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『大脱出2』はスタローン主演最新作ということでよろしいか??

 スタローンは好きか?アクション映画史に燦然と輝く名キャラクター、「ロッキー・バルボア」「ジョン・ランボー」を演じ、最近では『エクスペンダブルズ』シリーズで後輩にスターロードを譲りつつ自分もパワフルなアクションで観客を魅了し続ける、サイコーな映画人。それがシルヴェスター・スタローンだ。

 年明け早々に『クリード 炎の宿敵』で我々の涙腺と言う名のダムから全ての水分を奪ったこのナイスガイの新作が、間髪入れずに公開された。手堅いサスペンス・アクションの皮を被った、アーノルド・シュワルツェネッガーとの監獄デート映画こと『大脱出』の続編である。残念ながらシュワちゃんはお役御免となったが、新しいカレはデイヴ・バウティスタ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で出会った二人のマッチョなタッグ、これを見逃しては男が廃る。鼻息荒く、意気揚々と劇場に飛び込んだ…が、鑑賞後に沸き立つものは感動でも興奮でもなく動揺である。大丈夫かスタローン。これが遺作にもなりかねない歳なんだぞ。頼むから落ち着いてくれ。あと俺が何言ってるかわからない奴は騙されたと思ってこの映画を観てくれ。そして一緒に考えて欲しい、この映画の主役は誰なのかということを。

 スタローン演じるレイ・ブレスリンは、自らが囚人として監獄に入り、その抜け穴を指摘するという脱獄のスペシャリスト。前作で巨大タンカー上の監獄から脱出してから数年後、こんな仕事割に合わないと今さら気付いたのか、今では警備会社を設立し経営者として後人の育成に励んでいた。ある日、会社の若手スタッフであるシューが姿を消し、彼が「ハデス」と呼ばれる完璧なコンピューター制御の監獄に囚われていると知る。シューを救うため、レイはかつての友人デローサ(演:デイヴ・バウティスタ)に協力を要請し、自らもハデスに侵入する―。というのが本作のあらすじだ。

 物語は、レイの警備会社の若手スタッフの任務の場面から始まる。人質をとり要求が吞まれなければ公開処刑を行うと宣言するテロリスト。潜入していたシューが一瞬の隙を突いて反旗を翻し、仲間たちも合流し人質奪還作戦が始まる。この既視感、『エクスペンダブルズ』一作目が始まったのかと思わせる冒頭、観客の不安を煽るロケットスタートだ。画面は暗いし、何よりスタローンがいない。

 なるほど、今回のスタローンのバディはバウティスタだけでなく、シューを演じるホアン・シャオミンもその一人、ということらしい。『イップマン』よろしく木人椿で訓練するシーンも入れながら、彼の蹴り技を中心としたアクションシーンはとてもキマッている。精悍な顔つきと所作がとってもセクシーな、本作の“華”に相当するキャラクターだ。で、スタローンはまだ??

 そうこうしている内にシューは謎のマスク男に連れ去られ、巨大監獄「ハデス」に収容されるのだが、この収容所がまたこちらを不安にさせてくれる。寝起き早々に知らん男とバトルを強要され、勝利したら2時間だけ「聖域」と呼ばれる部屋で絵画や読書をする権利がもらえるという、正気とは思えない規律に統制された牢獄。それを統べるのは「ガリレオ」を名乗る黒いペッパーくん。ガリレオは医療機能も兼ねておりとにかく働き者なのだが、コイツに支配されていると思うと物凄く気が遠くなる。しかも監督はこの出来損ないのチャッピーを「現実的なロボット」と語るのだった…。

 本作のリアリティの置き所はどこなのか?観客がいろいろ忖度し始めた中盤、いよいよスタローンとバウティスタが動き出す。バウティスタ演じるデローサもまた数々の修羅場を潜り抜けてきた人物で、バーテンは仮の姿。突然の襲撃者も難なく打ち倒し、スタローンに気の利いた台詞で〆!これです、こういうの観たかったんですー!!と久しぶりの餌に涎垂らして大喜びしていると、物語はシューと仲間たちのドタバタ脱出劇に逆戻りしてしまう。プロジェクションマッピングめいた電流拷問と、無口なウォーボーイズ(白塗りの男たちを指す)が「レギオン」と名乗りだす不条理極まりない展開に、とうとう観客は悟ることになる。

 あの、最近のセガールやヴァン・ダム映画にありがちな「大スターは最初と最後だけ出てくるタイプの主演作」ってあるじゃないですか。その系譜ですコレ。ポスターや予告編で煽るだけ煽り、実際の本編は若手俳優で中盤を繋いでおき、クライマックスにようやく大暴れ!という焦らし型、あるいはスケジュールとか予算の都合が垣間見える型映画の、堂々たる最新作。本来ならレンタルビデオ店の棚の肥やしになるところを、スタローンとバウティスタのダブルネームでなんとか劇場公開にこぎ着けた、大スクリーンでの鑑賞そのものが貴重なタイプの珍作である。アカデミー賞発表直後のこのタイミングで、これが全国ロードショーされている奇跡を、享受しなくてはならない。そして、何だかんだ最後にスタローンのアクションが用意されているので、心地よくスクリーンから送り出してくれる親切設計。トータルとして「すっごいヘンな映画だけど嫌いになれない」くらいの感触は得られよう。

 というわけで、紛うことなきスタローン主演最新作、ごちそうさまでした。いい意味で何も残らない本作だが、そういえば上映前に別のスタローン最新作の予告編が流れていたので、今年はスタローンイヤーだ。こっちにはガッツリ出演してくれているだろうか。


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