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#2020年映画ベスト10

 2020年。この一年のことは、苦い記憶と共に後年思い出されるだろう。世界的な疫病の蔓延、経済不安、オリンピック延期、度重なる災害、差別、偏見、殺人、シン・エヴァ延期シャニマス担当ガシャ爆死……。およそ考えられる全ての最悪が詰まった、閉塞感と諦観に満ち満ちた一年だった。

 新作映画の公開延期と劇場の閉鎖、労働時間の増大と体調不良により、2020年の劇場鑑賞は54回。作品数で言えばもっと絞られるし、見逃した作品や使い損ねた前売り券を数えたら本当に辛いのだけれど、今年の棚卸をしなければ来年を迎えられないので、少ない手札なりに選んだ10選、供養の意味も兼ねてさらけ出したいと思う。毎度のことながら、配信オンリー作品については除外、気が向いたら別記事にします。ソウルフル・ワールド、劇場で観たかったよね…。

第10位 ワンダーウーマン1984

 DCユニバースの風紀委員長、ワンダーウーマン様の主演作その2。その顛末については評価が分かれているのだけれど、ヴィランの組み立てがとにかく刺さった。人間誰しもが持つ「欲望」を増大させていった結果としての「フツーの人」がラスボスとして立ちふさがる展開は、新鮮で読み解けるものも多かった。トランプ政権とフェイク・ニュースの時代に突き付けられるエンタメとして、強度がスゴイ。

第9位 サーホー

 この映画の作り手も、作中のキャラクターも、劇場に駆け付けた人たちも、生きとし生ける者全てが称えずにはいられない男・プラバースが、プラバースにしか出来ないことをやる。純度100%のプラバース映画に、おれたちは喝采と紙吹雪をまき散らし、こう叫ばずにはいられないのだ。SAAHOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!

第8位 初恋

 今やトニー・スターク役でおなじみロバート・ダウニー・Jrは、キャリアそのものが危ぶまれるほどの重度の薬物依存を抱えていた。だが、『キスキス,バンバン』『アイアンマン』を経て再びスターの階段を登り、今や世界屈指のエンタメシリーズの立役者として全世界から3,000回愛されている。

 それを踏まえれば、一度の不倫で全てが無に帰すのも、惜しいものである。CM女王、バツグンの好感度から一転、その全てを奪われた今だからこそ出来る、最狂のキラーガール。ヤバイのはハーレイ・クインだけじゃねぇ。その名はベッキー。

第7位 ブックスマート/卒業前夜のパーティーデビュー

 キラキラした自分に変身するだけが成功じゃない。なぜなら私たちは今のままで最高で、みんなも最高。教科書では得られなかった学びを経て、変わったものと変わらないもの、それらを胸に刻んで社会に羽ばたいていく。そんな二人の門出が愛おしい、青春映画の新たな大傑作。

第6位 罪の声

  昭和の未解決事件「グリコ・森永事件」を題材に、意図せず事件に巻き込まれてしまったかつての子どもたちが、もがきながら生に意味を見出していく物語。過去を掘り返すことは時に痛みを伴うが、未来を見出すために必要な痛みでもある。その悲痛な声に真正面から向き合うからこそ、重厚なドラマの果てに見える微かな希望に、ジャーナリズムの意義を見通すことができた。

第5位 1917 命をかけた伝令

 現実なら御免被りたいシチュエーションも、映画なら最高のエンターテイメントと化す。砲弾飛び交う戦場で、卑近に迫る死とネズミに怯えながら、任務のためにその身を最前線に晒さなければならない恐怖。それが極に達した瞬間、「走る」というシンプルな動作が帯びるダイナミズムやエモーションが臨界突破し、思わず座席から立ち上がりそうになるほどの高揚感。劇場鑑賞の体感性を語る上で、外せない一作だった。

第4位 ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY

 アクション、キャラクター、シスターフッド。全てにおいて突き抜けた、DCユニバース最良の一作だったと思う。セクシーなコスチュームを着させられたり、男たちの添え物に当て嵌められることもない、自立したカッコイイ女性だけのヒーローチーム、男が観ても憧れるし、ずっと観ていたかった。マーゴット・ロビーは言わずもがな、2020年最も心を射抜かれたヒロインがハントレス様だったので、贔屓込みでこの順位に。

第3位 WAR ウォー!!

 映画は総合芸術である以上、良き作品を作るためのメソッドはある程度確立され、それらを雛形に作り手は自分の色を足していくものだと思っていた。だが、世界には「顔がいい」という理由だけで物語が進行する映画が成立し、そしてそれに説得力を持たせるだけの顔のいい男が存在するのである。ヘリコプターから降りるだけのワンアクションで全世界を虜にする「世界で最もハンサムな男性6位」と、新世代のアクションスター。美しい男×美しい男のブロマンスは、あらゆる技法をも凌駕する。人間、圧倒的な顔のよさには、抗えないのだ。

第2位 羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜

 顔のいい男に続いて、誰もが魅了される存在といえばネコチャンなのだが、中国からやってきたコイツは今年のカワイイの全てを席巻し、豪華声優による日本語吹き替え版という強力なバフを得て侵略を仕掛けてきた。結果、おれたちが観たものは「エピソード0」と「実質アベンジャーズ」が共存するという、未知の映像体験だった。ロシャオヘイ・ユニバースのさらなる国内公開を求め、課金先を探す羽目になった年末のダークホース。

第1位 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

 TVシリーズ、外伝、そして劇場版。生きる意味を失った少女が「愛してる」に至るまで、長い長い旅を見守り、慈しみ、励まされてきた先のエンドロール。人から人へ、想いが繋がることの難しさ尊さに寄り添い、描き続けてきたことの集大成としての劇場版は、今年観たあらゆる映像作品の中で最も美しく、感情を揺さぶられた。作品を鑑賞するきっかけの奇怪さ込みで、忘れられない作品になった。これから何度も見返しては、ヴァイオレットちゃんに想いを馳せるだろう。

未来へ

 新しい一年がもうすぐ先まで迫っているのに、行き先は不確定だ。どうやら来年も、外出の際は年中マスクが手放せない一年になりそうで、その息苦しさはジワジワと精神を削っていくようだ。

 エンタメを無邪気に楽しむことさえままならない、険しい一年。まだまだ闘いは続くし、映画業界は配信中心のマーケットへと移行する流れも有りあえない話では無くなった。延期で先延ばしになった作品が、劇場で観られない可能性だってある。そうならないためにも、まずは自分と、身の回りの健康に気遣うことが、今出来る全てなのだろうと思う。

 2021年はどんな年になるだろうか。少なくともトニージャーがディアブロスを倒し、エヴァが終わり、ゴジラとコングが闘い、ハンが実は生きてて、ウルトラマン映画が東宝から配給され、ダニエル・クレイグが007を卒業し、マッツ・ミケルセンがグリンデルバルドになったりする。そう考えるとオラワクワクしてきたぞ。来年もどうぞよろしくお願いいたします。


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