歳以上対象)のゲームの話をするので、
刺激的な表現や画像が含まれます。
未成年の良い子のみんなは
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』を遊ぼうね。
【注意】

 先日までおれはドゥームスレイヤーだったが、火星でのミッションを終え地球に戻ってきたら、世界は大変なことになっていた。歴史は改変され、かつての大戦の勝者はナチスとなり、夢の国アメリカは「支配される側」になり果てていた。おれの名はB.J.ブラスコヴィッチ。世界をナチスの支配から解放すべく戦うレジスタンスである。

 というわけで、今回紹介するゲームは『Wolfenstein II:The New Colossus』である。『DOOM』と同じくFPSジャンルの代名詞である『Wolfenstein』シリーズのリブート版第2作にあたる本作、不勉強な私は当然のようにその功績に対して無知だったが、本作ではニューゲーム時に前作のダイジェスト映像が鑑賞できるので最低限の世界観とあらすじを把握することができる。

舞台は1961年のアメリカ、ナチスは「デスヘッド」の異名で知られるヴィルヘルム・ストラッセ親衛隊大将が開発した謎の高度技術によって世界大戦に勝利し、敗戦国はその支配に甘んじていた。その支配からの脱却を目指すレジスンタンス「クライソー・サークル」に所属するB.J.ブラスコヴィッチはデスヘッドを打ち倒すが、自身も負傷し歩くことすらままならない身体になってしまう。それでもなんとか生還したブラスコヴィッチはパワーアーマーの力を借りて歩く力を取り戻し、世界をナチスから解放すべく再び戦場に帰ってくる。

 満身創痍で、車いすがなければまともに動けないほどに傷ついたブラスコヴィッチを戦場に引き戻すのは、自由への渇望とナチスへの怒りである。本作におけるナチスは、冷酷で残虐非道、救いようのない差別主義者かつサディストとして描かれており、(少なくとも戦闘中は)プレイヤーが倫理感や良心の呵責ゆえに引き金を引くことを躊躇ってしまう余地を一切与えない。心置きなく、正義の鉄槌を振るう快感を味わってよいと、そう言ってくれているかのようだ。

 シューティングゲームとしてはFPSと聞いて思いつく要素はおよそ取り揃えられており、本作ならではのシステムと言えば武器を単銃と二丁持ちをいつでも切り替えられるくらいだろうか。『DOOM(2016)』のように「攻撃こそが最大の防御」というゲームデザインでもなく、遮蔽物に身を潜めたり敵兵を暗殺して敵の数を減らすことを推奨される、腰を据えてじっくり挑む戦場体験FPSと感触が非常に近い。

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 取っつき易い分、目新しさもない。そんなゲーム体験において唯一無二の魅力を放っているのが、にっくきナチス共のデザインだ。パワードスーツで武装し、重火器を押し付けてくるメカナチス兵、レーザーを照射しこちらを焼き殺そうとするメカナチスドローン、火を噴いて突進してくるメカナチスキャット、そしてメカナチス巨大ロボット……!!オーバーテクノロジー満載の武装を施したナチス兵が次々と襲い掛かる戦闘シーンは、その他の探索やマップデザインの煩わしさを吹き飛ばすくらい楽しい。難易度設定も細かく用意されているので、こちらが一方的な無双することも出来ればコンティニューを重ねる厳しい戦いに挑むのも自由自在。ちなみに、音楽は『DOOM(2016)』のミック・ゴードン氏。

 対して我らがブラスコヴィッチは最初は貧弱でも、敵の重火器を奪って反撃することもできれば、武器のアップグレードや各種成長要素によって順当に強化され、難攻不落に思えた巨大ナチスロボットを単身で撃ち取ることも可能になる。道は険しく敵兵の数も多いが、二丁銃で蜂の巣にするもよし、ハチェット(消防斧)で肉を裂くように振るえば気分も爽快だ。前述の通り「ナチスはどれだけ悪役に描いてもよい」というルールが敷かれており、ブラスコヴィッチも気前よく敵の腕や足を叩き切ってくれるため、積極的に近接攻撃に打って出るのがゲーム的にもプレイヤーのテンション的にもオススメである。もう遠慮なんていらない、革命のためナチス共を肉片に変えてしまおう。

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 ナチスへのヘイトを高める演出として、マップに用意された数々のディテールが用意されているのも見逃せない。ハーケンクロイツとヒトラー総統の勇ましいポスターが掲げられたロズウェルの街のショッキングなヴィジュアルに加え、人々の会話に耳を澄ませると「ドイツ語の挨拶を強要されるアメリカ人」という過激な支配の現場に出くわすこともある。また、道中に落ちている文章にはナチスの支配を受け価値観が変わっていくアメリカ人の様子だったり、あるいは陰謀論に憑りつかれた怪文書までよりどりみどり。もしあなたがこのゲームに興味を持ったならぜひYoutubeで「Wolfenstein commercial」で検索してみてほしい。よく発売できたなと思わずにはいられないからだ。

 強烈な世界観と残酷描写にまみれた本作だが、ナチス兵はあくまで「無慈悲に殺してもよい対象」としてわかりやすく振舞ってくれる一方で、プレイヤーは時折悩まされることになるだろう。革命を謳う我々の行いは、敵からすればただの「虐殺」ではないか。容赦なく敵を殺し核で全てを葬り去る、レジスタンスとナチスになんの違いがあるというのか。その疑問は、ナチスから逃げ出した敵将軍の娘シグルン・エンゲルを出迎えたことでさらに深まっていく。個人を個人として扱わず「ナチスの女」として酷い待遇を彼女に与えるレジスタンスが、果たして正義と言えるのか。それに対する明快な返答が用意されているとは言い難いものの、作り手の意識は少なくとも非道な暴力を肯定するものではなく、公平であろうとする姿勢があることも記しておかねばならないだろう。

 極めて過激かつ暴力的。人を選ぶことは間違いないが、「メカナチス」のワードに心惹かれるものがあれば、ストーリーを終えるまで飽きることはないはずだ。一切のマルチプレイ要素を持たない硬派な一人用FPSであり、目をしかめるような残虐要素は次第に背徳的な楽しみに変化していくため、仄暗い暴力衝動をぶつけるには打ってつけのタイトルと言えるだろう。アメリカに真の自由を取り戻せるかどうかは、画面の前のアナタにかかっている。今こそ、おまえも革命のレジスタンスにならないか?同士の参戦を、心より待っている。

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Wolfenstein (R) II: The New Colossus (TM) は1960年代の仮想世界に基づくフィクションです。各名称、登場人物、団体、場所、事象は架空のもの、またはフィクションに基づく描写によるものです。本作品のストーリーとコンテンツはナチス政権の信念、イデオロギー、事象、行動、党員、行為を解釈、称賛、是認を意図するものではなく、またナチス政権による戦争犯罪や虐殺、その他人道に反する犯罪を矮小化する事を容認するものではありません。

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