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隣り合うライバルへ、最高の友達へー。『WorldEnd:BreakDown』

 ドーモ、伝書鳩Pだ。

 まさか、二日連続でストレイライトに狂わされると思っていなかった。エイプリルフールコミュも良かったですよね。愛依とあさひ、いつもとは違った声色のジュリエット、心底驚いたし聞き入ってしまった。あさひコミュは、あさひとプロデューサーの関係性に救われ、あさひの背中を追うことしかできないプロデューサーがコミュの主題になるという大胆さに打ち震えた。シャニマスくん、自由度がハンパなく広いので、同日に配信されたガチホラーノベルとノスタルジィとソロ曲そのどれも作風や世界観が異なるという離れ業で、我々を圧倒してみせた。

 そして、ストレイライトのシナリオイベントが配信され、おれたちはまたしてもこんがらがった。ストレイライト参入から一年。対立と融和を深めてきた彼女たちの一つの「正解」に、画面の前でただただむせび泣いている。三人でストレイライト。このタイミングでこのコミュをぶつけてくるから、シャニマスは止められない。

以下、ネタバレを含む

 「ゴールデンアイドルフェス」。大きな会場でのライブはもちろん、フード販売やゲームコーナーなどバラエティ豊かな企画が目白押しなフェスで、一番の目玉は全ユニット参加の人気投票。投票はアイドル個人宛に行われ、集計され上位になったユニットはより多くパフォーマンスすることができるという。

 …ちょっと待ってほしい。おれたちはまだ『薄桃色にこんがらがって』を履修したばかりなんだ。同じユニット内で順位がハッキリしてしまうなんて、他のユニットでやったら、きっと耐えられない。アルストロメリアでは多数の死者が出た。それがバラエティだとわかっていても、順位をつけるという行為の残酷さ、それを真正面から受け止めることの恐怖など、様々な思いが去来してくる。互いが互いをライバル視しているストレイライトでなければ、参加を決めることすら難しいだろう。

 順位といえば、どうしても『Straylight.run()』が脳裏を掠る。彼女たちはそこで、必ずしも正しさが通用するわけじゃない現実を目の当たりにした。嘘偽りのない本物が、常に勝てるような世界じゃないと知っている。

 それでも、ストレイライトは歩みを止めない。アイドルの世界の酸いも甘いも知って、より強くなった三人は、挑戦することから逃げない。しかも、彼女たちが見据える敵は他のアイドルユニットではなく、隣で歌い踊るメンバーたち。冬優子はそれぞれの実力で誰が一番になるのか確かめたいと言い、二人もそれに続く。ストレイライトは、お互いがライバルであり、高めあう仲間でもある。その基本は変わらず、ゴールデンアイドルフェスはうってつけの場所になると踏んで、冬優子は挑戦状を叩きつける。

 今回、並々ならぬ意思を見せたのは愛依だった。感謝祭コミュでは、圧倒的な実力差を持つあさひに食らいつき、アイドルとして対等に、競い合うとファイティングポーズを決めた愛依は、隣り合う二人にも負けないと豪語し、自己PRの方法を探る。先だって配信されたpSSR【メイ・ビー】のコミュにて、トップアイドルになるとプロデューサーと一緒に誓ったばかりの愛依。そのためには、冬優子とあさひだって越えなければならない。

 だが、決して愛依は二人を蹴落として頂点に立とうなどとは考えない。彼女が切磋琢磨して実力を磨くのは、三人で対等に競い合い、ストレイライトでいられるためだ。

うち、ストレイライトのこと、
みんなのこと、好きだからー
これからも……
一緒にユニット、やっていきたいから、さ

 愛依は、優しい女の子だ。弟と妹がいて、家事と書道が得意で、友達がたくさんいて、いろんな人から好かれていて、プロデューサーのことを信頼していて。愛依はストレイライトの流儀である「メンバーこそがライバル」という在り方を尊重しながら、それでも冬優子とあさひのことが大好きで、それを隠そうとしない。冬優子のことを可愛いと褒め、あさひの実力を素直に認めている。そんな二人とストレイライトでいたいから、人気投票で闘う。

 ストレイライトを誰よりも愛する愛依。冬優子とあさひも、そのことを再確認していく。冬優子のことを知るために同じアニメを観たり、一人飛び出したあさひを心配して探しにきてくれたこと。愛依はいつだって、二人のことを一番に考えている。

 コミュ冒頭、愛依は、冬優子やあさひが褒められている記述を読んで、心から喜んでいた。愛依はきっと、誰よりも大きな【愛】を持つ人だ。その大きな愛はたくさんの人を包み、一緒にいたいと思わせるに違いない。冬優子もあさひも、おそらく「さなぴー」も。その愛に支えられたからストレイライトは今の三人なんだと、冬優子とあさひも再確認する。

 それでも、現実は非情だ。ストレイライトは総合2位で、より大きな企画力に飲み込まれてしまう。しかも、自分たちが中間発表1位だったという立場を踏み台にされて。

 あとはもう、ファンに投票をお願いするしかない。それぞれが最後のアピールタイムに奔走する中、愛依は冬優子とあさひの様子をSNSに投稿する。あさひちゃんはいつでも本気、冬優子ちゃんは頑張り屋さん。ストレイライトのことをもって知ってほしいと、愛依は懸命に訴えかける。

 誰が一番票を集められるか、これはそんな勝負だったはず。なのに、愛依は自分のPRよりも二人のことを投稿し続ける。冬優子とあさひは、そのことに怒りとも驚きともつかない複雑な心境を投げかける。「…愛依ちゃん、勝ちたくないんすか?」と。

 冬優子は、誰よりも自己PRに長けた人物だ。自分がどう見られるかをコントロールし、愛される方法を確立し、アイドルとして綺麗な部分しか見せてやんないと豪語するまの人物だ。あさひも、類稀なる実力を持ち、ステージに駆け付けたファンの誰よりも自分が一番楽しいと、そう言い切ってしまう少女だ。自分を磨くという行為に、二人はためらいがない。だからこそ、愛依が前に出ようとせず、他者を一番に想う優しさを、「アイドルとして」認められなかったのかもしれない。

 そんな愛依の心中に宿る、冬優子とあさひに勝ちたいという気持ちは、きっと嘘ではない。トップアイドルになるためには、それは避けられない。けれど、自分一人が勝つよりも、ストレイライトの三人で勝ちたい。そんな気持ちが前に出てしまう愛依の本音は、誰よりも優しい彼女ならではの一言で、二人の気持ちを大きく動かしていく。

 「今日は」あんたが真ん中。ストレイライトのことを誰より想う優しさを称え、冬優子とあさひがユニットの象徴を託す。時系列は前後するが、このシナリオにて個人投票の順位は明かされない。冬優子とあさひがそれを拒んだからで、彼女たちの1位はすでに決まっているからだ。和泉愛依が真ん中。それが冬優子とあさひの投票結果だ。

 ストレイライトは最強のライバルで、最強のユニットで、そして最強の「友達」だからー。ここへ来てようやく、三人が同じスタートラインに立てたような気がする。冬優子が愛依に「嫌い」と告げたのは対等なライバルと認めた証で、あさひは「ふたりといると面白い」と告げる。そして、超えるべき相手はお互いという在り方を共有したまま、三人ならどんな外野にも負けない最強のユニットであると宣言する。お前を倒すのは他の誰でもない、この俺自身。少年漫画のような熱い熱情を秘めた迷光は、時に光の束になり、時にぶつかり合う。それがストレイライト。

 他に並び立つ者のいない世界の果て(World's End)で、三人はぶつかり合うのだろう。それでもきっと、三人は「友達」だ。結成から一周年、仲間として、ライバルとして、友として高めあうストレイライトの威光は、さらに強く眩しくなっていく。その光にサイリウムで応え続けるファンの一人に、私はなりたい。

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