💠あの娘になれたら…。
最近、同じ男の子がいつも夢に現れます。
身長が高くてスラっとしているのに程よく筋肉があって、くしゃっと笑った時に見える小さな八重歯が印象的です。キリッと真っ黒な瞳に太陽が差し込むと結晶のようにキラキラ光ります。
夢の中での私はその子と付き合っていて、デートの待ち合わせをしたり2人で美味しいご飯を食べたりと、とっても幸せな時間です。
夢から醒めるとまだ彼の体温が残っているような気がしますが、実際は自分の体温でぽかぽかになったお布団の温もりです。
同じ夢をみたくてほんのちょっとお布団の中で粘ってみても、どうやら続きは見せてくれないようです。
彼の夢を見た日は、朝ごはんを食べる時も授業を受けている時も一日中、夢の続きを考えてぼーっとしてしまいます。
でも私、彼のこと、好きなんかじゃありません。
だって彼は、
親友の恋人なんですもの。
◇◇◇
親友とは小学校の頃からずっと一緒で、今も同じ高校の同じクラスに通っています。
いつもニコニコしてて、ちょっと抜けたところもあるけど誰に対しても優しくて丁寧な彼女のことを私が一番近くで見てきました。
ふんわり柔らかくて可愛い彼女が、たくさんの男性に言い寄られて心を痛めながら断ってきたことも知っています。
果たして、あのお花のような彼女の横に立つ私の名前を知っている人は何人いるのでしょうか。
どこを歩いていても、誰と話していても、視線は隣で輝く彼女に釘付けです。
そりゃそうでしょう。私から見ても、この娘はとっても可愛いもの。
どうやら神様からの愛をかき集めて生まれてきたみたいです。
◇◇◇
真っ黒な瞳の彼だけが、いつも私の目をまっすぐ見て名前を呼んで挨拶してくれます。
ずるいです。用があるのは私じゃないのに…。
でもそんな彼だからこそ、私の親友もあんなに幸せそうに笑っていられるんでしょうね。
せめて親友が嫌な子だったら、なんて願っては自分の卑屈さに嫌気がさします。
1日だけでいい、1日だけあの娘になれたら、と思いながら今日も夢の世界で自分の幸せにこっそり浸ります。
あーあ。こっちが夢で、あっちが現実だったらいいのにな。
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