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侵略も防衛も全部一人で。英霊ワンオペ働かせ放題『Fate/EXTELLA』

 月の聖杯「ムーンセル・オートマトン」が作りだした霊子虚構世界「SE.RA.PH」にて行われる聖杯戦争を描く『Fate/EXTRA』。その物語の裏側で起きた、少女の秘密を暴き立てる背徳の夜『Fate/EXTRA CCC』。いずれも濃厚な物語と骨太な戦闘こそが魅力的なRPGだったEXTRAシリーズ、まさか第3弾がアクションゲーとは予想外でした。

※本テキストには、他シリーズでは秘められている「サーヴァントの真名」に関する記述が含まれます。ご注意ください。

あらすじ

霊子虚構世界「SE.RA.PH」での「聖杯戦争」に勝利したマスターとネロ。
王の証たる指輪「レガリア」を授けられた2人は、聖杯戦争を戦い抜いたサーヴァントたちを臣下に加え、SE.RA.PH領土の整備に着手する。
だが、もう一つのレガリアを持ったもう一人のマスターが、玉藻の前と共に現れる。両者はマスターとSE.RA.PH領土を巡って対立し、新世界の支配権を巡るサーヴァント大戦が勃発した。
そんな中、ネロ陣営の元にSE.RA.PHのメンテナンス技師であるサーヴァント「アルキメデス」が加わった。一万四千年ごとに訪れるシステム更新を前に、分割されたレガリアを統合させるためネロ陣営への協力を進言。領土を増やしていくネロとマスターだったが、第三勢力である「アルテラ」率いる軍勢が参戦したことで、戦いは混迷を極めていく。

蹂躙せよ!サーヴァント・アクション!

 プレイヤー=マスターがサーヴァントを使役して戦うRPGから、サーヴァントを直接操作する一騎当千3Dアクションへ。縦横無尽のアクションを繰り広げるアニメシリーズでの活躍を観た者なら一度は考える「あんなこといいな」が、ついに実現した。

 登場サーヴァントは全17体。『EXTRA』シリーズを賑わせた英霊を中心に、『Zero』のイスカンダルや『Fate/Apocrypha』のジャンヌ・ダルク、そして『Fate/stay night』からはアルトリア、メドゥーサ、クー・フーリンが参戦するなど、『Fate』シリーズのお祭りゲーとしての側面を含んでいる。作品の垣根を越えた掛け合いに夢の対決など、クロスオーバー要素も本作の醍醐味だ。

 肝心のアクションは本家無双シリーズでおなじみの操作方法、すなわち□ボタンの通常攻撃と△ボタンの強攻撃を織り交ぜて戦うスタイルだ。広範囲な技で敵を吹き飛ばしたり、相手を浮かせてジャンプ攻撃に派生させたりと、簡単操作で多種多様なコンボを繰り出せる。並み居るザコ敵を強力なスキルや宝具で一掃する爽快感はかなりのもので、いつの間にか1,000体撃破を突破していることもしばしば。過去作での演出を彷彿とさせるモーションも多く、お気に入りのサーヴァントを動かす楽しさは格別だ。

領域支配権争奪戦

 本作のバトルは陣取り合戦であり、「セクター」と呼ばれる15箇所の拠点を奪い合うのが基本の流れとなる。セクターには1~4のランクこと「レジムマトリクス」が設定されており、そのセクターを守る「アグレッサー」を倒すことで拠点制圧。先に15のレジムマトリクスを集め、現れた敵陣のボスサーヴァントを倒すことがステージクリア条件だ。
 敵陣もこちらの領土に侵略をかけてくることもあるため、プレイヤーは相手の領土を奪いつつ、自軍の防衛に勤しむなど、広大なステージを駆けまわることになる。アグレッサーを生成する「プラント」や敵サーヴァントを優先して撃破し、自軍を勝利に導こう。

3篇・3陣営・三分割の主人公

 今作のメインストーリーはネロ、玉藻の前、アルテラの3体のサーヴァントが主役となるシナリオを順番に攻略する一本道方式。なぜレガリアとマスター(主人公)が三つに分かたれたのか、遊星の使者・アルテラの真の目的とは何なのか。三つの異なる視点から描かれ、そして最終章へ。
 過去作ではプレイヤーの相棒となるサーヴァントを選択した際、選ばれなかったサーヴァントは本編には登場しなかった。そのため、ネロと玉藻の前、無銘やギルガメッシュが同時に存在する時空は本編では初となる。そのため、厳密には『EXTELLA』『EXTELLA CCC』とは地続きの続編ではなく(無かったことになっているわけではない模様)、世界観やキャラクターを踏襲した新たな『EXTRA』時空、ということになるだろうか。詳しくは「EXTELLA/Zero」と検索するとよい。

感想

 無双ゲーの醍醐味と言えば、やはり爽快感だろうか。一回の攻撃でたくさんの敵を倒したり、HIT数を稼いだりと、一騎当千を成し遂げる快感は病みつきになるものだ。

 その点で言えば、Fate×無双ゲーの相性は良好だ。並み居るザコをなぎ倒し、他のサーヴァントと死闘を繰り広げる。これまでの聖杯戦争とは異なる「一対多」のシチュエーションも、快適アクションによって違和感なく飲み込めるだろう。

 しかし、肝心の爽快感を損なうシステム面の不備は無視できない。味方のサーヴァントは名無しのモブ敵相手にも敗走するほど貧弱なため、プレイヤーは敵陣攻略と自軍防衛をワンオペでこなすことを余儀なくされる。また、コードキャスト(支援スキル)無しでは回避不可能・高威力なフィールドトラップが存在し、エフェクトが画面を覆いつくしたり被ダメージのせいでステージ評価が下がったりと百害あって一利なし。キャラクターを自由に動かしたいという欲望を阻害する要素が多く、爽快感がウリのジャンルなのにストレスを感じやすいという事態を引き起こしている。

 シナリオ面においても、一部のキャラクターに対する冷遇、前作そのものの否定になりかねない新設定が散見され、「公式なのに愛がない」と受け取られかねない出来栄え。新登場のアルテラやアルキメデスが魅力的に描かれる一方で、メイン格の一人であるはずの玉藻は終盤では脇に追いやられるなど、彼女に愛着を抱いていたファンは噴飯モノの改変や新設定が横行する始末。これまでのキャラクター像とは逸脱した行動が目立つなど、過去作との一貫性にも著しく問題を抱えていると言わざるを得ない。

 いっそ完全なるパラレルワールドと割り切った方が楽しめる。しかし、シリーズものとしてそれは如何なものだろうか。これまでの積み重ねを裏切る新章に、最も本作を待ち望んでいたはずの『EXTRA』シリーズファンが首を傾げることになる。これでいいのかEXTELLA…。

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